トヨタは2028年のWEC(世界耐久選手権)において、既存のGR010ハイブリッドと共に水素エンジンを搭載した車両を走らせることを計画している。ただそれが実現したとしても、全戦に出場することはなさそうだ。
WECでは、現行のル・マン・ハイパーカーとLMDhの最高峰クラスでの使用が2029年まで延長されたが、トヨタは2028年の導入が予定されている水素レギュレーションに基づいて製造されたプロトタイプ車両を段階的に投入する予定だ。
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トヨタは昨年、水素エンジンのコンセプトカー『GR H2 Racing Concept』を発表した。このアイデアを発展させたマシンを、まずはル・マン24時間耐久レースで走らせる一方で、初年度はその他のWEC戦にエントリーしない可能性もある。
TOYOTA GAZOO Racing ヨーロッパのハイパーカー開発プロジェクトリーダー、ジョン・リッチェンスは次のように語った。
「我々が計画しているのは、水素車両をスタートさせるにあたって、まずはフルシーズンではなく、いくつかのレースで走らせることだ。そのあたりは全てレギュレーション次第になってくるだろう」
またFIAと共にWECを運営するフランス西部自動車クラブ(ACO)のピエール・フィヨン会長は、2028年のハイパーカークラスに水素技術を使った車両を段階的に投入する計画について、次のように説明した。
「計画では、初年度はスパ戦(伝統的に4月か5月初旬に開催される)とル・マンで投入される予定だ」
2028年はル・マン以降水素マシンが走ることはないのかと尋ねられたフィヨン会長は、日本での富士ラウンドで走る可能性があると述べた。これは当然、トヨタの意向や意欲とも絡んでくるだろう。
またリッチェンスは、レギュレーションが固まっていないこともあり、水素プロジェクトのタイムラインについては不透明な部分も多いと強調するが、「レギュレーションが間に合えば」2028年に水素を動力源としたプロトタイプ車両で参戦できるとした。
FIAのテクニカルディレクターであるザビエル・メステラン・ピノンは、FIAが行なう最初のステップは「液体水素に関する一般的なレギュレーションとを定義すること」だと説明した。曰く、「FIA、ACO、IMSA(最高峰GTPクラスがハイパーカークラスと同じルールで運営されている)と共に専門技術ワーキンググループを立ち上げ、メーカー向けのレギュレーションを構築する予定だ」とのことだ。
そしてACOは、2030年に施行されるハイパーカークラスの新レギュレーションを2028年には形にするというビジョンを明らかにした。これによって、2028年から参加できる水素車両が従来の燃料を使うマシンと同じ条件で競争できるようになる。これはACOとFIAの代替技術に対する重要な理念でもある。
ACOとFIAは、水素エンジン車であれ燃料電池車であれ、水素プロトタイプの開発には高いコストがかかることから、開発するメーカーにはWECとル・マンで総合優勝するチャンスを与えなければならないと考えている。
ただ、彼らとしても最高峰クラスに水素技術を取り入れることの難しさを痛感している。メステラン・ピノンは「我々は白紙からのスタート。目の前には多くの課題がある」とコメントした。
そしてトヨタのリッチェンスは「ふたつの新車を並行して開発することは不可能だ」として、同社は水素プロトタイプの開発に注力するため、2030年の規則に沿った従来型の車両を製造する計画はないと説明した。
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