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「最高のリメイク」は何代目か フォード・マスタング・ブリット 4世代を比較(2)

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「最高のリメイク」は何代目か フォード・マスタング・ブリット 4世代を比較(2)

1968年式の初代と印象が近い走り

4代目マスタングのブリッド仕様のため、フォードはアルミニウム製のインテーク・マニフォールドと、V型8気筒エンジンらしい轟音を奏でるエグゾースト・システムを開発。映画「ブリッド」のファンの期待へ応えた。

【画像】マスタング・ブリット オリジナルのレプリカとリメイク版3世代 最新7代目とEVのマッハE GTも 全105枚

ブレーキは、フロントにブレンボ社製を採用。サスペンションは引き締められ、車高も僅かに落とされた。

実際にステアリングホイールを握ってみると、チューニングを受けていても、走りはクラシカル。プラスティックの多いインテリアと相まって、1968年式の初代と印象は近い。シャシーには落ち着きが足りず、英国のテストコースが狭く感じられる。

サスペンション・スプリングは柔らかく、ボディロールが大きい。シフトレバーのストロークは長く、ゲートは少しオフセットしている。エンジンの振動が、車内へ伝わってくる。ステアリングホイールとクラッチペダルは重い。

活発に運転するには、気持ちを引き締め肉体を動かすことになる。それでも、エンジンのフィーリングが苦労へ報いる。アクセルレスポンスは極めて鋭く、1505kgと重くない4代目マスタングのボディを軽々と加速させる。サウンドも心地いい。

年式としては5代目に近いものの、生々しいシャシーと賑やかなエンジンが、明確な前世代感を生んでいる。1978年のフォード・フェアモントから採用の始まった、フォックス・プラットフォームをベースとするためだろう。

ブリッド仕様の理想的な素地

対して2008年に登場したマスタング・ブリッドは、明らかにモダン。見た目はレトロチックでも、フォードは、2005年にリリースした5代目マスタングの開発へ全力を尽くしていた。

ファストバックのシルエットとワイドなフロントグリル、テールライトなどは、1968年式のデザインが借用されている。温故知新で、ハンサムな新世代が生み出されていた。

ブリッド仕様を作るうえでも、理想的な素地が完成していた。映画公開から40周年という節目も重なった。

フォードが取ったレシピは、4代目マスタングとほぼ同じ。ハイランド・グリーンの塗装と、トルクスラストD風アルミホイールを採用。サスペンションは強化され、給排気系のチューニングによって、僅かにパワーアップも果たしていた。

フロントグリルはメッシュへ交換。クロームメッキのポニー・エンブレムは外された。

インテリアには、大幅に手が加えられた。ブラックのプラスティックで溢れていた内装は、アルミ製トリムでドレスアップ。エアコンの送風口やメーターリング、シフトノブなどが太陽光を反射し、特別な雰囲気を生み出していた。

シートはマスタング・シェルビー GT500に設定されていたスポーツタイプを、ブラック・レザーで仕立てたもの。サポート性が高く、座り心地は良い。

一層シリアスな改良が加えられた6代目

2008年式マスタング・ブリッドの走りは、5代目のそれとほぼ同じ。ロンドンの北西、バッキンガムシャーの幅の狭い一般道を、スポーティに操れる。ステアリングホイールやペダル、シフトレバーと格闘する必要はなく、運転の充足感を高めている。

リアはリジットアクスルのままで、荒れた路面では跳ねがちながら、コーナリングは4代目マスタングより遥かに落ち着いている。V8エンジンのレスポンスやサウンドはマイルドに調整されているものの、現代のモデルでは鑑賞しにくい吸気音が響く。

最高出力は319ps。マッスルカーとしては控えめかもしれないが、公道ではまったく不足ない。迂闊に踏み込むと、一瞬でリアタイヤが暴れはじめる。

対して、6代目マスタングのブリッドには、一層シリアスな改良が加えられている。映画の公開50周年を記念し、2018年に販売がスタート。モデルイヤーとしては、2019年式となる。

