好調フェリペ・マッサ(TMGレーシング/シボレー・クルーズ)が選手権首位で迎えた2024年のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第11戦は、土曜スプリントでチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)が今季2勝目を飾り、キャリア通算41勝としてパウロ・ゴメスを超える歴代2位の勝利記録数に到達。
続く日曜メインレースでは、来季より名門ユーロファーマRC移籍が決まっている27歳のガエターノ・ディ・マウロ(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)が、予選で自身初のポールポジション獲得から今季最多の3勝目を“ライト・トゥ・フラッグ”で決めるなど、最終戦を前に圧巻のパフォーマンスを披露している。
22歳の新鋭がキャリア2勝目、メインレースは元“最年少王者”フラーガが快勝/SCB第10戦
アルゼンチン遠征から初開催のウルグアイ・ラウンドを経て、ようやく本国へと帰還したSCBは、11月23~24日に内陸部ゴイアニアのアウトドローモ・インテルナシオナル・デ・アイルトン・セナでシーズン大詰めの1戦を迎えた。
ここまで10戦で実施された20のヒートにて、すでに15名の異なるドライバーが勝利を記録し、さらに22名が表彰台に登壇するなど引き続き大混戦が続くSCBだが、シリーズに参戦するシボレーとトヨタも、ここまでともに10勝を記録する例年どおりの緊迫した接近戦を繰り広げる。
そんなSCBは、すでにアナウンスされているとおり来季に向け従来の4ドアセダンの代わりにSUVをプラットフォームとする待望の新型車両プロジェクトのデビューを控えるが、こうした転換点に先立ち約1000万レアル(約2億6千万円)の投資で建設された高度技術、持続可能性、利便性を兼ね備えた8万平方メートルに及ぶ複合施設『Scuderia Bandeiras(スクーデリア・バンデイラス)』の落成も発表された。
サンパウロ都市圏のコチアに位置する、このバンデイラス・セントロ・エンプレサリアルは、地域最大かつ最高の効率で構成されたビジネスセンターとされ、地元GDPの実に20%を担う約200社が入居。各チームやスポンサーにとって興味深いツールとなる複合施設には、300人収容の講堂や承認済みヘリポート、1200台の駐車スペースにサービスストアと20の会議室、モータースポーツをテーマに装飾されたコワーキングスペースやドリフトアリーナなどが設置される。
■来季より参戦を表明する新型SUVストックカーが登場
「僕たちはスクーデリア本社を仕事の場であるだけでなく、スポンサー、パートナー、モータースポーツファンにとっての会議やイノベーションの拠点にもしたいと考えたんだ」と語るのは、創設パートナーにも任命された現役ドライバーのアティラ・アブレウ(ポール・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)で、このスペースは24時間365日稼働し、企業イベントや会議、トレーニング、ブランドの活性化に活用し、ビジネスとモータースポーツが統合されたエコシステムを構築することが目的とされる。
「僕たちの目標は、モータースポーツをサーキットでのレースを超えた完全な体験に変えることだ。僕らはドライバー、ブランド、顧客、パートナーを有意義で影響力のある方法で結び付ける環境を提供したいと考えている」と続けたSCB通算19勝のアブレウ。
こうして新時代への準備が着々と進むなか、迎えたゴイアニアでのレースウイークはサンパウロ出身の若手成長株が予選から先行。この週末でキャリア通算300戦目を迎えたリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)や、フリープラクティス(FP)最速だった王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)らを退けたディ・マウロが、まずは自身SCB初のポールシッターに輝いた。
「本当にしたかったことだけど、これは予想外だったよ!」と驚きの言葉を続けたディ・マウロ。「今日ほど堅実なパフォーマンスができるとは思っていなかったし、本当にうれしい。僕らはカヴァレイロ・スポーツとともにシーズンの終わりに向かっているが、チームは今季を通じて素晴らしい仕事をしてくれた。ここまで一緒に2回の勝利を収めたし、これは彼らに値する結果だ」と、改めて日曜メインレースの最上位グリッドを得たディ・マウロ。
「来季は何度もシリーズを制覇している強豪ユーロファーマRCに移籍する予定ではあるが、今季のカヴァレイロで発揮したようなパフォーマンスを続けたいと思っている」
そのスプリント直前には雨が落ち、スタート約1時間前まで多数のウエットパッチが残る状況のなか、来季より参戦を表明する新型SUVストックカーの『シボレー・トラッカー』に『トヨタ・カローラクロス』、そして『ミツビシ・エクリプスクロス』の3車種のうち、TOYOTA GAZOO Racingブラジル製のモデルがサーキットに姿を現し、ファンの前で実車の初お披露目が行われた。
直後に開始されたスプリントでは、オープニングで“史上最年少王者”のフェリペ・フラーガ(ブラウ・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)が首位を奪うと、その背後ではポイントリーダーのマッサが“跳ね馬の先輩”であるルーベンス・バリチェロ(ブラウ・モータースポーツ/トヨタ・カローラ)との事故で最後尾に後退。直後にルビーニョは配下の僚友ジャンルカ・ペテコフ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)とも絡み、ここでセーフティカー(SC)が導入される。
■スタートから危なげなく走行したディ・マウロが今季最多3勝目
このSC解除とともに義務ピットのウインドウが開くと、ライバルよりさらに2周をコース上で過ごしたカミーロがオーバーカットを成功させ、フラーガから首位を奪うことに。
さらにファイナルラップでは僚友セサール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)がわずか0.021差でフラーガを仕留め、陣営が今季初のワン・ツーフィニッシュを達成。これで歴代2位の勝利数としたカミーロは、12回ものタイトルと77勝を誇る伝説のインゴ・ホフマンに次ぐ存在となった。
「すべての勝利には特別な意味がある。とくにここゴイアニアはいつもそうであり、つねに感情を昂らせる」と続けた40歳のカミーロ。「ピットストップ前の周回で多くのことを試し、予選ペース並みのプッシュを設定したが、それがうまくいった。フラーガがピットにいる間、なんとか2周をうまく走ることができたし、今日は勝つために非常に重要な仕事をこなせたね」
明けた日曜。猛暑のなかで行われた昼下がりのメインレースでは、週末に使用が許可された35回の“FAN PUSH”をすべて温存したポールシッターが、最初の数周をうまく利用してフロントロウに並んだゾンタに対し相対的なアドバンテージを得る展開に。
スタートから50分強のレース時間を危なげなく走破したディ・マウロが、来季は自身と入れ替わりでチームを去るシリーズ“3冠”のリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)らを従え、今季最多の3勝目を飾った。
「ここストックカーに到着する機会を与えてくださった神に感謝したい。それはつねに僕と家族にとって、そして僕がこの瞬間を生きるために多くのことを捧げてくれた複数の人々にとっての戦いでもあったんだ」とディ・マウロ。
「そしてカバレイロ・スポーツが僕のためにしてくれたことすべてにとても感謝している。僕たちにはまだあとひとつステージが残っているし、彼らにはそれに値するものがある、僕もベストを尽くすつもりだ」
これでディフェンディングチャンピオンのカサグランデが新たなリーダーに立ち、総勢9名でのタイトル争いが繰り広げられる2024年SCBの最終戦は、12月13~15日にサンパウロのインテルラゴスことアウトドローモ・インテルナシオナル・ホセ・カルロス・パーチェにて『Super Final BRB』の開催が予定されている。
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