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【フィアット 500e】電気自動車の実力を実車でテスト!

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【フィアット 500e】電気自動車の実力を実車でテスト!

新車試乗レポート [2023.06.08 UP]


【フィアット 500e】電気自動車の実力を実車でテスト!
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

【日産 アリア B9 e-4ORCE】電気自動車の実力を実車でテスト!

 欧州や中国ではクルマを取り巻く環境や政策などが追い風となり、近年、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか見分けるのが難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回フォーカスするモデルはフィアット「500e」。キュートなコンパクトEVは、果たしてどんな実力の持ち主なのだろうか?

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フィアット 500eのプロフィール

フィアット 500e OPEN
 2020年3月、新世代のフィアット「500(チンクエチェント)」、その名も「500e(チンクエチェント・イー)」が欧州で発表された。新型はすべてのグレードが完全なるEVとなり、エンジン車の設定はない。エンジン車を求めるユーザーに対しては、従来モデルの「500」を併売する形で対応している。

 2021年6月になると、フィアットは2030年までにすべてのラインナップを電動車のみにすると発表。バッテリーのコスト低下を推進し、エンジン車と同等の価格で買えるEVを、できるだけ早いタイミングで市場に投入するとアナウンスしている。

 併せてフィアットは、集合住宅など都市部における充電スポットの拡充や急速充電ステーションの普及にも尽力すると発表済み。日本でも、フィアットの販売店やステランティス ジャパンが展開する他ブランドの拠点を合わせた340カ所に急速充電器を配置するなど、車両だけでなくインフラの開発においてもライバルに負けないプランを打ち出している。

 全長3630mm、全長1685mm、全高1530mmという500eのボディサイズは、併売されるエンジン版の500と比べて60mm長く、60mmワイドで、15mm背が高い。20mm伸びて2320mmとなったホイールベースと併せ、ひと回り大きなクルマへと成長している。

 それでも500eは、どこから見ても“新しい500”にしか見えない。従来モデルのイメージを踏襲したキュートでオリジナリティあふれるエクステリアが印象的だ。

 またインテリアも、上級グレードではイタリアの伝統工芸手法である“イントレチャート”をイメージしたパネルをダッシュボードに張り巡らすなど、“小さな高級車”と評価できるほど上質な仕立て。大人が乗っても似合うコンパクトEVに仕上がっている。

 加えて、500eは現在、日本で発売されているEVで唯一となるカブリオレ仕様を設定するなど、EVである前にクルマとしての楽しさ、所有する歓びを提案している点にも注目だ。

 気になるEVとしてのパッケージングは、42kWhのリチウムイオンバッテリーをフロア下にレイアウトし、最高出力87kW(118ps)、最大トルク220Nmを発生するモーターで前輪を駆動する。航続可能距離はWLTCモードで最長335km。日本のCHAdeMO規格に対応したアダプターを介すことで、急速充電にも対応する。

 そんな500eで押さえておきたいのが販売方法である。インポーターであるステランティスジャパンでは、現状、残価の低下が著しいEVであることを考慮し、5年間のリース販売のみを設定。サブスク型プランも用意するなど、販売方法においても新たなチャレンジを行っている。

■グレード構成&価格・「500e POP」(473万円)・「500e ICON」(522万円)・「500e OPEN」(536万円)■電費データ「500e OPEN」◎交流電力量消費率・WLTCモード:128Wh/km >>>市街地モード:非公開 >>>郊外モード:非公開 >>>高速道路モード:非公開◎一充電走行距離・WLTCモード:335km
フィアット 500e OPEN

【高速道路】ボディの軽さを活かして良好な電費を記録した
 コンパクトで愛らしいフィアット500eは、シティコミューター的なモデルであり、バッテリー容量42kWh、一充電走行距離335kmと高速道路のロングドライブはあまり得意とは言えないが、それでも車両重量が1360kgと軽いので電費自体は良好だ。

 制限速度100km/h区間のその1が7.0km/kWh、その4が7.2km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が8.7km/kWh、その3が8.1km/kWhだった。

 ちなみに車両重量1510kgのホンダeはその1が5.6km/kWh、その4が6.7km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が6.8km/kWh、その3が7.3km/kWh。

 WLTCモード電費はフィアット500eが7.8km/kWh、ホンダeが7.6km/kWh。

 EVテストの電費ではフィアット500eがだいぶ上回っている。ただし、ホンダeのときは12月で気温が低く、集中工事の影響で交通状況も不利だったので、実力差としてはそこまで開いていないはずだ。

