泥が似合うゴツめの見た目と全方位性能を目指したタイヤ
クルマの縁の下の力持ちの存在である「タイヤ」。どれも一見「黒くて丸い物」だが、そのタイヤに“付加価値”をプラスさせたのが、何を隠そうヨコハマなのだ。そんなヨコハマは中期経営計画「GD2020」では4つの戦略を掲げているが、今回紹介するのはその1つ「ホビータイヤ戦略」を担うSUV用タイヤ「ジオランダーX-AT」だ。ちなみにホビータイヤとはクルマ趣味に対応する商品ラインアップで、すでに「アドバンHFタイプD」、「GTスペシャルクラシック」などが発売されており、クルマ趣味人から高い評価・支持を得ている。
【意外と知らない】新品タイヤはナラシ走行をしないと寿命が短くなる!
では、SUV用タイヤで“クルマ趣味”に対応する商品とはどのような物なのか? 昨今、世界的にクロスオーバーSUVブームとなっているが、それに後押しされてオフロードタイプのSUVやピックアップの発売も順調に伸びている。ただ、実際に本格的なオフロード走行を行なうユーザーは少なく、どちらかと言うとルックスを重視した「オフロードカスタム」が主流となっている。
ヨコハマのSUV用タイヤは、快適性/オンロード性能を重視した「ジオランダ―A/T(オール・テレーン)」、見た目/オフロード性能を重視した「ジオランダ―M/T(マッド・テレーン)」がラインアップされているが、オフロードカスタムを求めるユーザーとしては、「見た目はM/T」だが「走りはA/T」と言ったモデルが求められていた。そんな声に応えたモデルが、ジオランダーX-ATなのだ。
今回、その実力を体感するために長野県軽井沢にある軽井沢スノーパーク周辺の一般道と浅間サーキット跡地のオフロードで試乗を行なってきた。
舗装路はまさかの静かさ! さらに泥濘地では驚きの走り……
ジオランダーX-ATの開発コンセプトは「オフロード性/ルックスと快適性の両立」、つまりA/TとM/Tの中間ポジションだ。まず“見た目”の部分だが、カスタマイズされたSUV/ピックアップ向けと言うことで、トレッド/サイドウォール共にワイルドなデザインだ。ちなみにサイドブロックは両側で異なるデザイン(大型ブロックタイプ/ラグタイプ)で、ユーザーの嗜好に合わせて選択できるのも嬉しいポイントだろう。
まずはオンロードでの試乗だ。見た目が見た目なので音/振動はかなり厳しいのかな……と思いきや、静粛性/快適性高さにビックリ。オンロード志向のタイヤと比べると若干「シャー」と言う高周波ノイズは残るが、大きなブロックを採用するタイヤでよく聞こえる「ゴー」と言った低周波ノイズは上手にカットされている。今回試乗したトヨタ・ランドクルーザープラドとの組み合わせでは、むしろ2.7リッターの直4エンジンのノイジーなサウンドのほうが気になったくらいだった。
また、軽井沢スノーパーク周辺の一般道は路面が悪いのだが、凹凸を綺麗に吸収してくれる上に段差を乗り越える際のアタリも柔らかいので、快適性もなかなかである。ハンドリングもブロックがグニャっとよれる気持ち悪い感覚はなく、「気持ち穏やかになったかな?」と言う程度だ。恐らくブロックは倒れ込んいると思うが、いきなりグニャっと来るのではなく、綺麗に倒れ込んでいるのだろう。
一方、オフロードでは見た目通りの性能を見せてくれた。浅間サーキット跡地はフラットダートと急坂/モーグルとバラエティに富んだコースだが、とにかくトラクションの良さが印象的だった。
じつは試乗の最中にゲリラ豪雨でコースが一瞬にして泥ねい地になってしまったが、そんなヌタヌタの緩い路面のなかでもガッチリと路面を掴んでいるのがわかる。じつは試乗前に急勾配は、トランスファーを4Lにするように言われていたが4Hでもまったく問題なかったほど。グリップに関しては無理は禁物ではあるが、セオリー通りのドライビングさえ心がければノーズはシッカリと行きたい方向に素直に向いてくれる。
試乗車の一台に5.7リッターV8エンジンを搭載するトヨタ・タンドラがあったが、試しにフラットダートを2H(=後輪駆動)で振り回して走らせてみようと思ったものの、グリップが高いので難しかった……。
結論、じつは試乗前は「あれもこれも……と欲張ると、各々の性能は中途半端になのかな?」と心配したのだが、実際に乗ってみると日本の使用環境の中ではオンロード/オフロードの性能をバランスよく両立させたタイヤであると感じた。そういう意味では、これまでオンロード主体だったSUV乗りの人にオフロードの楽しさの入口を切り開いてくれる架け橋のタイヤになってくれるだろう。
見た目はマッチョだが性能は繊細……個人的にはホビータイヤと言うより、「SUV用マルチパフォーマンスタイヤ」と呼びたい。
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