クラスレスな「メイヤーズ・マンクス」
「メイヤーズ・マンクス」というブランド名やモデル名はご存じなくても、フォルクスワーゲン・ビートルがベースのビーチバギーなら、見たことがある読者は多いはず。自宅のガレージで組み立てられる安価なキットカーとして、1964年に誕生した。
【画像】ビーチバギーをリメイク メイヤーズ・マンクス ID.バギー・コンセプトとスモール・ポップなEVたち 全101枚
ビーチバギーのメイヤーズ・マンクスを開発した、創業者のブルース・メイヤーズ氏は、2020年に引退するまでカリフォルニアの陽気な文化に貢献してきた。2021年に彼はこの世を去るが、その魂は今も息づいている。
「彼が亡くなる前に、一緒に仕事できました。素晴らしい時間でした」。2020年に事業を買収し、メイヤーズ・マンクス社を引き継いだベンチャー企業のメンバー、マイケル・ポティカー氏が振り返る。
「買収を持ちかけた時、彼はまだ元気でした。永遠に生き続けそうに感じるほど、エネルギッシュな人でしたね」
メイヤーズ・マンクス社の前身、BFメイヤーズ&Co社は比較的短命だった。経営難に陥り、1971年に倒産している。
だが、2000年にブルースはメイヤーズ・マンクス社を立ち上げ、ビーチバギーの生産を再開した。ホイールベースの長いマンクスター2+2と、デュアルスポーツ、マンクス・キックアウトという新モデルとともに。
ベンチャー企業の一員として加わったポティカーは、メイヤーズ・マンクスの魅力へ引き込まれた。「サンディエゴのダウンタウンで運転すると、沢山の人にサムズアップされたんです。高級住宅地でも。クラスレスなクルマですよ」
キットカーをリマスタリング モダンに安定化
カリフォルニアで育った、現CEOのフリーマン・トーマス氏も、「ビーチバギーに夢中です」。と認める。彼は、アウディTTやクライスラー300、新しいダッチ・チャージャーなどに関わった自動車デザイナーだ。
しかも、1990年代にはフォルクスワーゲン・ニュービートルも描き出した。2003年には、ジープ・トレオというオフローダーのコンセプトカーも手掛けている。レトロでコンパクトなバギーの再発明は、得意中の得意といえる。
メイヤーズ・マンクスは、時代へ対応させる必要があった。FRP製ボディとビートルのフロアパンを融合し、空冷フラット4エンジンで走るスタイルには、手を加える必要があった。キットカーをリマスタリングし、モダンに安定化させることが目指された。
同時に彼らは、ブランドを未来へ導くことにも注力している。つまり、電動化だ。メイヤーズ・マンクス 2.0EVは、彼らのビジョンをカタチにしたものといえる。
駆動用モーターとバッテリーのサプライヤーに関して、ポティカーは口を閉ざす。だが、約200psの最高出力と約27.6kg-mの最大トルクを、安定して発揮できる。駆動用バッテリーの容量を大きくすれば、480kmの航続距離が得られるそうだ。
車重は1650kg。ビーチバギーとしては重いが、本来の個性は維持されている。
ポティカーによれば、トーマスが優先したことは、従来のメイヤーズ・マンクスの精神と大きさを維持することだったとか。「大きなビーチバギーを作ろうという試みは、成功しませんでした」
バッテリーEVとの相性が良いビーチバギー
ワークショップに置かれていた、電動のメイヤーズ・マンクス 2.0EVは、短距離での利用を前提とした仕様だった。最高速度は40km/hへ制限され、欧州ではシトロエン・アミと同じマイクロカーに相当する。
駆動用バッテリーの性能などで価格は変化し、フルスペックなら7万4000ドル(約1102万円)。しかし、これなら4万9000ドル(約735万円)に収まるという。
一般的に、アイコニックなクラシックカーの電動化には、否定的なクルマ好きが多い。エンジンの味わいが失われることと、驚くほどに膨らむコストや車重へ、眉をひそめたくなる理由はわかる。短い走行距離にも。
だがメイヤーズ・マンクス 2.0EVなら、そんな批判はさほど当てはまらないだろう。ポティカーが述べるように、フォルクスワーゲンのエンジンを求めて、ビーチバギーを買う人は殆どいないからだ。
過去を振り返れば、オリジナルのメイヤーズ・マンクスには多様なエンジンが載ってきた。シボレーやポルシェ、フォードのユニットや、飛行機用の星型エンジンまで。ビートルをベースにした最大の理由は、優れたコストパフォーマンスにあったといえる。
メイヤーズ・マンクス 2.0EVは、静かで排気ガスを出さない。賑わう海岸線を中心に、ゆっくり短距離を走るという乗り方だから、バッテリーEVとの相性は良い。
電動パワートレインは、砂丘の走破性にも有効だという。将来的には、メキシコのバハカリフォルニアでレースを開きたいとポティカーは話す。
内燃エンジン版キットカーの事業も維持
加えて、従来のキットカー事業も維持するという姿勢が新しい。内燃エンジンで走るビーチバギーを今後も自宅ガレージで組み立てられるよう、部品を生産・在庫している。既存ユーザーだけでなく、新規顧客の要望にも応えるという。
説明を聞き終え、鮮やかなブルーに塗られたエンジン版のデモカーへ試乗させていただいた。ボディは少し汚れていた。プロモーション映像の撮影で、最近バハカリフォルニアを全開走行した時のままだとか。
「ビートルを所有した経験はありますよね? 問題ないはずですよ」。とポティカーは笑顔で話しながら、鍵を渡す。確かに1972年式を所有しているが、インテリアはかなり簡素だ。とはいえ、運転した印象は確かにビートルへ近い。
ビートルのボディは、風雨を凌ぐための必要最低限で作られている。ドアやルーフを取り除いても、大きな違いは生まれないようだ。
メイヤーズ・マンクスのボディは小さく低く、シートポジションは高くない。ビーチバギーだから、オフロードでの楽しさ以外は基本的に考えられていない。通常のクルマと同じ快適性を、期待してはいけない。
大通りで信号待ちしていたら、隣にフルサイズSUVのGMCユーコンが停まった。筆者の頭は、ホイールアーチの上端の辺り。運転手の姿はまったく見えない。メイヤーズ・マンクスの存在へ気付いているのか、少し不安になってしまった。
一見無意味でも乗っただけで幸せ
空冷のフラット4エンジンは、700kg程度のビーチバギーを苦もなく運ぶ。ステアリングの感触は軽いが、安心感がある。キットカーとは思えないほど、ペダル操作に対するレスポンスは鋭い。
カリフォルニアの潮風に髪をなびかせる。少しスピードを出せば、エンジン音は聞こえなくなる。エアバッグやラジオだけでなく、パワーステアリングもないが、帰りの空港で思い出し、ニヤけてしまったほど面白い。
ポティカーやトーマスのような人物によって、メイヤーズ・マンクス社が引き継がれたことへ、深い感謝の気持ちが湧いてくる。本来の特長を高く評価し、移り変わる時代に適応させながら、次の世代へ残そうと尽力してくれている。
バッテリーEVの時代にも、こんなクルマが人間には必要だと思う。一見無意味かもしれないが、乗れば幸せな気分にしてくれるのだから。
ちなみに、メイヤーズ・マンクス 2.0EVは発表と同時に話題となり、今後2年間の生産分は既に埋まったという。2000名以上の希望者から、入金があったそうだ。
撮影:アダム・ワーナー
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みんなのコメント
嫌いじゃないぞwww