 車両重量1080kgの日産サクラは制限速度100km/h区間のその1が8.3km/kWh、その4が8.6km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が7.5km/kWh、その3が7.7km/kWhでさすがに良好だが、フィアット500eもかなり優秀な部類と言えるだろう。


往路の高速テストコース

往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った

【ワインディング】軽量クラスにふさわしい電費データを記録
 他にはあまりない高低差がある箱根ターンパイクでは、往路の登り区間ではどのモデルも電費が悪く、復路の下り区間では回生によって電力を取り戻せる。フィアット500eの登り区間電費は2.4km/kWh。ちなみにホンダeは2.1km/kWh、日産サクラは2.5km/kWhで、車両重量に応じた電費とみることができる。2.0km/kWhを超えるのは稀で、いずれもBセグメント以下の軽量モデルだ。

 下りでは車載電費計からの推測で2.6kWh分の電力を取り戻した計算になる。ホンダeは1.91kWh、日産サクラは1.22kWhだったので、軽量モデル部門では最良。全体的には重いモデルのほうが回生量は多く、2.5t級ならば4kWhを超えるデータもある。車両重量とモーターの効率が回生量に影響するようだ。


自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

【一般道】交通状況や天候の影響か若干物足りないデータに
 一般道での電費は6.0km/kWhで、ホンダeの7.4km/kWh、日産サクラの7.2km/kWhに比べると物足りなかった。

 ただし、同日テストの日産アリアB9(4WD)も、WLTCモードや高速道路との相対比較からすると一般道での電費が悪かったので、今回のテスト時の交通状況や気温がかなり不利だったと考察できる。過去のデータ等から推測するに、条件が悪くなければWLTCモードの7.8km/kWh前後が出てもおかしくはないはずだ。

 いずれにせよ、軽量コンパクトなフィアット500eは一般道でのモビリティとしては優れている。一充電走行距離が長くなくても、一般道ならば何ら問題はないはずだ。


東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約29kmの距離を走行した

【充電】充電効率は優秀。航続距離も実用的で高速走行にも対応する

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
 スタート時のバッテリー残量96%、走行可能距離249km。そこから158km走行した復路・海老名サービスエリアに到着したときにはバッテリー残量36%、走行可能距離83kmになっていたが、出力40kWの急速充電器を30分使用して15.9Whが充電され、バッテリー残量79%、走行可能距離189kmに回復した。

 出力は充電開始直後から終了までほぼ安定していて平均が31.8kW。同じ出力40kWの急速充電器を使用しても、平均出力が35kWを超える場合もあるが、バッテリー容量が小さなモデルはそこまではいかない。日産サクラは平均出力23kW、バッテリー容量50kWhのプジョーe-208は32kWであったことを考えればフィアット500eの31.8kWは妥当であり、小容量バッテリーモデルとしては優秀でもある。

 また、約200kmの距離を走行するEVテストでは一度の急速充電で十分だったのも良かった。ホンダeや日産サクラなどは複数回の急速充電が必要で、なおかつバッテリー残量が10%程度になることもあるなどヒヤヒヤ&煩わしさがあったが、フィアット500eならばそんなことはない。シティコミューター的とはいえ、高速道路走行でも必要十分なスペックなのだ。


大人が長時間座るには狭いが、シートの仕立てもよく見晴らしもいい

フィアット 500eはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
 

 デザインに一目惚れして買う類いのモデルではあるが、EVとしての使い勝手も悪くないことが今回のテストで証明された。

 軽量コンパクトゆえに電費がいいというのが、その要因だが、バッテリー容量とのバランスもいいのだ。また、走らせていても何だかウキウキとするのが不思議。エンジン車のフィアット500と同じような、活発な雰囲気があり、多少は上下動やピッチングがあっても不快に感じず、むしろ走りのキャラクターとして好意的に受け止められるのだ。

 エンジン車の場合は、運転するのに多少のコツや慣れが必要になることもあるが、EVならばトルクが十分でレスポンスもいいので、この上なく扱いやすい。一目惚れして飛びついても後悔することはないだろう。

500e OPEN■全長×全幅×全高:3630×1685×1530mm■ホイールベース:2320mm■車両重量:1360kg■バッテリー総電力量:42kWh■モーター定格出力:43.0kW■モーター最高出力:87kW(118ps)/4000rpm■モーター最大トルク:220Nm(22.4kgm)/2000rpm■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム■ブレーキ前/後:ディスク/ドラム■タイヤ前後:205/45R17取材車オプションボディカラー<ミネラルグレー(メタリック)>

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みんなのコメント

1件
  • EURO NCAPのスコアが低いこの車、いつまでモデルチェンジせずに売るつもりなの?

    軽自動車以下だぜ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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