現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > フェラーリ430スクーデリア vs ポルシェ911GT2 新車時の評価は? 後編

ここから本文です

フェラーリ430スクーデリア vs ポルシェ911GT2 新車時の評価は? 後編

掲載 更新
フェラーリ430スクーデリア vs ポルシェ911GT2 新車時の評価は? 後編

もくじ

前編
ー ヤバすぎるくらい速くてひたすら優秀」
ー 430スクーデリア オヤッと思うのは2点
ー 430スクーデリア フェラーリの「ショーケース」
ー 「目的はただひとつ 速く走ること」
ー ギアが繋がるときのガキッ、がステキ
ー 速くて、俊敏で、ひたすらエキサイティング
ー グダグダ文句をつけるのは的外れ

いま乗るポルシェ997 GT3 RS 「芸術品」と言われるワケは

後編
ー 911 GT2、いざ試乗 まず謝罪
ー これまでのGT2を振り返ると……
ー ターボとGT2 同じところ、違うところ
ー 997GT2、ほとんど文句なしの成功作
ー 最終結論 スクーデリア/GT2 どっち?

911 GT2、いざ試乗 まず謝罪

そういうわけで、僕は準備万端だった。新型GT2にひと言キツーく言ってやるべく。いったいどうしてオマエはこんなにショートなギア比なのかと。

ターボと同じである必要などないだろうと。

広報車を借り出して9時30分にファクトリーの門を出て、9時45分にはすでにグチグチ言っていた。GT2はフツーのターボよりも100kg軽くて、一方パワーは50psも上がっている。なのにギア比は変わっていない。

フル加速時には、だからイライラするくらい頻繁にシフトしないといけない。GT3用のロングレシオの中間ギアが採用されなかったのはなぜなのか。まったくもってワケがわからない。

とそのとき、スピードメーターがある嬉しからぬインフォメーションを表示した。ギアチェンジのタイミングがきたことを知らせる黄色の三角マークが点灯したのでオヤッと思って下のほうを見たら、デジタル速度計は180km/hを示していた。

社会的にあまりイイコチャンではない僕はフツーのターボの3速マックスが167km/hでしかないことを知っていて、よってその時点で直ちに異議申し立てを取り下げることにした。失敬。

このような次第で、GT2はバカみたいに速い。

実際にはギア比はよりロングになっているのに、フツーのターボで走るときよりもさらに忙しくシフトしている気になってしまう。繰り返しになるけど、やっぱりこれはタダモノじゃない。

ここ1年もないくらいの期間にクルマの速さがいかに激しくアップしているか、GT2に乗るとよくわかる。メカニズム的に似たようなフツーのターボなら1858万円しかしないのに、わざわざ2600万円も払ってこっちを買うのは、一見バカげている。

でも、そう思ったひとはある重大な部分を見逃している。直線でのパフォーマンスのほか、主だったパフォーマンス種目のほとんどにおいて、GT2はカレラGTと同じだけ速い。でもって、カレラGTはゆうに6000万円超だった。

これまでのGT2を振り返ると……

GT2は、その生い立ちや存在のありようにおいてBMWのM3と大筋よく似ている。どっちももともとホモロゲーション取得用として世に出て、そしたらよく売れたのでメーカーは気をよくして続編を出した。シリーズ生産車にして。

1995年の993のGT2は、今もってワンオブ史上もっともフツーじゃないロードカーであり続けている。その次の996のGT2は、これは各方面から不評をこうむった。理由は、フツーのターボに似すぎていたから。

モータースポーツ直系のキラメキみたいなものに欠けていたから。さらに、芝生トラクターよりもアンダーステアだったから。なお996GT2の名誉のために言っておくと、簡単なジオメトリー変更とタイヤの交換(もっとグリップの強力なものに)だけでハンドリング関係の難点はそのほとんどを修正することができる。そういう意味では、996は不当に低く評価されているともいえる。

997のGT2はターボがベース。ボディシェルは共通だし、排気量3600ccのエンジンも内部は同じ。でも、そこから先はだいぶ違っている。伝統にしたがってGT2はリア2輪駆動だし、リミテッドスリップデフが付いている。

