鈴鹿サーキットで行われている2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦。今年のチャンピオンが決まる2連戦で、朝の予選は波乱があった。このレースのランキング3番手で迎え、自身3度目のチャンピオンを狙う野尻智紀(TEAM MUGEN)が、Q1Bグループで7番手となり、Q2に進出できず14番グリッドにつくこととなった。
セッション後の16号車ピットは簡単に近づけないくらいどんよりとした雰囲気が漂っていた中、田中洋克監督にQ1アタックの状況について聞いた。
逆転王座を目指す野尻智紀がQ1敗退の衝撃。太田格之進、思い出の鈴鹿で初ポールポジション【第8戦予選レポート】
今回はQ1Bグループで出走した野尻は、最初のアタックではセクター1、セクター2ともに全体ベストタイムをマークし、そのまま行けばQ2進出は確実という状況だった。しかし、木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)がNIPPOコーナーでスピンしコースオフ。赤旗中断となった。
ここで野尻は「アウト・プッシュ(計測1周でアタック)でも充分温められるよ。ニュータイヤでも大丈夫」と無線で話し、ニュータイヤに交換。先頭でピットアウトしたが、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が前に出て、野尻自身のペースでタイヤが温められず途中何度か距離をとる動きが見られた。
結局、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)の後ろでアタックを始めたがメインストレートでもウィービングしており、タイヤが温まりきっていないような雰囲気があった。実際にセクター1ではこのセッショントップだった坪井が26秒394だったのに対し、野尻は26秒979と大きく遅れ、セクター2でもタイムが伸びなかった。後半セクターで挽回した野尻だが、最終的に1分37秒676でQ2進出を逃した。
野尻が予選でノックアウトされるのは2021年第4戦SUGO以来。14番グリッドというのは過去4年でワーストのポジションとなる。
「なんか、急にアンダーがすげぇことになったな」とアタック後に無線で話した野尻。マシンを降りてヘルメットをとると、険しい表情でピット奥に消えていった。
■「チェックも甘かった。いろいろ考えることはある」と田中監督
改めて、中断後のアタックについて田中監督は「もし、自分のペースで(タイヤを)温められていたら、普通にいけました」とのこと。アタック前のトラフィックが大きく影響した可能性は高そうだ。
昨年も、最終大会1レース目の第8戦の予選もQ2で赤旗中断となり再開後に再度各車がアタック。この時は当時チームメイトだったリアム・ローソンが野尻の前に立ち塞がってペースを上げないようにしていたが、それでもポールポジションを獲得して見せた。
状況としては今回も似ているが「今回はもうちょっと温められなかったのかなと思います。ライバルがいるというのは分かってはいますけど……いろいろ考えることはあります」と田中監督も複雑な表情をみせていた。
ちなみにウォームアップ時に野尻の前に出た太田は「自分のことだけを考えようと思って臨みました。(赤旗明けのアタックは)自分のタイヤの温まりを考えて、前に出てペースを上げないようにしてアタックに入りました」と記者会見でコメント。
タラレバにはなるが、一度アタックで使ったタイヤでそのまま行けばウォームアップの心配も少なかったはず。
そこについて「セクター3まで行っていて、ほぼ1周タイヤを使っていたので、強いて言えばリヤだけを新品にするという方法はあったかもしれませんが、普通に走れば1周だけでも温められるという感覚はあったから、それで行こうと。ただ、その走りができなかったというだけです」と田中監督。
「周りのクルマの状況もチェックしましたが、見た目だけで継続なのかスクラブに替えたのかが分からなくて、太田選手もパッと見はスクラブに見えたので『替えたんだろうな』と思いました。そうしたら継続でした。その辺のチェックも甘かったなと思います」と振り返った。
仮に最初のアタックで赤旗が出ずにラップを完了できていれば、Q2進出はほぼ確実だったとのこと。「(最初のアタックは)すごく良くて、クルマとしても良く作れていたので……『そこでそうなるか』という感じですね」と田中監督は肩を落としていた。
ただ、ライバルの坪井や牧野も予選ポイントを稼げていないためポイント差に変動はない。14番手から追い上げることができればチャンピオンへの望みはつながるのだが「どうでしょう、かなり厳しいですけどね」と田中監督。3度目の王座に向けて、まさに正念場の1戦となりそうだ。
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