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ホッケンハイムのリベンジを果たした日本勢のアプローチ。富士で掴んだタイヤ特性とDTM車両との違い

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ホッケンハイムのリベンジを果たした日本勢のアプローチ。富士で掴んだタイヤ特性とDTM車両との違い

 実質、最後尾争いに終始してしまったDTM最終戦ホッケンハイムに参戦したスーパーGT車両。しかし、今回の富士での交流戦ではレース1ではスーパーGT車両が表彰台を独占し、DTM勢はアウディ・スポーツジャパンRS5 DTMのブノワ・トレルイエの6位が最高位という結果になった。ホッケンハイムと今回の富士で、日本勢はどのように巻き返したのか。

「ホッケンハイムでのデータを元に、普段の富士で走っているセットアップと合わせて今回持ち込ました。(木曜日の)ドライコンディションの時点でセットアップは比較的悪くはないなと思っていて、(金曜日の)ウエットではもう少しダウンフォースが合った方がいいとか、もう少し(足回りのセットアップが)軟らかい方がいいという話にはなりましたけど、(土曜日のセミウエットの)今日は大きく代わっているわけではないですね」と話すのは、ポール・トゥ・ウインを果たしたKeePer TOM'S LC500の小枝正樹エンジニアの予選後の言葉。

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 ホッケンハイムではセットアップの基準すらわからない状況だっただけに、少なくともKeePerはベースのセットで戸惑うことなく、今回の富士に合わせ込むことができたようだ。

 一方、同じくホッケンハイムでデータを得ながら、木、金と不発に終わってしまったのがRAYBRIG NSX-GT。金曜午後の雨のセッションでは20番手に終わり、「何が問題なのかもわからない」と山本尚貴が話すように、お手上げの状況だった。

 だが、土曜のダンプコンディションでは山本が3番手タイムを叩き出し、レースでも3位フィニッシュと、望外とも言える表彰台を獲得するに至った。木・金の大不振から土曜の躍進の間に何が起きたのか。RAYBRIGの伊与木仁エンジニアに聞く。

「ある意味、昨日(金曜)までのセットアップをかなぐり捨てました」と、伊与木エンジニア。

「僕がホッケンハイムで感じた経験の延長で今回の富士のセットアップを持ってきたんんですけど、ここではまったく違った。日本で走っていた状況よりも完全に(サスペンションのセットアップを)軟らかくしなければ走れないというのがあったんですけど、(金曜の)ドライではそれが通用しなかった。(山本)尚貴もホッケンハイムで走ったわけではなくて経験がなかったから、どうしていいかわからない。昨日の夜、いろいろ考えて一か八かというわけではないけど、こっちじゃないかという別の方向で進めたらうまく走れるようになりました」と伊与木エンジニア。

 そのセットアップの方向は、「硬いのと軟らかいのの中間。ドイツと日本の中間」とヒントを話す伊与木エンジニア。前出の小枝エンジニアと共通している部分が感じられる。

 一方、木曜のドライ、そして金曜のウエット、それぞれのセッションでトップタイムをマークするなど一躍、今回の優勝候補に名乗りを上げたModulo Epson NSX-GTの牧野任祐だったが、土曜の予選では20番手、決勝ではタイヤトラブルに見舞われる不運もあったが同じく20位でレースを終えることになってしまった。レース後の牧野が振り返る。

「朝のウエットに関しては、前日のウエットが調子良すぎて、セミウエットの予選の時の内圧が高すぎました。後から聞いたら、僕の冷感が他の人の温感くらいでした。足も軟らかすぎで走れませんでした」と牧野。

 木、金のタイムとポジションが良すぎたために、コンディションが変わった土曜日のダンプコンディションに向けては新しいセットアップを試しずらい状況になってしまい、それが裏目に出てしまった。

 その土曜日の予選では、ウエットタイヤでの一発タイムの出し方にも、ノウハウが見られた。ポールを獲得したキャシディは10周した3周目のタイムがベストタイムで、2番手のアウディRS5 DTMのロイック・デュバルも11周のうちの3周目、3番手の山本尚貴は10周のうちの9周目にベストタイムをマークしているが、これはタイヤを履き替えてすぐに出したタイム。つまり、今回のダンプコンディションでのハンコックのウエットタイヤは、温まりがとても早く、同様に内圧の上がり方も早い。その傾向を把握していなければ、適切なタイミングで予選タイムが残せなかったのだ。

■ホッケンハイムと富士スピードウェイの路面μの差が日本勢を後押し。ストレートはスーパーGT500に歩があり
 この特性にハマってしまったのが、今年のGT500チャンピオンで土曜日を担当したWAKO'S 4CR LC500の山下健太。山下は予選セッションの最後のアタックに向けてウエットタイヤのウォームアップに数周を費やしてしまった。いざ、最後にアタックをするときにはすでに内圧が上がりすぎて、グリップのおいしいところを逃した状況になってしまっていたのだ。「早めにアタックに行くのが正解でしたね」と山下も悔しがる。

 その予選では、優勝候補の1台、アウディ・スポーツRS5 DTMの今年の王者、レネ・ラストがダンロップコーナーのブレーキングで飛び出すミスで14番手グリッドになり、さらには2番手グリッドスタートだったデュバルがグリッドに着くレコノサンスラップの途中、ダンロップコーナー手前でタイヤのウォームアップにマシンを左右に大きく振っている最中、コントロールを失い、アウト側のバリアにクラッシュ。「完全に僕のミス」とデュバルはグリッドに着くことなく戦列を去ることになった。

 有力DTM勢が軒並み自滅する形で決勝スタート前に姿を消したことも、日本勢にとってはラッキーだったが、見ているファンにとって残念極まりないシーンでもあった。

 決勝では、DTM勢はストレートスピードが厳しく「レクサスLC500とホンダNSXのストレートが速く、ニッサンGT-RとDTMは同じくらい遅かった」と複数人のドライバーが証言している。BMW M4 DTMで参戦している小林可夢偉も「エンジンパワーはスーパーGTの方がある」と話していることからも、同じ4気筒2リッターターボのエンジンながら、プレチャンバー(副燃焼室)燃焼技術を導入している日本勢に歩がある状況のようだ。

 決勝のロングランでもハンコックタイヤのデグラデーションについては多くのドライバーが「ワンメイクタイヤとしては十分に機能を果たしている」と話しているように、コンマ2~3秒づつタレていくようで、タイヤの特性についても山本尚貴などはピックアップ(タイヤかすがとれずに自分のタイヤの表面にくっついてグリップダウンを)に見回れたがが、多くのドライバーが「パフォーマンスが尖ったスーパーGTのタイヤよりも扱いやすい」と好意的なコメントが見られた。

 ホッケンハイムのミュー(摩擦係数)が低い、滑るような路面に比べ、富士スピードウェイのアスファルトは粒も大きくミューが高いため、フルウエット以外はタイヤのウォームアップに苦しむことはなくグリップを発動させることができた。内圧設定のシビアさに対応できれば、タイヤに関しては地の利がレース1の日本勢の躍進を支えたと言える。

 木曜のドライ、金曜のフルウエット、そして土曜のダンプ、セミウエットとさまざまな路面コンディションを経て、日本勢はハンコックタイヤのノウハウを十分に掴んできている。一方、DTM勢も富士スピードウェイの特性を理解しつつあり、日曜日の予選&決勝はお互いの習熟度を試す絶好の機会になりそうだ。

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