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【試乗】意のままにコントロール可能! 三菱エクリプスクロスが雪上で見せた衝撃の走り

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【試乗】意のままにコントロール可能! 三菱エクリプスクロスが雪上で見せた衝撃の走り

 だらしないアンダーステアは起こらない「S-AWC」の威力

 三菱自動車(MMC)が久しぶりに放つ新型モデルとなるエクリプス・クロス。国内では30年3月から発売が予定されており、昨年末より予約受注も開始されている。その市販バージョンにもっとも近いスペックの車両に試乗することができた。しかも北海道札幌市にある特設コースでの雪上試乗だ。

【今さら聞けない】アンダーステアとオーバーステアって何?

 今回用意された車両は3台。特徴的なダイヤモンドレッド仕様のイメージカラーを纏った2台と、雪に溶け込むような美しいホワイトパール仕様が1台。いずれもパワーユニットには新開発の1.5リッター直4直噴ターボの「4B40型」を搭載。8速の変速ステップ比もプログラムされたCVTトランスミッションと組み合わされている。駆動系にはもちろんMMCが得意とする4WD機構を備え雪道での高い走破性が期待される。

 会場にはMMCの多くのエンジニアも居並んでいる。その多くはかつてランサーエボリューション(ランエボ)開発の中心にいたメンバーであり、その顔ぶれを見ただけでエクリプス・クロスにかけるMMCの本気度が伝わってくるのだ。

 とくに主要メンバーの澤瀬 薫博士は、あのAYC(アクティブヨーコントロール)を始めMMCのAWC(オールホイールコントロール)技術を確立しS-AWC(スーパーAWC)にまで進化させた張本人であり、ランエボの電子制御を完成させるなど業界では知らない人はいないほどの有名人。

 ランエボの生産中止以降、一旦MMCを退社していたが、世界中の自動車メーカーから引く手数多のなか、今回数年ぶりに復帰されたことから、今後MMCのAWC進化が約束されたようなものだ。澤瀬さん復帰後初のS-AWC搭載モデルという意味においてもエクリプス・クロスは世界的に注目されることになるのだ。

 さまざまな技術解説を受けたあと、早速車両に乗り込んでみる。車体外観もインテリアも完全に新しいデザインが取り入れられているが、前後サスペンションや駆動系はアウトランダーと共有している。その証拠に、短く見えるホイールベースはアウトランダーと共通していて前後のオーバーハングを切り詰めたことでコンパクトなイメージを与えている。

 だが走り出すとアウトランダーとはまるで印象が異なっていた。アイスバーンをともなう雪上路にもかかわらず、ステアリングの切り込みに対しスムースにヨーが立ち上がり、回頭性に優れている。切り込んで直にフロントがインを向き始めるのでアジリティに優れた印象を与えてくれるのだ。

 ヨーが立ち上がってからはスロットルコントロールで4輪パワースライド姿勢に持ち込むことも可能で、1.5リッターの小排気量ながらトルクピックアップに優れた新エンジンは、そんなシーンでも力不足を感じさせない。

 荒れた路面で時折ジャンプしながらも4輪の接地性は高く、驚かされるのはそんなボディへの入力が大きな場面でもキシミ音一つださずキャビンは快適で質感の高さが感じられるのだ。

 周回数が増えてくると路面が磨かれ、増々スリッピーになるのは一般道でも同じだ。とくにタイトターン出口では前輪のスリップとパワースライドが重なり、ツルツルの低ミュー路へと変化していく。

 そんなシーンでもエクリプス・クロスはアクセル開度をパーシャル状態にしてステアリングを操舵すれば、旋回ヨーを立ち上げることができる。じつはこれはMMCが長年の4WDモデル開発を通じて可能とした澤瀬マジックと言える領域なのだ。

 通常FF(前輪駆動)ベースのオンデマンド4WDでは、まず前輪が駆動スリップを起こすと電子クラッチが後輪へと駆動力を配分し、4輪で駆動力を確保しつつ前輪の旋回力の回復を図る。そこでステアリングを切り込めばヨーレートが立ち上がり、車体に旋回モーメントが生じてドライバーにはコーナリングに備えて安心感が生まれる。

 だが車速が高い領域では車体にスリップアングルが付いて旋回しているため、前輪車輪速<後輪車輪速となっていて、カップリングが拘束を緩めてしまう。この場面ではFFと同じ状態となり、スロットルを開けるとパワーアンダーが起こり、前輪スリップによりカップリングが再締結してプッシュアンダーを示す、の繰り返し。実際は回転の速い後輪から前輪へとトルク移動も起こりアンダーステアを助長させてしまう。

 S-AWCはこうした特性を熟知し、後輪の回転数が速いパートでは前輪内輪にブレーキをかけるブレーキAYCを装備し、アンダーステアを極力回避してドライバーの意図を裏切らない車両姿勢を確保しようと制御される。

 高速でもカップリングをわずかに締結させたまま旋回させるのでイニシャルスロットルを維持していれば、前輪の駆動トルクは舵角抵抗と相殺され、後輪により大きな有効実質駆動トルクが作用し、FR的なスライド姿勢を作ることも可能となる。それはコーナリングプロセスの中でわずかな瞬間に感じられ、その特性を理解しうまく引き出す事で、4WD車は曲がりにくいといった概念が払拭される。ランエボのS-AWC以降の進化が盛り込まれているわけだ。

 その結果エクリプス・クロスの雪上コーナリングは極めてコントローラブルに仕上がった。TC(トラクションコントロール)をオフにすればコーナー立ち上がりを4輪ドリフト状態で立ち上がることも可能で、ヨー慣性モーメントの小さな車体レイアウトも奏功し自在に操ることができた。

 ただ単に燃費要求を満たすためのオンデマンドではなく、ヨーレートフィードバック制御とブレーキAYC制御を加えることで、4WDとしての駆動力を引き出しつつスポーティなハンドリングのクロスオーバーとして仕上げることに成功しているのだ。

 この高度な制御にあえて勝手に名前を付けるなら、A.K.A.R.I(Allmode Keep Agile Rerease Impuct)ロジック制御と命名したい。この「アカリ制御」で4WD車の曲がりにくい特性は改善され悪路のコーナーをより安心して走れるようになる。

 エクリプス・クロスは新世代のAWDとして確実に進化した姿と走りを雪上で示してくれたのだ。

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