ドニントンパークのGPレイアウトで8月23~25日の週末に争われたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第8戦は、トヨタ陣営の“スピードスター”ジョシュ・クック(LKQユーロカーパーツ・ウィズ・シネティック/トヨタ・カローラGRスポーツ)が予選Quick Six(クイックシックス)のシュートアウトを制し、今季初ポールポジションを獲得。
しかしタイトル争いが佳境を迎えた決勝3ヒートでは、前人未到の“5冠”に挑むコリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)が今季5勝目を飾り、続くレース2では王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が意地の反撃で勝利を手にすると、雨絡みの最終ヒートでは僚友ダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が、待望の今季初優勝を果たしている。
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シーズン終盤戦に突入したレースウイークを前に、ヒョンデ陣営のブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8は2023年にチーム加入以降、今季序盤にBTCC初勝利を飾っていたローナン・ピアソンの即時離脱を発表し、そのレースシートにチーム配下の26歳ダン・ゼロスを起用するとアナウンスした。
「ローナン(・ピアソン)はチームメイトとして一緒にレースをし、友人としても大切に思っている人物なので、今シーズンの残りは彼がクルマに乗れないのが残念だ」と、まずは先輩の去就に思いを馳せた“BTCCサポートレース・マイスター”でもあるゼロス。
「だが個人的には、ドニントンパークでBTCCグリッドに加わるという思いがけない機会に恵まれ、とてもうれしく思っている。この週末はミニ・チャレンジ・トロフィーでエクセラー8のドライバーを指導する準備を整えていたが、突然NGTC規定のヒョンデを最大限に活用する方法を、他のドライバーから指導されることになった(笑)」と続けたゼロス。
「BTCCに出場することは、僕と家族がキャリアを通じて目指してきたことであり、たとえ今週末が1回限りのレースになったとしても、そこにたどり着いたと言えるだろうね」
こうして始まった週末はカミッシュが牽引するフォード陣営のワン・ツーで幕を開けると、続くFP2ではインディペンデント登録で気を吐くマイキー・ドーブル(エバンス・ハルショウ・パワー・マックス・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)が最速タイムを記録する。
■クックが今季初ポールもレースで伏兵
そのドーブルもポール争いに加わった予選では、シリーズを牽引する主役級のふたりが熾烈なバトルを繰り広げ、ここドニントンのGPサーキットで3年連続のポールポジション獲得を目指していたターキントンを、わずか0.071秒差で撃破したクックのカローラがトップの座を奪取。今季ここまでに2勝と複数の表彰台を獲得している前輪駆動巧者が、移籍後初のポールシッターとなった。
「クルマは本当に良かったし、思いどおりに操ることができた」とカローラの手応えに満足げなクック。
「なんとかうまくやれたが、クルマのなかは本当に忙しかったから、まだ息を整えているところだよ(笑)。いくつか変更を加え、それが適切な位置に到達して1周をまとめられた。それが重要だった。チームの努力には大きな功績があるし、明日はこれを大きな結果につなげる必要がある」
そう語ったクックだったが、迎えたレース1のスタートではフロントロウに並んだBMWが完璧なホイールコントロールを見せ、そのままチェッカーまで突き進む展開に。
オープニングラップの背後では最終コーナーでドーブルのヴォクスホールと接触した選手権首位のトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が遅れ、ダニエル・ロウボトム(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)がパンク。さらにシケインではアンドリュー・ワトソン(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)がタイヤバリアに激突し、ここでセーフティカー(SC)が投入される。
この直前にクックを攻略していた王者サットンが2番手でリスタートを決めると、対照的にイエロー&グレーのカローラはシケインで派手なスライドを演じ、タイトル候補のジェイク・ヒル(レーザー・ツールズ・レーシング・ウィズMBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)にも先行を許す展開に。
これでSC介入や終盤のチャンピオン猛追にも動じなかったターキントンが“3戦連続のレース1制覇”を飾り、サットン、ヒルの続く表彰台に。4位クック(最終的に週末全戦で4位を記録)の背後にはイングラムがカムバックを見せるトップ5となった。
続くレース2は選手権の覇権争いに新たな展開をもたらし、オープニングラップのオールドヘアピンでサットンが首位浮上に成功。首位発進のターキントンにイングラム、ヒルの追撃集団を従える。
ここで共通ハイブリッド機構の展開を強化したイングラムがBMWを仕留めて2番手へ。王者サットンを追い詰めるモードへ突入するも、エンジン温度の上昇に苦しんだヒョンデは冷却水漏れで敢えなくピットへ。そのままサットンはタイトル争いのライバルであるターキントンとヒルに決定的な勝利を収め、新たなポイントリーダーとなったヒルがリタイヤのイングラムに対しリードを広げる結果となった。
■最終レース3は最後尾発進のイングラムが猛然と追い上げ
迎えたリバースグリッド採用の最終レース3は、先頭グリッドを獲得したカミッシュが逃げを打つ一方、最後尾発進から猛烈なスパートを演じたイングラムが注目を集めることに。
グリッド19番手から急上昇するセンセーショナルなドライビングを披露した2022年王者は、最終的にフィールドの最前列へと突き進んでアーロン-テイラー・スミス(エバンス・ハルショウ・パワー・マックス・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)も仕留め、その前方で“ライト・トゥ・フラッグ”を決めたカミッシュの背後2位でチェッカーを受けた。
「大変だった。レース2以降、ふたたび上位に食い込むのは少々難しいだろうと思っていたんだ」と、この粘走でタイトル戦線に踏み留まったイングラム。「レース2と3の間に行われた作業はまさに驚異的だった。このようなレースこそ本当に大きな意味を持ち、感動的だよ」
一方で、この最終ヒートで接触劇を演じたサットンとターキントンは、ダメージの深かったフォードが複数回のピット作業で遅れ、レース中の雨量によるSC介入に助けられたBMWは7位にまで順位を戻してフィニッシュとなった。
「僕にとっては素晴らしい週末で、とても楽しかった」と続けた名門ウエスト・サリー・レーシングの“絶対エース”であるターキントン。
「レース1はグリッド2番手から勝利を収めたハイライトであることは明らかだし、レース2ではとくに最初のラップなど、難しいコンディションのなかでふたたび表彰台に立つことができた。しかし、僕のBMW 3シリーズはレースごとに改善を続け、レース3でこそ週末全体で最高の感触だったんだけどね……」
この週末で2度の3位表彰台と5位を記録したヒルが、イングラムに対し9ポイント差をしたBTCCの2024年シーズン。続く第9戦は9月20~22日の週末にシルバーストーンで争われ、明けた10月4~6日にはブランズハッチでのシーズン最終戦、タイトル天王山が待ち受ける。
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