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アクセルは強烈なGの調整スイッチ メルセデスAMG EQE 53へ試乗 感情的な高まりは得難い

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アクセルは強烈なGの調整スイッチ メルセデスAMG EQE 53へ試乗 感情的な高まりは得難い

ツインモーターで最高出力は625ps

メルセデスAMG EQE 53は、EQS 53に次ぐ、メルセデス・ベンツの高性能部門による最新のバッテリーEVだ。過去のEクラスをベースとしたモデルは、AMGを象徴する内容へ仕上がっていた。果たして電動化時代に、その流れは受け継がれるのだろうか。

【画像】アクセルは強烈なGの調整スイッチ メルセデスAMG EQE 53 同クラスの電動サルーンはコレ 全104枚

同社が、先駆けて高性能な電動モデルへ取り組んできたことは間違いない。2シーターの、メルセデスAMG SLS エレクトリックドライブの発表は2014年。クワッド(4)モーターで最高出力748psを誇り、193kmの航続距離は当時としては優秀といえた。

EQE 53の発表はそれから8年後。ツインモーターで最高出力は625psに達する。AMGダイナミックプラス・パッケージを指定すれば、686psまで強化される。車内には5名分の広さがあり、カタログ値の航続距離は516km。技術は明らかに進化した。

お値段は、英国では11万4750ポンド(約2077万円)から。インフレを無視すれば、SLS エレクトリックの3割程度の金額となる。

しかし、電気モーターは内燃エンジンと異なり個性が薄い。ベースモデルのメルセデス・ベンツEQEとの差別化は、簡単とはいえないだろう。EQS 53の兄弟といえるEQE 53には、どのような特徴が与えられたのだろうか。

デジタル技術の進展ぶりに驚ける車内

車内の雰囲気は、ベーシックなEQEと遠からず。実際のところ、シートに刻印されるAMGのロゴ以外、基本的には共通といっていい。

英国仕様の場合、レザーシートのカラーはブラックかブラウンの2択。調整域は広く、肉厚なサイドサポートがしっかり身体を支え、長距離でも快適に過ごせるはず。

内装トリムには、ナイト・エディションとツーリングの2種類が設定される。異なる風合いのウッドパネルで飾られ、インテリアの印象を選べる。先進的な高性能サルーンにピッタリかどうかは別として。

落ち着いたダッシュボードがお気に召さない場合は、約7000ポンド(約126万円)のオプションで、助手席側の正面にタッチモニターが実装される艷やかなハイパースクリーンも指定できる。EQSのように。

インフォテインメント・システムは最新版のMBUX。マルチメディアなど望まれるであろう機能は網羅し、操作性は良い。デジタル技術の進展ぶりに、驚けるだろう。

メルセデス・ベンツが伝統としてきた、高い製造品質は内装に受け継がれていないようだ。素材は高水準ながら、フィッティングが今ひとつな部分が散見される。プラスティック製の部品には、高級感に欠けるものも含まれる。

車内空間の広さは、ベーシックなEQEと同じ。大人4名で快適に長距離移動できる。テスラ・モデルSに並ぶ、ゆとりや開放感まではないだろう。

アクセルペダルは強烈なGの調整スイッチ

AMG EQE 53のパワーに不足はない。駆動用バッテリーはEQE 350+と同じだが、駆動用モーターは専用品。内部コイルの構造が異なり、制御される電流も多い。

0-100km/h加速に要する時間は3.4秒。ダイナミックプラス仕様ではローンチコントロールが装備され、3.2秒へ短縮される。メルセデスAMGが提供した4ドアサルーンとして、過去最速の加速力を誇る。

公道を走らせてみると、数字が示すとおり、EQS 53のたくましさに感心する。右足へ力を込めれば、内臓が後ろへ引っ張られるような感覚を伴う。助手席の同乗者は、悲鳴を上げるかもしれない。

ドライブモードによって展開される最高出力は変化し、スリッパリー(滑りやすい路面用)で312ps、コンフォートで500ps、スポーツで563psまで許される。スポーツ+モードを選択すると、625psのすべてが開放される。

