9月6日(金)、2024年WRC世界ラリー選手権の第10戦『アクロポリス・ラリー・ギリシャ』のデイ1はスペシャルステージ1から6の走行が行われ、ヒョンデ・シェル・モービスWRTのオット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組(ヒョンデi20 Nラリー1)が総合首位に立っている。TOYOTA GAZOO Racing WRTのレギュラーである日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)はSS3でデイリタイアとなり大会初日を終えた。
■1本目からギリシャの猛威炸裂
「ペースノートを誤解してしまった」とデイリタイアの勝田。僚友2台はトラブルに苦心/WRC
残るラウンドは4大会となり、シーズンも終盤に差し掛かってきた2024年WRC。迎えた第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャは、シェイクダウンが行われた木曜日の夜にセレモニアルスタートで華やかに開幕し、走行開始日となるデイ1を迎えた。
大きな岩石や剥き出しの岩盤が目立つ荒れたグラベル(未舗装路)が特徴となるギリシャのスペシャルステージ(SS)。デイ1最初の走行となる『アノ・パヴリャニ1』(22.47km)は、現地時間7時58分、気温23度と路面温度31度というコンディションのもと、選手権首位のティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)からアタックが開始となった。
朝焼けが山道を彩るなか、各車は2~4速ギヤを多用しながら時速80~120kmで細い山道を登っていく。第10戦は順調なスタートを切ったかに思われていたなか、第4走者のエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)に早くもタイヤパンクのトラブルが発生する。
さらに、走行後のリエゾン(公道)区間ではヌービルやグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)らがボンネット内部を覗き込んで整備している様子が見られている。3台がスムーズなスタートを切れず、といった幕開けのSS1はセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が制した。
続くSS2『ダフニ1』(21.67km)では、ヌービルに起きたエンジントラブル(1気筒失火)やミュンスターのハンドブレーキ不良などが表面化。さらにエバンスもエンジンに不調が起きてしまい、3台は充分なスピードを発揮できていない様子だ。
そんななか、他車が6本のタイヤを選んだなかで唯一の5本タイヤ選択をした勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)がベストタイムをマーク。僅差の2番手にはオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)が続き、2連続でセカンドベストを刻んだことで全体ベストに立った。
午前最後のSS3『タルザン1』(23.37km)が始まるころには、気温31度と路面温度39度に上昇。ここでは、総合2番手にダウンしたオジエが反応し、タナクと11.2秒差のトップタイムを刻んで首位を取り戻す。
しかしその後方では、好調を見せていた勝田がまさかの停止。5.1km地点で岩にヒットしてしまったようで、チームのヤリ-マティ・ラトバラ代表によると右リヤのサスペンションを破損したかもしれないとのこと。スローペースでなんとか走行を続けるも、勝田は6.9km地点でマシンを停めてデイリタイアとなってしまった。
■悲劇ふたたび。猛暑のなかヒョンデ勢が加速
サービスパーク『ラミア』でのミッドデイサービスを挟み、各車は午後の再走ステージ1本目の『アノ・パヴリャニ2』へと向かう。午後になると気温は35度、路面温度は50度にまで上昇したが、午前に不調を抱えた3台も整備のおかげで徐々にペースを取り戻し始め、好調キープのオジエは2度目のステージウインを飾った。
しかし、ギリシャの酷路でさらなるアクシデントが起きた。午前最後に好走を見せて総合2番手につけていたアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)が、ペースノートにはなかったという岩にヒットしてしまい右フロントのサスペンションを破損。修復は叶わずデイリタイアとなってしまった。
この日も残るステージは2本となり、迎えた『ダフニ2』では、フルモーの離脱で総合2番手に上がったタナクがペースアップし全体ベスト、僚友ダニエル・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)も後を覆うようにセカンドベストを刻んだ。
一方オジエは、完走したもののトップと16.7秒遅れの6番手タイム。タイヤにパンク等は見られなかったが、その後のリエゾンで吸気パイプを外して整備しているシーンが目撃されており、不安の残るなかで最終ステージへと駒を進める。
しかしその疑念は加速不良として現出し、オジエはアクセル全開でもわずかな加速しか得られないという状況でSS6『タルザン2』を完走。今大会初のステージウインをあげたヌービルから2分22秒8遅れのクラス6番手タイムとなり、総合順位でも4番手にダウンした。ステージ後には、「ターボが壊れた。これもモータースポーツだ」とコメントしている。
さらには総合5番手に巻き返していたミュンスターも、タイヤパンクの修理によるロスがあったが首位から2分29秒8遅れのクラス7番手タイムで完走し、総合7番手に下がってしまった。
デイ1終了時点での総合首位は、この日をノートラブルで快速に駆け抜けたタナクとなり、21.8秒差にソルド、さらに23.4秒差でヌービルが続いたことでヒョンデはワン・ツー・スリー体制を築いて見せた。
WRC2クラスは、SS1でベストを刻んだことで開幕からクラストップに立ったヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)が、その後もクラスベストを譲ることなくステージ5連勝を上げる快走を見せた。しかしデイ1最後のSS6でパンクに見舞われ、約2分弱のロス。その結果、SS6で全体4番手タイムをたたき出したロベルト・ヴィルヴェス(シュコダ・ファビアRSラリー2)が代わってクラス首位に浮上している。
レッキ時点で以前よりも荒れているというコメントが多くみられた今大会は、予想よりもはるかにサバイバルな開幕を迎えた。折り返しとなり土曜日時点での暫定ポイントも決まるデイ2は、SS7からSS12までの全6本を予定。この日はデイ1と異なり再走ステージが1区間しかなく、全ステージの総走行距離は116.23km、リエゾン(公道区間)も含めた総距離は695.64kmだ。
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