フォード・コーセル(1968年)
ブラジル・フォードは、ウィリス・オーバーランドの現地事業を買収したことでコーセルの開発プロジェクトを継承した。1960年代、ウィリスは現地でルノー車を生産しており、ルノー12の技術を利用してコーセルを開発していたのだ。
【画像】欧州市場で愛された「アメ車」たち【欧州フォードによるカプリ/エスコートRSコスワース/フォーカスSTを写真で見る】 全35枚
フォードがコーセルの生みの親というわけではないが、発売後に改良を行い、1977年にはほぼ全面的にデザインを変更した。フォードの努力のおかげで20年近く生産が続けられ、最終的に1986年に販売終了となった。
フォード・カプリ(1969年)
欧州におけるマスタング的な存在で、「いつも自分に約束していたクルマ」という謳い文句を用いたカプリは、実際よりもエキサイティングな外観が特徴的だ。中身は基本的に第2世代のコルチナだが、流麗なクーペボディにより、それ以上のものに見えたのだ。
フォードは、1.3Lのケントから3.0LのエセックスV6まで、実にさまざまなエンジンを用意している。エセックス以上のパフォーマンスを求める南アフリカでは、ヨハネスブルグのバジル・グリーン・モーターズ社が開発した5.0LウィンザーV8を搭載するカプリ・ペラーナという選択肢もあった。
フォード・トリノ・タラデガ(1969年)
トリノ・タラデガはトリノの派生モデルで、1969年初頭にのみ生産された非常に短命なマッスルカーである。スポーツルーフのファストバックボディをベースとし、空力的に有利なリアエンドを備えているが、フォードは空気抵抗をさらに減らすために特別なノーズをあつらえた。
その目的はNASCARで競争力を持たせるためであり、予選通過に十分な台数しか作られなかった。トリノ・タラデガは、同時代の(そしてほぼ同一の)マーキュリー・サイクロン・スポイラーIIとともに、この目的のために設計された4台のエアロ・ウォリアーのうちの1台だ。その効果は絶大であったため、必然的に当局によって足を引っ張られ、完全に禁止された(モータースポーツではよくあること)。
フォード・エスコートRS1600(1970年)
RS1600が初代エスコートの究極形態であることに疑問の余地はない。英エセックス州のフォード・アドバンスト・ビークルズ・オペレーションで作られるコスワースBDAエンジンを搭載しており、このエンジンは1.6Lクロスフロー式ケントのボトムエンドに16Vツインオーバーヘッドカムを載せたものだ。
BDAは標準で120psを発生するが、秘めたる潜在能力は数字では語れない。RS1600はラリーでフォードの主力となったほか、サーキットでも抜群の成績を収めた。
フォード・グラナダ(1972年)
欧州における初代グラナダは1972年に登場し、2.5Lと3.0LのエセックスV6(後に、より強力なケルンV6に変更)など、普遍的なエンジンが用意された。2世代にわたって生産され、1981年には大規模なフェイスリフトを受け、2.8iギア・エグゼクティブが誕生した。
2.8iギア・エグゼクティブは上級管理職向けの社用車として人気を集め、一時期は企業の駐車場を支配していた。ドイツの高級車ブランドが席巻する前の時代、欧州のビジネスパーソンが憧れていたのがこのクルマだ。
フォード・カプリRS3100(1973年)
ここでは説明しきれないほど複雑な理由から、欧州フォードがツーリングカーレースで成功するためには、エンジン排気量が3.0Lを超える市販車を持つことが重要だった。5.0Lの「ペラーナ」を除くと、最もパワフルなエンジンはエセックスV6だが、排気量がわずかに及ばない。そこでボアをわずかに拡大し、排気量を3.1L弱まで引き上げた。
これにより、フォードはカプリのレース仕様に3.4LのコスワースGAエンジンを搭載できるようになった。公道走行可能なバージョンとしてRS3100がごく少数生産され、現在ではその希少性と性能から高く評価されている。
フォードF-150(1975年)
Fシリーズの始まりは先述の通り1948年に遡るが、F-150の名が初めて登場したのは1975年の第6世代である。当時のF-150はF-100に似ていたが、車両総重量が6000ポンド(2727kg)強とやや大きく、実用的だった。
重要なのは、触媒コンバーターを装備する必要がなく、また無鉛ガソリンを使用する必要もないということだ。このような要因が重なり、F-150は瞬く間にヒットモデルとなった。
フォード・エスコート(1975年)
初代エスコートはすべて英国フォードの作品であるが、第2世代はドイツ・フォードとの共同開発であった。両車にメカニズム的な違いはほとんどないが、後期型は外観が大きく異なり、後席の足元スペースが広く、窓も大きくなっている。
1976年、エスコートは英国でベストセラー車に輝いた。コルチナが第3世代から第4世代への移行期であったことも要因だが、それでも快挙と言える。初代と同様、RS2000やメキシコのようなスポーティなバージョンもあった。
フォード・エスコートRS1800(1975年)
