3月17~19日にアメリカ・カリフォルニア州グレンヘレン・レースウェイでの“トリプルヘッダー”戦で雌雄を決した2022-2023年NitroRXナイトロ・ラリークロス最終戦は、日曜の最終ヒートを逆転勝利で締め括ったポイントリーダーの開幕覇者、ロビン・ラーソン(ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク/DRR JC)が初タイトルを獲得。シリーズの亡き盟友に敬意を表し、新たに“ケン・ブロック・チャンピオンシップ・トロフィー”と名付けられたチャンピオンの栄冠を手にした。
創設2年目で本格的なグローバル選手権への脱皮を目指したNitroRXは、2022年より年跨ぎでチャンピオンシップを開催し、2023年に入った1月21~22日にケベック州で第7戦を、続く2月4~5日にカルガリーでの第8戦と、雪と氷のカナダ連戦を実施した。
NitroRX最終戦にティモ・シャイダーが緊急参戦。クリス・ミークの代役でFC1-Xをドライブ
しかしカルガリーではレースウイーク直前に現地を襲った“チヌーク風”によりトラックの氷の量が減少。土壇場でフォーマットを変更する波乱に見舞われ、改訂版のイベントは「ノンチャンピオンシップ戦」として催された。これによりシリーズ主催者は「タイトル決定に向け開催ラウンド数を極力予定どおりに近づける」べく、このL.A.での最終戦を急遽の“トリプルヘッダー”とする判断を下した。
さらにシリーズは、このグレンヘレンでのフィナーレに併せて最高峰クラス『グループE』のチャンピオンに対し、シリーズ黎明期やその前身たるGRCグローバルラリークロス、ARXアメリカズ・ラリークロスでも活躍を演じた、故ケン・ブロックの名を冠したチャンピオントロフィーを授与することも発表した。
「シリーズがケンのために、こうして“ケン・ブロック・チャンピオンシップ・トロフィー”の栄誉を授けてくれたことは、本当に驚くべきことです」と語った妻のリア・ブロック。そのリアも、同じ週末にはミズーリ州で開催された国内ラリー選手権『ラリー・イン・ザ100エーカー・ウッド』に、愛娘のリアとともに参戦した。
「ケンはラリークロスでの競争が大好きだっただけでなく、ラリークロスの熱烈なサポーターでもありました。パドックの多くのドライバーと友人で、今週末のフィナーレで彼らが戦うのを見たかったでしょうね」と、この年明け1月2日にスノーモービルで不慮の事故に遭遇した亡き夫に思いを馳せる。
そのNitroRX初代王者であり、ブロック・ファミリーの親しい友人でもあるトラビス・パストラーナ(バーモント・スポーツカー)も「ケンは素晴らしい友人であり、彼の家族を知ることができて光栄だった」と思いを寄せた。
「ケンがラリークロスとモータースポーツ全体に与えた影響は、どれだけ多くを語り尽くしても決して誇張にはならない。彼の信じられないほどのドライブに加えて、彼はレースを戦い、僕を含む非常に多くの人々に進歩を促し、夢を実現する機会を与えてくれたんだ」と、このNitroRX創設にも奔走したアクションスポーツ界の第一人者。
「彼はアメリカでのラリーとこのシリーズの構築にも尽力した。彼のジムカーナ・シリーズは、実際にステアリングを握る楽しさと興奮にさらなる感嘆符(!)を付け加えた。この賞は彼のスポーツへの貢献と遺産を称えるものでもあるんだ」
■日曜フィナーレはDRR JCが表彰台独占。ラーソンが王者に
こうして始まった今週末の決勝に先立ち、まったく新しいトリプルヘッダー形式に対応するため1対1のバトルブラケットはスキップされ、複数台で争うマルチカーヒートが直接開始されるスケジュールに。
その初日はタイトルを争う強豪ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク(DRR JC)のチーム内で明暗が分かれ、初参戦ゲストのティモ・シャイダー(エキサイト・エナジー・レーシング)と同じくセミファイナルを制していたラーソンにとっては厳しい展開に。
決勝のジャンプでDTMドイツ・ツーリングカー選手権2冠の男とオリバー・エリクソン(オルスバーグMSE AB)らを交えたスリーワイドに巻き込まれたラーソンは、その着地で割を喰ってダメージを負い、タイトル最有力候補にとっては手痛いリタイアを喫してしまう。
一方、早い段階でリードを奪い合ったアンドレアス・バッケルド(DRR JC)とパストラーナは、こちらも後者がジャンプの着地でパンクを喫して決着。フレイザー・マッコーネル(DRR JC)も最終周までジョーカーラップを引っ張ったシャイダーを逆転して2位に入り、惜しくもポジションを失ったドイツ人ドライバーは、それでも初参戦ながら表彰台を獲得する結果となった。
続いて第9戦とされた週末セカンドヒートは、オリバーを打ち負かしたパストラーナが今季3勝目をマークし、タイトル防衛に向け食い下がる。しかしオリバーの僚友で兄のケビン・エリクソン(オルスバーグMSE AB)を2位に挟み、バッケルドとラーソンが3位、4位に入り、結果ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニークが日曜を残してチームのチャンピオンシップ獲得を決めた。
一方のドライバーズでは年間最低ラウンド切り捨ての効果もあり、ラーソンがバッケルドに対し17点差でランク首位を守り、この日は予選敗退を喫した3位マッコーネルと、勝利を挙げた4位パストラーナにまでチャンピオンの権利が残されることに。
迎えた日曜、正真正銘のシーズンフィナーレとなった第10戦は、濡れた路面の2列目から発進した選手権首位ラーソンが、抜群の蹴り出しで2番手浮上に成功。先頭を行くケビンの背後でも戴冠となる計算だったものの、名門オルスバーグMSE ABの『FC1-X』はギヤボックスに異変を来たし、あえなく道を譲ることに。
これで快適なリードを築いたラーソンは、僚友マッコーネルとバッケルドを従えてフィニッシュ。最終的にDRR JCは表彰台独占でシーズンを終えるとともに、ラーソンはシリーズ創設者兼初代王者パストラーナからチャンピオンの称号を引き継ぎ、新たな“ケン・ブロック・チャンピオンシップ・トロフィー”を手にしている。
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