かつてのGRCグローバル・ラリークロスやARXアメリカズ・ラリークロスなどを前身とし、2021年9月より北米大陸待望の新選手権としてスタートを切った『Nitro Rallycross(ナイトロ・ラリークロス/NRX)』に、NASCARのカップ・シリーズなどで活躍する“暴れん坊”カイル・ブッシュがゲスト参戦することが決定。0-60マイル(約96km/h)加速1.9秒、最大重力加速度で1.5Gを記録する600PSのラリークロス車両のステアリングを握り、11月13~14日にアリゾナ州フェニックスで開催されるワイルドホースパス・モータースポーツパークでの第3戦にエントリーする。
GRCが消滅した2017年以降、北米主導でARX後継シリーズとして考案されたNRXは、Xゲームズで複数のゴールドメダリストに輝き、5度の北米ラリー選手権王者も獲得したスタントドライブの第一人者トラビス・パストラーナが発起人となり、彼の地で絶大な人気を獲得するMTVのリアリティショー、ナイトロ・サーカスからの派生シリーズとして幕を開けた。
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すでに初年度シーズンは9月24~25日にユタ州ソルトレイクシティのモータースポーツキャンパスで開幕戦を迎え、同10月2~3日にはミネソタ州ミネアポリスのERXモーターパークで第2戦を開催。それぞれ、レッドブル・ハンセンNRXチームのティミー・ハンセンと、スバル・モータースポーツから参戦のスコット・スピードが勝利を飾っている。
そのハイレベルなカテゴリーにゲスト参戦を決めたNASCAR界の“ダークヒーロー”ことブッシュは、走り慣れたストックカーから、4輪駆動により「F1よりも優れたトラクションとゼロ発進加速を誇る」ラリークロス・スーパーカーに乗り換え、パストラーナやF1経験者でもあるスピード、そしてXゲームズ、GRC、ARXのみならず、WorldRX世界ラリークロス選手権や同EuroRXでも勝利を収めた“世界で唯一の男”タナー・ファウストらを相手に勝負を挑むことになった。
「僕のことを知る人々なら誰でも、僕が真の"レーサー"であることに異論はないだろう。僕はあらゆるタイプのトラックで、あらゆるタイプのマシンのステアリングを握り、競争力を発揮できることに誇りを持っている」と、NASCARでも2冠を誇るカップ戦を筆頭に、Xfinity、そしてキャンピング・ワールド・トラック・シリーズなどにも参戦するブッシュ。
「だからこそ、ワイルドホースパスのNRXイベントで、世界最高のラリークロスドライバーたちとホイール・トゥ・ホイールで戦えることに興奮している。(発起人の)トラビスはこのシリーズで彼らを競争させるため、やりがいのあるコースを開発し、才能のあるドライバーを募集することに多くの時間と労力を費やしてきた。その彼らに僕がどう打ち勝つか、楽しみにしていて欲しいね」と、惜しくも2021年はNASCARカップ・シリーズのタイトル獲得はならなかったブッシュ。
■グローバル戦への拡大を計画しているNRX。コンセプトモデル『FC1-X』もお披露目
一方、そのブッシュ招聘を実現させたパストラーナは「彼の出場を本当にうれしく思う。ビッグジャンプやバンクでのコーナリングなど、スリル満点のゲームはさらに盛り上がり、NRXに新たな視聴者を惹きつけることになるだろう」と期待を語っている。
「ことの発端はスコット(・スピード)と雑談しているときだった。僕らはほかのスポーツのトップドライバーについて話し『誰がNRXにも適応できるか』と妄想していたんだけど、スコットは『世界で最も偉大なドライバーはカイル・ブッシュだ』と言い切った。彼がそうした観点から誰かについて話すのを聞いたことがなかったから、本当に驚いたんだ」と続けるパストラーナ。
「そこで頭のなかで歯車が回り始め、カイルに率直な意見を求めた。『カイル、アリゾナで最後のNASCARカップ戦を終えた後の週末に、フェニックスでラリークロスに参戦する気はあるかい?』ってね」
「すると彼は『クルマに競争力はあるか?』『君やスコットと同じマシンに乗れるのか、それとも旧型の“使い古されたワークホース”に乗せられるのか?』と聞いてきた。僕はすかさず『まったく同じものさ』と答えたよ。『怪我をする可能性は?』と聞かれたのには言葉を濁しておいたけどね(笑)」
いくら経験豊富なブッシュといえど、グラベルでの走行距離が足りない条件であることに変わりはなく、パストラーナは「僕からできる唯一のアドバイスは、ジャンプに必要なスピードを稼ぐことだけ」だとも語っている。
またNRXは初年度に続く2022年にグローバル戦への拡大を計画しており、ヨーロッパと中東でのイベントをカレンダーに追加しての全10戦を予定。ラリークロス界の名門ビルダーとして活動する北欧のオルスバーグMSEと、スペインの電動モビリティ企業であるQEVテクノロジーズが共同開発した『FC1-X』と呼ばれる画期的なフルエレクトリック“SUV”を中心に、新たな電動クラスが導入されるプランもあり、この8月にはそのスタディとも言えるボディワークのコンセプトも披露している。
「これはかつての“グループB”からもインスピレーションを受けている。電動で1000PSを超えるパワートレインにより、0-60マイル加速は1.5秒未満、最大3Gの加速を実現する」と続けるパストラーナ。
「超強力なスペースフレーム構造に1ft(約30cm)以上のホイールトラベル量を誇る最強のラリークロス車両になる。今後、メーカーが独自のクロスオーバーSUVベースのデザインをリリースする計画だから、こちらも楽しみにしていて欲しいね」
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