内容は変わらず。ボディはグリーンで、フロントグリルはメッシュ。リアにブリッドのエンブレムが与えられ、ホイールは太い5スポーク。専用サスペンションが組まれ、V8エンジンは僅かに増強され、サウンドが磨かれた。インテリアの変更も小さくない。

この6代目のブリッドは欧州にも輸入され、GTパフォーマンス・パッケージに準じる内容が選べることで、注目度は高かった。エンジンの排気量は5038cc。英国仕様の最高出力は459psで、初代マスタング GT390 ファストバックから50%も増強している。

5代目以前と異なる次元の動力性能

実際の走りも、確実に高性能。コーナーではボディロールが抑制され、現代的なスポーツカーらしい。フロントには6ポッドのブレンボ社製ブレーキが組まれ、ペダルへ力を込めると息が苦しくなる勢いで速度を殺す。

テールは落ち着きを増し、路面をしっかり掴む。乾燥した路面でのホイールスピンは、低い速度に限られる。

動力性能は5代目以前と異なる次元にあり、最新のスタントドライバーを雇えば、壮大なカーチェイスを披露するに違いない。現代にスティーブ・マックィーン氏が生きていても、満足するシーンを収められるだろう。

初代を除き、ベースのマスタングから最も大きな違いが与えられていたのは、2001年式かもしれない。それぞれの世代に、それぞれの強みがある。だが、映画の精神のリメイクに最も成功していたのは、2008年のブリッドだと筆者は思う。

フラットで引き締まったボディラインには、2001年式や2019年式とは異なる、オリジナルとの結びつきが表現されている。グレートブリテン島のぐずついた天気の市街地でも、派手なドリフトで敵を追い詰めたくなるような、固有の個性が備わっている。

協力:チャーリー・アクイリナ氏、デビッド・レッドヘッド氏、アンドリュー・スペンサー氏、アラン・デイビス氏、ウィコム・ワンダラーズFC

4台のマスタング・ブリッドのスペック

フォード・マスタング・ブリット(6代目/2018~2020年/英国仕様)

英国価格:4万7545ポンド(新車時)/5万ポンド(約925万円)以下(現在)
生産数:8200台
全長:4789mm
全幅:1916mm
全高:1382mm
最高速度:249km/h
0-97km/h加速:4.6秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1743kg
パワートレイン:V型8気筒5038cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:459ps/7000rpm
最大トルク:53.5kg-m/4500rpm
トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)

フォード・マスタング・ブリット(5代目/2007~2008年/欧州仕様)

英国価格:3万1075ポンド(新車時)/3万ポンド(約555万円)以下(現在)
生産数:5808台
全長:4775mm
全幅:1877mm
全高:1405mm
最高速度:244km/h
0-97km/h加速:5.0秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1530kg
パワートレイン:V型8気筒4601cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:319ps/6000rpm
最大トルク:44.8kg-m/4250rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

フォード・マスタング・ブリット(4代目/2001~2002年/欧州仕様)

英国価格:2万6830ポンド(新車時)/2万ポンド(約370万円)以下(現在)
生産数:5582台
全長:4610mm
全幅:1856mm
全高:1329mm
最高速度:244km/h
0-97km/h加速:5.8秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1505kg
パワートレイン:V型8気筒4601cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:268ps/5000rpm
最大トルク:42.9kg-m/4000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

フォード・マスタング GT390 ファストバック(初代/1967~1969年/欧州仕様)

英国価格:3500ポンド(新車時)/8万ポンド(約1480万円)以下(現在)
生産数:1万8838台(1968年式 マスタングGT合計)
全長:4663mm
全幅:1801mm
全高:1311mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:6.2秒
燃費:5.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1515kg
パワートレイン:V型8気筒6384cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/4800rpm
最大トルク:58.9kg-m/3200rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

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みんなのコメント

2件
  • cou********
    またグリーンの写真を使ってる。
    ここのところ自動車記事の使用写真、グリーンが多くないか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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