RS1800はコスワースBDシリーズを搭載しており、標準仕様では1.8Lだが、最大2.0Lに拡大可能だった。もちろん、その意図はラリーでの活躍を支えることにある。案の定、1979年の世界ラリー選手権で初優勝したビョルン・ワルデガルド(1943-2014)は、同シーズンのほとんどの大会でRS1800をドライブした。アリ・バタネン(1952年生まれ)も、エスコート生産終了の2年後に同じことをやってのけた。
登場から半世紀近く経った今でも、RS1800は最もエキサイティングなラリーカーの1台として評価されている。多くの車両が現役であることからも、その人気の高さがうかがえる。
フォード・フィエスタ(1976年)
フィアット127やルノー5などがすでに活躍していた欧州Bセグメント市場に、フォードは後発で参入した。同社として初めて横置きエンジンの前輪駆動方式を採用し、スタイリングは素晴らしく、サイズの割に室内も広い。
エンジンはケントを改造した「バレンシア」と呼ばれるもので、当初は957ccと1117cc、その後1.3L、最終的にはXR2(写真)で1.6Lも導入された。フィエスタの功績の1つは、何世代もの若者が人生初のマイカーとして運転を覚え、ブルーオーバルのエンブレムに馴染むきっかけとなったことである。
フォード・レンジャー(1982年)
フォードが北米で初めて販売した小型ピックアップトラックは、第2世代のマツダBシリーズをベースとするクーリエ(1972年)である。マツダにとっては臨時収入となり、フォードにとっては新たな市場への参入となったが、フォードは独自の小型モデルを開発することにした。
こうして1982年に誕生した初代レンジャーは、現代のFシリーズにいくらか似ているが、はるかに小ぶりだ。シボレーS-10やその同系であるGMC S-15との厳しい競争をかい潜り、レンジャーは小型ピックアップトラックとして成功を収めた。丸10年間販売された後、外観は大きく異なるがメカニズム的には類似した新型にバトンタッチ。現在のレンジャーは、欧州フォードの主力トラックとして活躍している。
フォード・シエラ(1982年)
1980年代初頭、欧州の中型ファミリーカーが前輪駆動を採用する中、あえて後輪駆動を選択したシエラ。居住性などの面でライバルに劣るが、どちらかというと登場時にはスタイリングが受け入れられず、特に英国では「ゼリー型」と呼ばれ敬遠された。
しかし、騒ぎはすぐに収まり、シエラは瞬く間に欧州中の道路で見かけるようになった。例によってエンジンとボディの選択肢は非常に広く、ハッチバック、ステーションワゴン、3ボックスセダンがあるが、後者はサファイアと呼ばれている。四輪駆動バージョンもあった。
フォードRS200(1984年)
公道向けに数百台を生産してさえすれば、本命のラリーカーと似ている必要はない。ミドエンジンでファイバーグラス製ボディのRS200は、他のどの市販モデルとも似ておらず、競技用として一から設計された。
大きなポテンシャルを秘めていたことは間違いないが、世界ラリー選手権で使用されたのは1986年だけで、スウェーデンGPの3位が最高ランクだった。シーズン終了後にグループBのカテゴリーが廃止されたため、フォードのプロジェクトも中止となった。RS200はその後、ラリークロスやパイクスピーク・ヒルクライムで大成功を収めたが、果たして本望だったのだろうか。
フォード・シエラRSコスワース(1985年)
コスワース製ツインカム16Vシリンダーヘッドとターボチャージャーを備えた2.0Lエンジンを搭載したシエラの高性能モデルで、英国では親しみを込めて「コッシー」の愛称で呼ばれる。後に1987年に発表されたRS500(写真)と呼ばれる派生モデルは高度なチューニングが可能で、最終的には600psを超える出力が発生させた。
シエラRSコスワースは数年間、ツーリングカーレースで圧倒的な強さを誇った。グループBが廃止されたことでラリーにも使用され、一定の成績を収めたが、世界レベルでは四輪駆動のライバルに追いつくことはできなかった。
フォード・エクスプローラー(1990年)
ブロンコII同様、エクスプローラーも初代レンジャーをベースとしたSUVだが、ボディサイズはかなり大型で、3ドアだけでなく5ドアも用意されていた。
プッシュロッド式の4.0LケルンV6エンジンのみを搭載する初代エクスプローラーは、後輪駆動が標準だが、四輪駆動も選べた。1995年にモデルチェンジするまで、ほぼ毎年20万台以上が売れた。
フォード・モンデオ(1993年)
モンデオは、欧州向けの中型車として初めて前輪駆動を採用したモデルである。後輪駆動のシエラ登場からわずか11年後に発売されたモンデオだが、まったく別の時代のクルマのように感じられた。
フォードが欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのは、この30年で3台目。モンデオにはセダン、ハッチバック、ステーションワゴンの3種類があり、エンジンは1.6L 4気筒から2.5L V6まで用意された。後に北米市場向けに改良され、フォード・コントゥアとマーキュリー・ミスティークという名で販売された。
フォード・ギャラクシー(1995年)
