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カーボンパーツがラジエーターに突き刺さる。勝田貴元を襲ったアクシデント/WRC第5戦イタリア

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カーボンパーツがラジエーターに突き刺さる。勝田貴元を襲ったアクシデント/WRC第5戦イタリア

 6月2日から5日にかけて、イタリア・サルディニア島で開催されたWRC世界ラリー選手権第5戦イタリア。ドライバー選手権3番手で同ラウンドを迎えた日本人WRCドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、ラジエーターを破損するアクシデントの影響もあり総合6位でラリーを終えた。そのアクシデントの状況について本人に話を聞いた。

 2022年シーズンにおけるグラベルラリーの2戦目となったラリー・イタリア・サルディニア。勝田はドライバーズランキングに基づく出走順の不利な状況もあり、ラリー序盤から苦戦を強いられる。それでも土曜のデイ3に入り徐々にペースを上げてきていた。

勝田貴元、サルディニアの路面に苦戦しながら6位入賞「徐々にペースを上げられた」/WRC第5戦

 しかし、その日の午後にラジエーターが破損するトラブルが発生する。これによりタイムを失うことになった勝田/アーロン・ジョンストン組はステージフィニッシュ後のロードセクションで修復作業を行いながらラリーを進め、最終的に総合6位でフィニッシュ。開幕戦モンテカルロから5戦連続での入賞を果たした。

「序盤からなかなかペースを掴めませんでした。今回はランキングが3番手だったということで出走順も3番手となって僕自身初めての経験で、難しいながらもいい経験を積めました」と今戦を振り返った勝田。

「グリップ不足など難しさを感じながら、クルマの方でも一体感を得られず、バランス的な部分でもプッシュするに至らないという感じでかなり苦戦しましたね。最終的にはなんとなく方向性が見えてきたのですが、自分が求めていたペースはなかなか掴めませんでした」

 勝田組が総合7番手で迎えたデイ3は、午前中にふたつのステージを各2回走り日中のサービスを挟まずに午後、別の2本のステージを2回ずつ走行するフォーマットで行われた。昨年のサルディニアと同じこのフォーマットに対し、勝田はクルマを壊さないように気をつけていたという。

「(上記のフォーマットは)ドライバー的にもクルマ的にも非常に厳しいというか、かなりタフなラリーのひとつだと感じていて、そういったところで朝の段階でクルマにダメージを負ってしまうと非常に厳しい戦いに陥ってしまうため、そこはとくに気をつけていた部分でした」

 しかしながら、アクシデントは起きてしまう。彼によるとラジエーターが壊れたのは午後のステージだったが、その原因となる別の事象が午前中に起きていたという。

■水圧に押されたパーツがラジエーターに穴を空ける

「ラジエーターの問題自体は午後の1本目(SS14)で起きたのですが、実際にこの問題がちょっとずつ起こりはじめたのは午前中でした。土曜日朝の2本目のステージ(SS11)のジャンクションのところでターマックのエッジ部分に引っかかり、クルマがストールしてしまった瞬間がありました。その時に引っかかったのがフロントバンパーで、それによってバンパーは大きく壊れてしまいました」と説明した勝田。

「その時はラジエーター自体にはダメージはなかったのですが、バンパーに付いているカーボンパネルやパーツなどがバキバキと割れていき、(ステージを)走るごとにそれが悪化していって……」

「もちろん応急処置はしたのですが、午後の1本目ですね、ウォータースプラッシュに入った時に水圧でバンパーがラジエーターの方向に力が掛かってしまい、その時にカーボンパネルがラジエーターに突き刺さってふたつの穴が空きました」

「それがステージエンドだったのでゴールまで走って、フィニッシュ後に穴の位置を確認し、修復をすることでなんとかラリーを継続できたという感じです」

「ただ、ダメージを負ってしまってからはバンパーもほとんど壊れて機能していないような状況だったので、ウォータースプラッシュだったり、ジャンプやちょっとした石でも乗り越えてしまうと同じようにラジエーターにダメージを与えてしまうので、そういった部分は非常に注意深く走らざるを得ず、結果的にペースを大きく落としてしまいました」

■とても重要なフロントバンパーの働き

 損傷したフロントバンパーを外して走行することは不可能だったのか、との問いに対し勝田は選択肢としてはあったが、それによって増大するリスクを考慮して着けたままの走行を選んだと話した。

「もちろん、ひとつの選択肢としてはあります。ただし、このようなラフなグラベルラリーでバンパーを外すということはラジエーターに直接、岩や石が飛んでくる可能性がより多くなります」と説明した勝田。

「バンパーもそうですが、バンパーの前に網が付いています。あれは虫などを避けるためだけでなく(グラベルラリーでは)岩が結構飛んでくるので、そういったものを直接ラジエーターに当てないために付けてるものでもあり、そのために実は見た目以上に強化されています」

「なので、まれにヒョンデのクルマでトラブル等によってバンパーが外れてしまっている状況がありあますが、あれは実はものすごくリスクがあるんです」

「僕たちが(アクシデント後に)考えた時、バンパーを着けていたままのほうが、まだ全体のリスクとしては低い。壊れたバンパーのパーツがふたたび刺さったりだとかそういったリスクも考えられますが、(バンパーがあれば)落ちている岩が飛んでくる危険は防げるので、そちらの方向に振りました」

「もちろん最後のロードセクションだけであれば外して走ることも可能なんですが、まだ3つステージを残していたというところで、バンパーを外すという選択はその時点ではありませんでした」

 有力選手たちも次々にクラッシュやトラブルに見舞われ“サバイバル”の様相を呈したラリーを生き残り、着実にポイントを積み重ねた勝田/ジョンソン組。ラリーの最後にはパワーステージで5番手タイムを記録して見せた彼らの次なる戦いは、昨年勝田が総合2位表彰台を獲得したWRC第6戦サファリ・ラリー・ケニアだ。

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