9月4日に開催された2022年MotoGP第14戦サンマリノGPの決勝レースをもって、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(WithUヤマハRNF・MotoGPチーム)がレースキャリアを終えた。ロードレース世界選手権にフル参戦を開始した2002年から約21年にわたって戦い続け、36歳のベテランライダーは母国イタリアを引退の地に選んだ。
今年のサンマリノGPを語る前に、2020年にさかのぼりたい。2020年シーズン終了後に8年間所属したドゥカティのファクトリーチームを去ったドヴィツィオーゾは、2021年に“長い休暇”をとることを決めた。このシーズンは多くのライダーの契約更新の年であり、8月にドゥカティと袂を分かつことが明らかになったとき、シートの選択肢はほぼ残されていなかったのだ。不本意な形で走ることができなくなったドヴィツィオーゾは、1年間MotoGPを離れ、2022年シーズンのシート獲得の可能性を模索することを選んだ。
【レースフォーカス】スマートに、コンスタントに。己に集中し勝利をつかんだバニャイア/MotoGP第14戦サンマリノGP
翌2021年にはアプリリアのMotoGPマシンRS-GPのテストを経て、サンマリノGPからはヤマハのサテライトチームでMotoGPに復帰を果たした。とはいえ、約半年の戦線離脱と9年ぶりのヤマハYZR-M1への適応はそううまくはいかず、苦戦が続いた。ドヴィツィオーゾは2022年8月上旬、シーズン途中のサンマリノGPで引退することを発表したのだった。
サンマリノGPを12位で終えたドヴィツィオーゾは「レースはいつも通りだった。速くなかったし、バイクを止められなかった。前の集団についていけなかったよ。でもレース中盤から最終ラップまで、自分のペースより速く走ることができた。後ろのライダーとちょっとバトルができた。ポジティブにポジションをキープできたんだ。確かに多くのライダーがクラッシュしたけど、12位はいいポジションだ。トップ10に入りたかったけどね。でもまあ、この週末と、こういう終わり方はハッピーに思うよ」と冷静にレースを振り返る。
土曜日には「僕は合理的な人間だから普通は泣かないんだけど、でも……」と最後のレースを迎える心境を語っていたが、日曜日のレース後には「こんな風にみんなが応援してくれるとは全然思っていなかったんだ。昨日の夜は、ビデオとかで泣いてしまったよ」と明かしていた。
「チームが僕の友人たちとしてくれたことがあって、それからほかのライダーからのビデオがあったりして、すごく感動的だった。すごくうれしいよ。これ以上ないくらいだ。ここで引退するという決断は正しかった。ヤマハ、スポンサー、チームに感謝したいよ。みんなにありがとうと言いたいね。ありがとう、って」
そしてドヴィツィオーゾは「それからメディアにもね」と笑った。そこで取り囲んだジャーナリストからも和やかな笑いが起きた。付け加えられたそれは、ドヴィツィオーゾらしいコメントだっただろう。
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