それ以前のギャラクシーとはまったく関係のない(車名は同じ)新型ギャラクシーは、欧州基準では非常に大きなMPV(ミニバン)だった。フォルクスワーゲン・グループとの共同開発であり、シャランとは兄弟車の関係にある。ただ、この提携は1世代しか続かず、2006年に発売された第2世代ギャラクシーはフォードの独自製品である。
フォード・フォーカス(1998年)
エスコートは、1980年に前輪駆動が採用されて以来、あるべき性能に達していないと指摘されてきた。対照的に、1998年に登場した後継車フォーカスは、すぐに欧州市場で最高の中型車の1つと称賛された。「ニューエッジ」という新しいスタイリングはスマートでモダンな印象を与え、「コントロールブレード」と呼ばれるリアサスペンションは非常に優秀であった。
ハッチバック、ステーションワゴン、そして特に美しいとは言えないセダンが用意された。ガソリンエンジンは1.4Lから2.0Lまでと幅広い。初期の1.8L TDDiディーゼルエンジンは期待外れだったが、2001年にそれに代わって登場したTDCiは歓迎すべきものだった。
フォード・フォーカスRS(2001年)
世界ラリー選手権仕様の間にはほとんど接点がないが、フォーカスRSは優れたホットハッチとして名を馳せた。ただ、トルクステアによってわずかに評判を損ね、これはリミテッド・スリップ・ディファレンシャルが原因とされた。(実際はフロントサスペンションの設計に起因するもので、第2世代で改良された)。
ずっと後のフォーカスRSには四輪駆動が採用されたが、初代にはなかった。ジャーナリストがメディア向け発表会でその理由を尋ねると、10秒以内に2つの矛盾する答えが返ってきた。広報担当者は広報担当者らしく「必要ない」、開発担当者は開発担当者らしく「そんな余裕はなかった」と返答した。
フォードGT(2004年)
GT40の生産終了から35年後、フォードは創立100周年記念事業の一環として、GTと呼ばれる後継車を発表する。先代と同様、V8エンジンをミドマウントする2シーターであるが、新型は5.4Lのスーパーチャージャー仕様だ。ロードカーとしての販売メインで開発され、派生としてレース仕様が製作されるという手順は先代と逆だった。
GTはわずか2年間しか生産されなかった。2016年には、ツインターボの3.5L V6エコブーストを搭載する別のモデルがデビューした。
フォード・マスタング(2004年)
第5世代マスタングはレトロフューチャーなスタイリングを採用し、1960年代の初代モデルのキャラクターが与えられた。第5世代はまた、1979年以来のマッスルカーである。
V6エンジンも用意されていたが、最もメジャーなのはもちろんV8だ。2013年型シェルビーGT500では、スーパーチャージャー付き5.8L V8から最高出力662psを発生し、最高速度は320km/h以上と謳われた。
フォード・フィエスタ(2008年)
最終型エスコートとその後継の初代フォーカスのコントラストは非常に鮮明だったが、10年後に新型フィエスタが発表されたときも、先代との違いは大きかった。先代をはるかに凌ぐ出来栄えで、英国では瞬く間にベストセラー車となり、2009年から2017年の販売終了まで途切れることなく販売ランキングの上位に君臨した。シャシーは非常に優れていたため次世代にも引き継がれている。悲しいことに、2023年7月に生産終了となった。
フォード・レンジャー(2011年)
長い間、レンジャーの名は北米内外で販売される全く別のピックアップトラックに使用されてきた。2011年、グローバルモデルとして新型レンジャーが登場し、各市場での呼称が統一された。新型はオーストラリア・フォードによって開発され、洗練性や安全性など多くの分野で先代を凌駕している。欧州の自動車安全試験ユーロNCAPでは、トラックとしては史上初の最高評価5つ星を獲得した。
当初は米国とカナダでは販売されていなかったが、2019年モデルから両国で販売されるようになった。
フォード・フォーカスRS(2015年)
第3世代の(そしておそらく最後の)フォーカスRSは、初となる四輪駆動の採用により、ターボチャージャー付き2.3Lエコブーストが生み出す350psの出力に容易に対応している。また、パフォーマンス・パッケージの「マウンチューン(Mountune)」装着時には、最高出力を380psまで引き上げられる。
電子制御によってドリフト・モードとローンチ・コントロール機能を実装しており、走り好きのドライバーの心に訴えるハッチバックとなっている。
フォードFシリーズ・ライトニング(2022年)
2021年のモデルイヤーに登場した第14世代Fシリーズの最大の特徴は、歴代初の完全電動モデルであるF-150ライトニングの導入だ。世界各地で電動化が進む中、重要なマイルストーンとなるに違いない。
この最新世代のおかげで、Fシリーズは46年連続で米国ベストセラー・トラックとなり、また自動車としても41年連続でベストセラーとなった。厳密に言えば、ゼネラルモーターズが生産するライバルのフルサイズ・ピックアップトラックの方が若干人気があるが、シボレー・シルバラードとGMCシエラにブランドが分かれており、どちらも個々ではフォードを上回っていない。Fシリーズのサクセスストーリーはまだまだ続きそうだ。
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