現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > じつは世界一タフなレース ポルシェ911GT3 Rの鈴鹿10時間耐久レース

ここから本文です

じつは世界一タフなレース ポルシェ911GT3 Rの鈴鹿10時間耐久レース

掲載 更新
じつは世界一タフなレース ポルシェ911GT3 Rの鈴鹿10時間耐久レース

鈴鹿10時間は『インターコンチネンタルGTチャレンジ(IGTC)』の一戦だ。参戦車両はFIA GT3である。耐久と言ってもル・マン24時間と違って「10時間じゃないか」と思う人もいるかもしれない。ところが、参戦したレーシングドライバーは口を揃えて「世界一タフなレース」という。ポルシェ911GT3を軸に、鈴鹿10時間の舞台裏を見てみよう。TEXT&PHOTO●世良耕太(SERA Kota)

「スーパーGTで24時間走ったほうが全然楽ですよ」と言ったのは、D’station Racingのポルシェ911 GT3 R(7号車)で『鈴鹿10時間耐久レース』に参戦した藤井誠暢である。10時間走るより24時間走ったほうが楽だと、同じ911 GT3 RでスーパーGTに参戦する藤井は、経験に基づいてそう言ったのだった。

『WRC招致応援団』がWRC日本復帰を強力サポート! 元TBS安東アナ「会社を辞めてフリーになって本当によかった!」

「おそらくスーパーGTのパッケージなら、鈴鹿10時間のパッケージより5秒速く走れます。スーパーGTの状態で10時間なら全然怖くありません。なぜなら、タイヤがグリップして何も起きないので、ずっとプッシュできるからです。でも、鈴鹿10時間の場合は相当気を遣ってタイヤをマネジメントしないと、走りきれません。猛烈に暑いことも含めて、世界一タフなレースだと思います」

 初の鈴鹿10時間は、8月26日日曜日に決勝レースが行われた。日中の最高気温は35℃を超え、陽が落ちてからもなかなか30℃を下回らなかった。路面温度は50℃を超えた。藤井のチームメイトで、鈴鹿10時間のために駆けつけた(2度のル・マン24時間ウイナーの)アール・バンバーは、「スズカは最高でおもしろいんだけど、自分のすべての経験に照らし合わせて、このオーバーステアは最悪」だと言った。

 タイヤがもたないのだ。それもポルシェに乗るドライバーに限らず、大多数のドライバーが同じ悩みを抱えていた。アウディR8 LMSをドライブしたあるドライバーは、自分のクルマの動きを後輪操舵のフォークリフトに例えた。リヤが落ち着かなくてどうしようもないという意味である。


 鈴鹿10時間は『インターコンチネンタルGTチャレンジ(IGTC)』の一戦として行われた。全4戦が予定されており、第1戦はバサースト12時間(オーストラリア)、第2戦はスパ24時間(ベルギー)、第3戦が鈴鹿10時間で、第4戦は10月28日のラグナセカ8時間(アメリカ)である。参戦車両はFIA GT3だ。

 鈴鹿10時間に関してはIGTCのレギュラー参戦組に加え、日本勢のスポット参戦が認められた。ポルシェのラインアップを例に挙げると、マンタイレーシングの911号車(ル・マンウィナーのロマン・デュマらワークスドライバーで固めている)と、クラフトバンブーレーシングの991号車、ブラックスワンレーシングの54号車がIGTCからの参戦組である。

 藤井がバンバーとスヴェン・ミューラーのワークスドライバーと組むD’station Racingの7号車はスポット参戦組で、D’station Racingからは、スーパー耐久に参戦する星野敏と近藤翼にジョノ・レスターを加えた77号車もスポット参戦した。エントリーした35台中14台がスポット参戦だった。


 タイヤはピレリのワンメイクだ。「これほど暑いコンディションで機能するよう開発されていない」とドライバーが説明するように、基本的には、全然もたない。「予選では2分2~3秒で走れます。でも、決勝では無理です。出せるけど、出しません。前半を速いペースで走ったせいで後半の10周が2分10~11秒になったら話になりませんから」と、藤井は状況を説明した。

