量産化が中止された「幻」のスーパーカー
2015年公開の映画『007 スペクター』に登場するスーパーカー、ジャガーC-X75を公道走行向けに改造した車両が発表された。劇中で使用されたスタントカーの1台を、デザイナーのイアン・カラム氏が再設計した。
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C-X75は2010年のパリ・モーターショーで公開され、2011年5月に量産化が決定した。ツインターボの1.6Lガソリンエンジンと2基の電気モーターを搭載するハイブリッド車で、合計出力900ps、最大トルク81.5kg-mと発生するとされていた。
しかし、当時の世界的な経済状況などを理由に2012年12月に量産化計画は中止となった。もう公に姿を現すことはないと思われていた矢先、映画への出演が決定。ジェームズ・ボンドの敵役として登場し、イタリアの首都ローマを舞台に激しいカーチェイスを披露した。
ジャガーC-X75が公道走行を認められたのは今回が初めて。
劇中車は、英国のウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング(WAE)社によって複数台が製作された。チューブラー・スペースフレーム・シャシーとジャガーの5.0L V8スーパーチャージャーを使用するなど、オリジナルのコンセプトとは異なる仕様となっている。
今回、ある匿名コレクターがスタントカーの第7号車を入手し、デザインのコンサルタント会社であるカラム(Callum)社へ改造を依頼した。同社は、ジャガー出身の著名デザイナー、イアン・カラム氏が設立・運営している。
規制適合、美しく仕上げられたボディ
この車両は英国での公道使用のために個別車両認可(IVA)を取得した。IVAとは、ごく少数しか生産されない車両や単一の輸入車向けの認可制度のこと。カラム社によると、認可取得のためにさまざまな「変更」が必要だったという。
例えば、Eマーク(EU規格適合マーク)付きガラス、触媒コンバーター付きの静かなマフラー、撮影に使用された発泡ダミーに代わるサイドミラーなど、安全性や騒音規制などに対応する部品を装着した。
また、ボディパネルの隙間を減らし、エクステリアのカーボンファイバー仕上げを復活させた。
足回りでは、公道で使いやすいようにダンピングと車高に微調整が加えられた。
C-X75の実車は、4月21日に英国で開催されるカーミーティング「ビスター・スクランブル(Bicester Scramble)」に出展される予定だ。映画ファンやジャガーファン必見の1台と言える。
カラム社の技術責任者であるアダム・ドンフランチェスコ氏は、「劇中のスタントカーはわたし達カーマニアの心に残る伝説的なシーンに命を吹き込んだ。過酷な撮影に耐えられる車両は非常に少ないため、法規に適合させながら保存することが重要だ。このように公開できるのは素晴らしいことだ」と語った。
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