2023年12月20日、国土交通省都市局街路交通施設課が、「駐車場政策の最近の動向」という資料(全59ページ)を公表した。駐車場法の成り立ち(1957年5月制定)から、現在の課題と取り組み状況までをまとめたもので、この1冊で国の駐車場政策の考え方や方針などがまるっとわかる便利な資料だ。本資料における2輪車に関する内容について、複数回にわたって紹介する。
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歩行者中心の街路空間へ
国交省は毎年のように駐車対策の現状についてまとめた資料を更新し公表しているが、ここ数年は「ウォーカブルな街づくりとの連携(歩行者環境整備を重視)」と「多様なモビリティへの対応(電動キックボードや2輪車)」など、駐車場整備の方針が大きく動いていることもあってか、資料の公表頻度が高まっている。
こうした街づくりの指針は「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン」(第2版・2023年4月)に詳しく説明されているが、その背景には、1950~1970年代の高度経済成長期に建てられた建築物が、老朽化で一斉に改修/建て替えの時期を迎えていることがある。
駅の周辺や繁華街など市街中心部を構成する建物をただ壊すのではなく、官民空間をエリア一体で考えてリノベーションすることで、路外駐車場の適正な再配置や集約化などで工夫を凝らし、公共交通やパーソナルモビリティ、歩行者の利用環境を整えたいという意向があるのだ。
どこに行くにも家族でマイカー利用という時代は、少子高齢化と相まって終焉に向かっており、今後の駐車場施策は街づくりと連携して行い、歩行者中心の街路空間を作ることで、街の賑わいや魅力を創出していこうというのが狙いだ。
とはいえ、街づくりなんて簡単にできるものではなく、たいていは駅前再開発などのタイミングでこうした国の方針がどれだけ反映されるかがポイントとなる。
多様なモビリティの中に50cc超の自動二輪車が含まれているのは本当にありがたいことだが、インバウンド需要による観光バス渋滞、小口配送も含めた荷さばき渋滞、バリアフリー/ユニバーサルデザイン対応など、街なかの駐車に関わる問題は多岐に渡る。
そのため、国交省では2022年10月に「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」を設置して、有識者や関係団体らと駐車場政策のあり方について検討を重ねている。
そして、検討会の下には「需給マネジメントWG」と「施設デザインWG」の2つのワーキンググループ(部会)が設置され、検討事項の深掘りを行っている。次回は、このワーキンググループも関わってくる2輪駐車場の現状認識などについて紹介する。
―― 大規模な再開発の中、2輪車駐車場を含めて駐車環境が再構築されている東京・渋谷の駅周辺部。高層複合商業施設「渋谷ヒカリエ」にもバイク駐車場が設置され、質と量の両面で拡充が進んでいる。現在進行形のモデルケースだ。
―― あおい通り(渋谷区)の道路沿いに歩道を切り下げる形で作られた自転車等駐車場(左)とMIYASHITA PARK(渋谷区)の地下にある2輪車駐車場(右)。
―― 神奈川県・大和駅前の繁華街につくられた荷さばき場。広い歩道をえぐり、ピットレーンのようなカーブサイド(路肩)スペースが作られており、配送のトラックや軽バンが次々に荷下ろしをしていた。
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