 ルールの制約上、10時間のレースは1時間×10スティントで分割して走ることになる。新品タイヤは10セットあるが、タイヤの性能劣化具合を考えると、1時間もたせるのは至難のわざだ。セッションの後半でも2分5~6秒のペースで走れるよう、タイヤを労りながら走るのが鈴鹿10時間へのアプローチだ。「セッション終盤で5~6秒を目指しますが、実際のところ8秒に収まればいい」と藤井は厳しい予測を立てた。


 タイヤに神経を使わなければならないうえに、暑い。ドライバーは口をそろえて、「スズカは楽しいんだけど、暑くて厳しい」と言った。ポルシェ911 GT3 Rはエアコンを装備していない。ドライバーはクールスーツを着込んでクルマに乗り込むが、それでも暑い。

 マンタイレーシングのガレージを案内してもらったが、ピット裏にあるドライバーの控え室は、水揚げしたマグロを保管しておく冷凍庫のように冷やされていた。乗り込む前に体の芯まで冷やしておき、乗り終わった後に急速にクールダウンさせるためだ。「2019年モデルの911 GT3 Rはエアコンを装備します」とポルシェのPR担当者は説明した。


 マンタイ、クラフトバンブーのレギュラー参戦組の2台とスポット参戦組の2台をよく見ると、仕様が違う。マンタイの911号車とD’stationの7号車は2018年モデルで、クラフトバンブーの991号車とD’stationの 77号車は2017年モデルだ。2018年モデルはフロントバンパーコーナーにカナードが取り付けられているのが識別点である。

 リヤアクスルの後方にエンジンを搭載する911 GT3 Rの強みはトラクションだが、引き換えにフロントの入りが弱い面があった。傾向としてはアンダーステアである。それを解消するため、2018年モデルはフロントバンパーコーナー部にカナードを追加するなどして、フロントのダウンフォースを増やした。結果、前後のバランスが良くなって、フロントの入りが良くなったという。

 だがそれも、タイヤとの組み合わせ次第だ。スーパーGTで走る鈴鹿での正解が鈴鹿10時間でも正解であるとは限らず、2018年モデルか2017年モデルかでいえば、後者に分があったようだ。2018年モデルはダウンフォースを増やしている分ドラッグも大きく、鈴鹿サーキットでは2017年モデルに対し、最高速が4km/h劣ったという。

 2018年仕様のD’station7号車に関していえば、スプリングを柔らかくしたりライドハイトを変えたり、セッションごとにセットアップを変更したりして、レースに向けて最適なセットアップを探りにいった。速いクルマを目指すのではなく、安定したクルマを目指す作業だった。そのうえで、ジェントルに運転することが求められた。


 努力の甲斐もむなしく、藤井らがドライブしたD’station7号車はスタートから2時間半後、エンジントラブルでリタイアした。「クルマのバランスは非常に良かったので、悔やまれる」とリタイヤ時にステアリングを握っていたバンバーはコメントした。

 ポルシェ勢の最上位はクラフトバンブー991号車の11位で、マンタイの911号車が12位となった。優勝したのはMercedes-AMG Team GruppeM RacingのメルセデスAMG GT3(888号車)で、2位はMercedes-AMG Team Strakka RacingのメルセデスAMG GT3(43号車)、3位はAudi Sport Team Absolute RacingのアウディR8 LMS(6号車)だった。

【キャンペーン】マイカー・車検月の登録でガソリン・軽油7円/L引きクーポンが全員貰える!