あと、フツーのターボ比さらに50ps増しのパワー(今や530ps/6500rpmにもなっている)を出すためにポルシェは2項目のモディフィケーションを加えている。

具体的にはターボチャージャー×2とインテーク・マニフォールドが違う。後部のエアインテークはラムエア効果をもたらす形状。可変ベーン型ターボチャージャーはコンプレッサーのサイズを拡大。タービン形状をエアフローに対して最適化。ブースト圧はベース車のそれから0.4bar高くなって1.4bar。

ピークトルクはついに69.3kg-m……と聞いて、スルドいひとは気がついたかもしれない。スポーツクロノのオプションをターボに付けるとオーバーブースト機能が使えて最大トルクはこれと同じになる。

でも、ナンだつまんない、と思ってはいけない。フツーのターボの場合69.3kg-mを出せるのはホンの短いあいだだけだけど、GT2なら時間制限はない。2200~4500rpmの回転域で全負荷をかければいつでも。ずっと。

ターボとGT2 同じところ、違うところ

吸気温度をいかにしてよりクールにしているかについてポルシェはすごく念入りな説明をしてくれているけど、細かいことを書いてる時間が今はない。というか質問しないでください。このへんに関しては。

より効率のよい燃焼を得るために圧縮ではなく膨張させることで、とかナンとかいったところで結局はよくわかんない。皆さんもたいがいそうだと思うけど、燃えるの焼けるの話でよくわかるのは例えばトケたタイヤ関係とか。あるいは炭化したブレーキとか(ちなみにセラミックディスクの径はフロントが380mmでリアが350mmですよこういうことならどんどん訊いてください)。

それよりも、パフォーマンスの数字がまあすごい。0-100km/hが3.7秒で0-200km/hが11.2秒ときたもんだ。でもって最高速は329km/h。どこか広大なところでお試しください。

なお、このGT2は限定生産モデルではない。といってまったくフツーの量産ポルシェともいえないけど。なぜなら、開発をやったのはモータースポーツ部門の人たちだから。あのGT3をやったのと同じ。

サスペンションはターボ用とGT3用の混成、プラス専用のモディフィケーションが少々。フロント駆動系がなくなってシート×2がカーボンでブレーキがセラミックだからターボ比まるまる100kgも軽くなっていて、なのでスプリングとダンパーのレートはGT2専用仕立て。

リア・アクスルのサブフレームは、ターボはスチールだけどGT2はアルミ。リアサスのピボットはローズジョイントつまりピロ。サスペンション・ジオメトリーの調整可能範囲がデカいのはGT3と同じ。そして、スプリングシートは可動式。ここまで言えばもうおわかりだろうけど、つまりはこういうこと。

もしアナタがGT2を買ってストック状態のセッティングがお気に召さなかったとしても、それはかなりどうにでも変えちゃうことができる。ピッタリくるように。

それと、530psよりもっと高いパワーを出してほしがるひとたちがきっといる。でも、僕は彼らの仲間になろうとは思わない。なぜなら、GT2は現状ですでに十分すぎるくらい速いから。

DSGなりF1マチックなりのタイプのギアボックスがないと変速が追いつかないくらい速いから。次から次へ、まるでホットドッグ早食い競争のチャンピオンみたいな勢いでもってGT2はギアの守備範囲を使い切っていく。

997GT2、ほとんど文句なしの成功作

ノイズ関係はあまり強烈とはいえない。チタニウムのエグゾーストが多少とも彩りを添えてくれてはいるけど、なにしろターボだから。シャープな吸気音を望む余地なんてないから。ポルシェがこのクルマをいわばGT3のターボ版みたいなものにするべく賢明に仕事をしたのはすごくハッキリわかるけど、でもいくつかの点で限界がある。

まず、ターボラグ。それをなくすべくポルシェはめちゃくちゃ頑張った ──実際GT2はターボが付いてるとはわからないくらいレスポンシブだ── けど、依然としてスロットルの動きと加速とのあいだにわずかな待ちが入る。