ダイナミックプラス仕様の686psは、ローンチコントロール時にしか引き出せない。それでも、不満ないほど速い。

レスポンスも秀抜。右足の角度に対し瞬間的に加速力が立ち上がる。625psを発揮することにも躊躇は感じられず、アクセルペダルは強烈なGの調整スイッチのようだ。

とはいえ、これは近年のバッテリーEVでは珍しいことではない。ポルシェ・タイカン・ターボは、約3年前から同様な体験を叶えていた。テスラ・モデルSは、10年前に実現していた。

しっくり来ない人工音 流暢な身のこなし

もちろん、エンジンサウンドは伴わない。そこで同社の技術者は、新しい聴覚体験が必要だと考えた。走行速度やアクセルペダルの角度に応じて、V8エンジンを模したものではない、人工音が車内で再生される。

停止中にも、脈動するような唸りが聞こえる。音質は、映画スター・ウオーズでライトセーバーを振り回す音や、ジェットエンジンの響きに近いと感じた。

その受け止め方は、人それぞれだろう。筆者には、他メーカーの人工音と同様に、高性能モデルの音響としてはしっくり来なかった。

EQE 53には後輪操舵システムが備わり、ボディサイズを考えれば取り回しがしやすい。エアサスペンションも標準で、2600kgある車重ながら、姿勢制御も優秀。実際、路面の傷んだ市街地からカーブの連続する峠道まで、条件を問わず流暢に身をこなす。

大きな入力が加わっても、乗り心地は落ち着いている。ただし、動力性能に見合った硬さはある。

駆動用バッテリーが低い位置に敷き詰められ、コーナリング時は重心の低さが伝わってくる。不必要という理由でアクティブ・アンチロール機能は備わらないが、タイトコーナーを鋭く旋回しても、僅かにボディロールを示す程度だ。

スタビリティ・コントロールの縛りが緩くなるスポーツ・モードを選択すると、リアアクスル主体の操縦性を楽しめる。メルセデスAMGによって磨かれた、シャシーの能力を解き放てる。

従前の感情的な高まりや充足感は得難い

それでも、小さくない車重が生むぎこちなさは拭えない。ボディサイズも大きく、幅が狭い道では窮屈に感じられてしまう。ステアリングの感触は淡白で、タイカンのような自然な印象とも異なる。

ブレーキには、オプションでカーボンセラミック・ディスクを組める。回生ブレーキの容量が260kWと巨大で、少し過剰な装備にも思えるが、凄まじい加速を味わうと必要性を理解できる。ただし、ペダルの感触には改善の余地があるだろう。

今回の試乗での電費は、平均で3.9km/kWh。駆動用バッテリーは90.6kWhだから、現実的な航続距離は350km程度と考えられる。近似条件でのモデルS プレイドは5.3km/kWhと484kmだから、差は小さくない。

シングルモーターのメルセデス・ベンツEQEは、快適で高水準な電動サルーンとしての使命を果たしている。エアサスペンションが標準装備で、価格は高めだとしても、全体的な訴求力は高い。

他方、2基目の駆動用モーターを搭載し、高出力化されたメルセデスAMG EQE 53では、その強みが若干失われている印象。サスペンションが引き締められ、快適性にも犠牲が出ている。

メルセデスAMGの技術力が高いことは、間違いないだろう。しかし、ブランドへ期待する感情的な高まりや充足感までは、得ることが難しいかもしれない。

◯:印象的な動力性能 洗練されたシャシー
△:速さではテスラ・モデルS プレイドの方が上 硬い乗り心地 特有の魅力や高級感が不足気味

メルセデスAMG EQE 53 4マティック+(英国仕様)のスペック

英国価格:11万4750ポンド(約2077万円)
全長:4964mm
全幅:1961mm
全高:1495mm
最高速度:220km/h(239km/h:ダイナミックプラス・パッケージ)
0-100km/h加速:3.4秒(3.2秒:ダイナミックプラス・パッケージ)
航続距離:442-516km
電費:4.8-5.6km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2600kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:90.6kWh
急速充電能力:170kW(DC)
最高出力:625ps(686ps:ダイナミックプラス・パッケージ)
最大トルク:96.7kg-m(101.8kg-m:ダイナミックプラス・パッケージ)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

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