F1チームには多数の人々が関わり、さまざまな職種が存在する。この連載では、普段は注目を浴びる機会が少ないチームメンバーに焦点を当て、その人物の果たす役割と人となりを紹介していく。今回取り上げるのは、ウイリアムズのスポーティングディレクターを務めるスベン・スミーツだ。
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【F1チームを支える人々:リー・スティーブンソン/ザウバー】挑戦を求め、レッドブルを飛び出したチーフメカニック
F1チームで働く人々が管理職レベルに到達するには、長年F1の世界で実績を積み重ねていくケースが多いが、他のモータースポーツカテゴリーで能力を発揮し、そのスキルをF1に持ち込む場合もある。その一例が、ウイリアムズのスポーティングディレクターを務めているスベン・スミーツだ。
スミーツは、30年以上前に全く異なる分野でキャリアをスタートし、約3年前にF1の世界にやってきた。
マックス・フェルスタッペンの出生地としても知られるベルギーのハッセルトで生まれたスミーツは、トップレベルのモータースポーツにおけるキャリアを、ラリーのコドライバーとしてスタートした。
ベルギー同郷のフレディ・ロイクスと共に働くこととなり、1995年に世界ラリー選手権WRCでコンビを組んだ。彼らは何度か表彰台を獲得する一方で、大きなクラッシュも経験。特に1999年には、サファリラリーとチャイナラリーで高速走行中に横転事故を起こした。
スミーツは2004年末まで三菱、ヒョンデ、プジョーでロイクスとの活動を続け、その後、ベルギー出身のフランソワ・デュバルとタッグを組んだ。シトロエンでのWRCシーズンを1年過ごし、2005年のラリー・オーストラリアで、デュバルとスミーツは優勝し、最高の形でシーズンを締めくくった。
その2年後、スミーツはコドライバーの仕事から退くことを決めたが、シトロエンのラリー・プログラムにはとどまり、チームマネージャーに就任。セバスチャン・ローブがWRCを支配するうえで重要な役割を果たした。2010年にはその成功が評価され、スミーツの責任が拡大、ラリー業務と並行して、プジョーのLMP1プロジェクトの監督業務も担うようになった。
スミーツの能力は注目され、WRCへの参戦を計画するフォルクスワーゲンは、彼の獲得に動いた。こうして2012年にスミーツはフォルクスワーゲンに移籍し、古巣シトロエンの支配的な時代を終わらせるべく、チームの準備を支援した。
デビューイヤー2013年にフォルクスワーゲンは、セバスチャン・オジェとヤリ-マティ・ラトバラにより13戦中10勝を挙げ、快進撃を開始。そこからオジェとフォルクスワーゲンは、4年連続のドライバーズおよびマニュファクチャラーズ両タイトル制覇の快挙へと突き進んだ。
任期の終わりである2016年までに、スミーツは、フォルクスワーゲンでモータースポーツディレクターに昇進し、チームプリンシパルのヨースト・カピートの下でラリーチームだけにとどまらない幅広い責任を負うようになった。フォルクスワーゲンに5年間貢献した後、スミーツは、2020年後半にカピートがウイリアムズのCEOとして採用された1年後、ウイリアムズF1チームに迎えられた。スミーツはスポーティングディレクターとして採用され、同時にウィリアムズ・ドライバーアカデミーを統括する役割も担い、チームの最も重要なメンバーのひとりとなった。
スミーツは、FIAや他チームとの間で競技関連の事柄について話し合う際にウイリアムズを代表するほか、レースチームの運営方法に関する責任も負っている。2022年末にカピートが退任するまではその下で働いていたが、フォルクスワーゲンから採用されたスタッフのほとんどがカピートとともに去ったのに対し、スミーツはウイリアムズにとどまった。これはチームがスミーツを非常に高く評価していたことの証だ。
チーム代表はその後、ジェームズ・ボウルズに変わったが、スミーツはウイリアムズのスポーティングディレクターの職にとどまった。ウイリアムズは体制を整えるための取り組みを進めると同時に、技術部門はコンスタントにポイント争いをするのに必要な競争力を持つマシンを作り上げようとしている。
2025年は準備の年になるかもしれないが、スミーツがこれまでモータースポーツで達成してきた成功を考えれば、2026年に新規則が施行されて環境が一変し、グリッド上での躍進の可能性が訪れたとき、彼ならそれを最大限に生かすことができると、チームは確信している。
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