なので、自然吸気エンジンのクルマだったらコーナーのエイペックスで初めて踏み込んでちょうどいいけどGT2の場合それだとちょっとズレる。予測コミのドライビングをしないといけない。スロットルを前もってちょっと開け気味にして準備万端にしておいて、それからワイドオープン。

GT2は従来、電子制御のトラクション・デバイスも、同じくスタビリティ・デバイスもなしだったけど、今回初めて付いた。で、そのことによってアピールがガンと拡がった。今やチョイ濡れ路面でもハードにトバせる。

ちょっと踏み込むと簡単にクルマの姿勢が乱れてそこにガガッと強烈な制御が入って、みたいなのたうちまわり走行にはならない。狙ったとおりのラインに沿ってドライブできる。デバイスの介入ぶりはごく上品にして控え目。でも、それが与えてくれる安心感はググッと心強い。

なお、GT2には今回、ローンチ・コントロールの機能が付いている。介入ぶりはいささか控え目のハンタイだけど、その代わり必要であればいつでもものすごいダッシュをすることができる。0-100km/h3.7秒の加速が手に入る。

ドライ路面でのトラクションはエクセレントの一語(カラッカラに乾いたのアスファルト上で325セクションのリアタイヤを鳴かせる余地はそれでもまだ残っている)。

専用品のミシュラン・パイロット・スポーツ・カップのデキは、996のGT2に着いてた頃のパイロット・スポーツと比べたらはるかにベター。カーボンのバケットシートはその背後の空間に荷物を積むときは背もたれを倒すことができるタイプで、これまたエクセレント。

そういうわけで、997GT2はほとんど文句なしの成功作。

最終結論 スクーデリア/GT2 どっち?

これなら世間がほっとくまい。先代より速くて、きっちりスキなくでき上がっていて、でもってはるかに使える。

ただ、この上なく速いのはいいとして、というかおそらくはその速さのせいで、今度のGT2には問題がなくもない。

というのは、よりチープなGT3と比べた場合にGT2は与しやすいクルマとはいえないから。そこのところは、程度の差はあるけど前から変わっていない。

クルマと一体になるのが難しい。疎遠ぽい。性能を引き出すために必要なスキルやスペースがもっと高かったり大きかったりするクルマだから当然といえば当然ながら。

ひとによっては、GT2はその加速の強烈さだけで十分に中毒モノだと思う。あるいはそう、このクルマに関してキッチリしたことを言うためにはサーキットで走らないといけない。

ちなみに、テストドライバーのワルター・ロールはこのクルマでニュル7分32秒のタイムをすでに出している。そういうGT2。値段は単独で見ると激しく高いけど、比べると430スクーデリアより300万円も安い。

それに、公道上におけるレア度でいったらポルシェの勝ちってことになりそうだし。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
VAGUE
【クルマら部】「ポルシェ911」クルマ愛クイズ!全4問・解答編
【クルマら部】「ポルシェ911」クルマ愛クイズ!全4問・解答編
レスポンス
昭和の香り残す街に130台のクラシックカー…青梅宿懐古自動車同窓会2024
昭和の香り残す街に130台のクラシックカー…青梅宿懐古自動車同窓会2024
レスポンス
三菱「新型SUVミニバン」公開! 全長4.5m級ボディדジムニー超え”最低地上高採用! タフ仕様の「エクスパンダークロス アウトドアE」比国に登場
三菱「新型SUVミニバン」公開! 全長4.5m級ボディדジムニー超え”最低地上高採用! タフ仕様の「エクスパンダークロス アウトドアE」比国に登場
くるまのニュース
新型フォルクスワーゲン・ティグアン発売。7年ぶり全面刷新、2Lディーゼルと1.5Lハイブリッドを展開
新型フォルクスワーゲン・ティグアン発売。7年ぶり全面刷新、2Lディーゼルと1.5Lハイブリッドを展開
AUTOSPORT web
【第2回】サイトウサトシのタイヤノハナシ:スタッドレスタイヤはなぜ効く?
【第2回】サイトウサトシのタイヤノハナシ:スタッドレスタイヤはなぜ効く?
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

3026.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

2500.03688.0万円

中古車を検索
430スクーデリアの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

3026.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

2500.03688.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村