モビリティリゾートもてぎで開催された2024年のスーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE』は、土曜予選日がまとまった雨量によるヘビーウエットのコンディション。一転して快晴に恵まれた日曜決勝日は気温も20度を超え、路面温度も30度前後で推移する暖かな連休中日となった。
そんな気まぐれな天候に翻弄されたのがニッサン/NMC(ニッサン・モータースポーツ&カスタマイズ)陣営で、予選で下位グリッドに沈んだ3号車Niterra MOTUL Zは11番手からの7位、同23号車MOTUL AUTECH Zは13番手から9位とそれぞれ入賞は果たしたものの、タイトル候補として戦い続けてきたシーズンとしては、最終ラウンドを前に終戦を迎える悔しい状況となった。
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決勝300kmを終えた直後に、今季エースカーを託された千代勝正と、車体とエンジン開発を統括するNMC石川裕造氏、そして木賀新一GT500総監督に改めて話を聞いた。
「自分のスティントでは後半、6位集団かな。そこまでは結構キャッチアップが出来たので、単独でのクルマのフィーリングは悪くなかったです」と振り返ったのは、23号車のセカンドスティントを担当した千代勝正だ。
ストップ・アンド・ゴーの特性を持ち、燃費にも厳しいトラックとして知られるもてぎだが、今回のレースでも土曜の雨でロングランの見極めが難しかった条件も併せてか、GT500クラスの各陣営ともにほぼ"ミニマム"となるレース距離3分の1でのルーティン作業を選択。決勝63ラップ中の23周目から25周目の間に、全車が給油とタイヤ交換、そしてドライバー交代を済ませる展開となった。
「もてぎは第一スティントのタイヤデグラデーションが大きいので、割と前半短め、後半長めというのがスタンダード。ミニマムの22周目に入ってくるクルマが多かったので、僕らはそれプラス1周のオーバーカットで動いたというカタチです」と明かす千代。
「ミニマムで入ることも考えていたのですが、入ろうとしたら3号車Niterraも入るし、12号車(MARELLI IMPUL Z)か24号車(リアライズコーポレーション ADVAN Z)も入ろうとしていて、結構ピットが混みそうだった。それで1周ずらしました」
スタートを担当したロニー・クインタレッリからのフィードバックも受け、前半とは異なるタイヤセットを選択してコースインした千代は、ここから15周近くを費やしてみるみるギャップを詰め、ポールシッターの64号車(Modulo CIVIC TYPE R-GT)を仕留めたものの、陣営内の24号車をパスすることは叶わず。そのまま3号車、24号車に連なる1パックの状態で9位チェッカーを受けた。
「ピットアウトしてから前が開いていたので、単独では割と自分のペースで走ることができて。チームからも『良いペース』と言われました。64号車(Modulo CIVIC TYPE R-GT)はGT300に引っ掛かったタイミングで上手く1コーナーの外から行けたのですが、24号車に関しては同じZ同士で……向こうは結構、クルマが軽かったですね(サクセスウエイトは23号車:40kg/24号車:5kg)。だから直線も速くてブレーキも(奥まで)行けるし、こちらの方がちょっと重いところで苦労しました」
単独なら良好なラップペースを刻める速さがあっても「このコースは人のペースに付き合ってピックアップすると、なかなかペースが戻らない」とも語る千代だが、改めてタイトルへの挑戦がこの週末で閉ざされた要因を、次のように捉えている。
「後方に埋もれてしまうと単独でのパフォーマンスが発揮できないので。そういう意味で速さを活かせなかった。もてぎはレースになるとなかなか追い越し、オーバーテイクが難しいコースなので、予選が大事というのは充分に分かっていたのですが……。そこがすべてとは言わないですが、レースの流れを作るうえで(土曜が)大きな要因になったかな」と続けた千代。
「僕らはウエットでのパフォーマンスがすごく悪くて、そこは課題として明確になった、というところですね。やはり今後ウエットでの不調の原因を見つけないといけない。タイヤとマシンのマッチングだったり、合わせ込みというところで、まだ僕らは遅れを取っている。なんとかしなきゃいけないですね」
昨季まで装着したミシュランから、今季よりブリヂストン(BS)にスイッチした23号車、そして3号車に関しては、その習熟に関し天候不順が続いたシーズンの展開にも翻弄される格好となった。その点は開発を率いる石川氏も千代の意見に同調する。
「昨日(予選)の時点で良いポジションに行けなかったというのが効きましたよね。セッションを通じて雨量も変わるなかで、そこに合わせ切るというのが、正直に言えば経験不足のところがあるのかな」と石川氏。
「(前戦)オートポリスでは土曜が走れなくてワンデーになり。僕らはBSでオートポリスを走ったことがないから非常に心配したのですけど、上手く合って結果が出せた(2位、3位表彰台)。ですので『ああ、1年間でよく勉強したな』と少し自信が付いたところもあったんです。しかしウエットとなると、ちょっと上手く行かなかったですね」
車両開発の側面からは、ここもてぎで9月に実施されたテスト時には「少し差が付いているかな?」とも感じたという石川氏だが、エンジンや空力の面で、この週末のもてぎに限って見れば、ライバルとの相対的な位置関係はやはり接近した僅差の状況だと見ている。
「ドライに関しては事前にシミュレーション等でやってきたことを、キチンと反映したセットで臨めました。午前のウォームアップで走った際『これじゃないな』というのも、3号車はパッと直して出て行けましたし。そこもキチンと使えましたので、僕らはドライバーも全員頑張ったと思いますし、やれることはやったかなと思うんです」と続ける石川氏。
「なかなか難しいのですが、正直なところ接近している。特別にウチが遅れている……というわけではない、とは思っています。エンジンは我々も当然、頑張ってギリギリを出しますけれど『同じようなことをやっているんだろうな』と。トヨタさんはトラブルも出ていたようですし(ピットガレージへ)前から入れたから『エンジンかな』と。シビックと比べても速さとしては同じようなところ。そこはいいのですが、やはりチャンピオンを獲る力というと、あの36号車(au TOM'S GR Supra)はスゴいですね」
今季導入の新型"Z NISMO"に、3号車、23号車のブリヂストンへのスイッチ、そして自身も今季よりニッサン/NMCのGT500総指揮を執ることになった木賀新一総監督も、最終ラウンドとなる12月の鈴鹿、そしてその先へと、すでに視線を向ける。
「突出して何かが悪かったか、というとそんなことはなくて。それでも『完敗』という感じです。前に出れば速いのはわかっていますので、得意な鈴鹿は狙いたい。ただもう少し、タイヤを上手く使いこなす為にはセッティングの自由度が出てくるようなクルマにしないとダメなんだろうなと。その辺が課題ですね。空力が(開発凍結により)変えられないなか、どういうことが出来るか。チームや開発のみんなで考えて、出直しですね」
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みんなのコメント
クルマ売れない、レース勝てない。
逝っちゃえ、ニッサン。