こんな記事も読まれています

SUBARUサンバーを快走仕様!「ワイパーモーター不動からの復活」3
SUBARUサンバーを快走仕様!「ワイパーモーター不動からの復活」3
グーネット
レッドブルF1はノリス&ピアストリへの関心を明かすも、2026年まで契約のあるふたりは「短期的には選択肢にならない」
レッドブルF1はノリス&ピアストリへの関心を明かすも、2026年まで契約のあるふたりは「短期的には選択肢にならない」
AUTOSPORT web
小型2ドア車が復活 新型スマート・フォーツー開発始まる デザイン責任者「ブランドにとって重要」
小型2ドア車が復活 新型スマート・フォーツー開発始まる デザイン責任者「ブランドにとって重要」
AUTOCAR JAPAN
レース観戦初心者でも大丈夫! 今さら人には聞けない「SUPER GT」の観戦術とは? 10倍サーキットを楽しむ方法をお教えします
レース観戦初心者でも大丈夫! 今さら人には聞けない「SUPER GT」の観戦術とは? 10倍サーキットを楽しむ方法をお教えします
Auto Messe Web
【独ニュルへご招待】 アイオニック5Nファーストエディションの購入特典 5Nの導入時期も発表
【独ニュルへご招待】 アイオニック5Nファーストエディションの購入特典 5Nの導入時期も発表
AUTOCAR JAPAN
ランドローバー「ディスカバリースポーツ」2025年モデル発表 エントリーグレードを新導入
ランドローバー「ディスカバリースポーツ」2025年モデル発表 エントリーグレードを新導入
グーネット
大型トラックの確実な休憩で「黄色いペットボトル」問題も解決! 全国11カ所のSAで実施中の「短時間限定駐車マス」とは?
大型トラックの確実な休憩で「黄色いペットボトル」問題も解決! 全国11カ所のSAで実施中の「短時間限定駐車マス」とは?
WEB CARTOP
アルファロメオ ジュリア&ステルヴィオ 82台限定「ヴェローチェ スペリオーレ」発売
アルファロメオ ジュリア&ステルヴィオ 82台限定「ヴェローチェ スペリオーレ」発売
グーネット
ホンダF1、2026年導入の新PU開発は”計画通り”に進行中。まずは重要度高まる電気部分に注力
ホンダF1、2026年導入の新PU開発は”計画通り”に進行中。まずは重要度高まる電気部分に注力
motorsport.com 日本版
SUBARUサンバーを快走仕様!「ワイパーモーター不動からの復活」2
SUBARUサンバーを快走仕様!「ワイパーモーター不動からの復活」2
グーネット
2026年には45歳……アロンソのようなドライバーは二度と現れない? ノリス脱帽「僕はそのことをとても尊敬している」
2026年には45歳……アロンソのようなドライバーは二度と現れない? ノリス脱帽「僕はそのことをとても尊敬している」
motorsport.com 日本版
これは踏んでいいのか…? 道路でどんどん増える「ナゾの車線」4選 白や黄色だけじゃない!
これは踏んでいいのか…? 道路でどんどん増える「ナゾの車線」4選 白や黄色だけじゃない!
乗りものニュース
超カッコイイ! 斬新「“サテライト”スイッチ」って何!? どう使う!? もはや懐かしい“SF装備”なぜ流行ったのか
超カッコイイ! 斬新「“サテライト”スイッチ」って何!? どう使う!? もはや懐かしい“SF装備”なぜ流行ったのか
くるまのニュース
RBメキーズ代表、リカルドの復活を確信。改善傾向のパフォーマンス挙げ「具体的な進歩が見られたことは自信にも繋がるだろう」
RBメキーズ代表、リカルドの復活を確信。改善傾向のパフォーマンス挙げ「具体的な進歩が見られたことは自信にも繋がるだろう」
motorsport.com 日本版
走行距離の短さを重視する人が減少傾向! 若者ほど気にせず欲しい車を選ぶ!?【中古車購入実態調査】
走行距離の短さを重視する人が減少傾向! 若者ほど気にせず欲しい車を選ぶ!?【中古車購入実態調査】
カーセンサー
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
くるくら
ホンダの元祖「ジャイロX」は北の大地が鍛えたヘビーデューティなヤツだった
ホンダの元祖「ジャイロX」は北の大地が鍛えたヘビーデューティなヤツだった
バイクのニュース
優勝争いで再び激突したふたりの王者。勝負に備えたバニャイアとタイヤが限界を迎えたM.マルケス/第4戦スペインGP
優勝争いで再び激突したふたりの王者。勝負に備えたバニャイアとタイヤが限界を迎えたM.マルケス/第4戦スペインGP
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村