日本初開催となったフォーミュラE東京E-Prix。日本に馴染みの深いふたりのドライバーにとっては、悔しさと手応えの両方を得るような結果となった。かつてスーパーフォーミュラやスーパーGTで活躍し、今回の東京大会で期待されたサッシャ・フェネストラズ(ニッサン・フォーミュラEチーム)とニック・キャシディ(ジャガーTCレーシング)は、予選でふたりともデュエルに進出することができず、後方からのスタートに。それでもレースではふたりとも粘り強く追い上げ、初の東京開催で入賞を果たした。
「ポイントのことを考えて終盤は我慢した」ニック・キャシディ
決勝日朝のFP2ではトップから0.1秒差の6番手につけ、予選のグループAも僅差で3番手タイムを記録したキャシディ。デュエル進出かと思われたが、テクニカル面での違反があったとしてベストタイムが抹消され、一転して後方グリッドに沈むこととなった。
ニッサンに手応えの2位ローランド。後退はエネルギーマネージメントの影響/フォーミュラE東京E-Prix決勝後会見
「朝からペースは良くて、Q1でもトップから0.03秒以内だった。自信はあったけど、技術的な違反によりタイム抹消となった。正直、予選に関しては僕にできることは何もなかった」とキャシディ。気になる違反内容に関することについて、チーム側の問題ではあるようだが、詳しい言及を避けていた。
19番手と後方からのスタートとなったが、着実に順位を上げていき20周目には12番手に浮上。レース後半に導入されたセーフティカーが明けるとさらに順位を上げ、最終的に8位でフィニッシュ。ノーマン・ナト(アンドレッティFE)が5秒加算のペナルティを受けたため、暫定結果の時点では7位に繰り上がっている。
「レースはタフだった。いろんなところで接触があって、とにかく僕はフロントウイングを守ることを心がけた。その中でも前に出ようと頑張ったし、ベストラップも全体で2番目に速かった。すべてがうまくいっていればトップ争いをするポテンシャルがあっただけに、正直残念ではある。とはいえ、予選でのポジションを考えるとポイントを獲得できるところまでリカバーできたのは良かったと思う」とレースを振り返ったキャシディ。
残り5周の段階では、トップ10の中で一番エナジーを残している状態だったが、ポイント獲得を優先してリスクを負わないという選択肢をとったという。
「たくさんエナジーは残していたけど、レース中のオーバーテイクは難しいと思ったし、僕もそこまでリスクを負いたくなかった。19番手からポイント圏内まで来ていることを考えると素晴らしい結果だと言える。だから今日は我慢をしたんだ」
これでポイントランキングはパスカル・ウェーレイン(TAGホイヤー・ポルシェFE)に並ばれたものの同点で首位をキープしたキャシディ。
「サンパウロと今回で僕自身も驚くくらい素晴らしいパフォーマンスを発揮できたと思う。今回は結果という面で大きなものを取り逃がした感じはあるけど、それでもチャンピオンシップをリードできていることが驚きだ。僕たちは強いから、この先も大丈夫だろう」と今後の見通しについても語った。
日本でのレースは、2020年12月に行われたスーパーフォーミュラ最終戦以来で「日本のファンのみんなに会えて本当に嬉しかった。できれば、来年はもっと大きなグランドスタンドを作ってほしいなと思っている」とキャシディ。
加えて、初めての東京E-Prixの雰囲気も堪能していた様子で「特に予選の時はファンの声援や雰囲気がとても良かった。僕はQ1で落ちてしまったけど、(デュエルの時は)グランドスタンドの雰囲気を感じることができて楽しかった」と笑顔で語っていた。
そして、今回表彰台に上がった3選手へのリスペクトも忘れておらず「今回表彰台に上がった3選手にはおめでとうと言いたい。そして、今度は彼らとしっかり勝負したい」と次戦以降に向けた意気込みも語っていた。
「完全に僕のミス」悔しい予選でのスタートとなったサッシャ・フェネストラズ
一方のフェネストラズは昨日のフリー走行1回目でピットアウトしようとした際に他車に突っ込まれ、セッション終盤を走ることができなかった。その後は左手を痛めたようでアイシングをするなど対応していたが、今朝のフリー走行2回目以降は大きな問題はなくドライビングできていたようだ。
ただ、タイムリザルトでは上位に食い込めず、フリー走行2回目で17番手。予選グループBでは1度目のアタックでターン2・3間の“ジャンピングスポット”でバランスを崩し、ウォールに若干ヒット。これでマシンバランスが大きく変わってしまい、同グループ10番手タイムで終えた。
「FP2から予選にかけて、ターン1がすごくグリップするようになった。FP1からずっとターン1が濡れていたけど、予選では完全にドライになっていた。そこで少しプッシュをしたら、少し限界を超えてしまってターン2終わりでジャンプをして、ほんの少しだけウォールにタッチした。それだけで、左リヤタイヤが曲がってしまうには十分だった。完全に僕のミスだった」とフェネストラズ。
決勝では着実に追い上げて11位でフィニッシュ。ナトの5秒加算ペナルティでさらに順位を上げ、10位でポイント獲得を果たした。
「決勝は20番手からのスタートで、正直失うものはないという気持ちでいった。だけど、レース中のオーバーテイクはものすごく難しかった。そのなかでうまくマネジメントして順位を上げていけて、レースはポジティブなところが多かったと思う。今の僕にとって最も重要なことは、これを引きずらないようにリセットして、次に向かうこと。できれば、昨年のように予選のパフォーマンスを上げることができれば非常にポジティブになるだろう」と、早くも次のラウンドを見据えている雰囲気だった。
今回はグランドスタンドにニッサン応援席が設けられ、スーパーGTでお馴染みの日産応援団のメンバーが大旗を振って熱心に応援するなど、ホームレースを戦うチームを鼓舞していた。
これにはフェネストラズも力をもらえたようで「日産ファンの応援は素晴らしかった。たくさんの応援旗が振られて『GO! GO! NISSAN』の掛け声も気持ちよかった。日産のCEOや役員の方たちも来てくれて、本当に素晴らしい雰囲気の中でレースができて良かった。その中でオリバー(ローランド)はすごく良い結果を出してくれた。僕も後方グリッドからうまく追い上げることができてポイントを獲得できた。1ポイントだけだけど、何もないよりはマシだ。とにかく、次のミサノに集中したい」と語り、東京大会を後にした。
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