雨のF1第9戦カナダGP予選は、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季5回目のポールポジションを獲得。そして赤旗中断直前の絶妙のタイミングでコントロールラインを通過したニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)が、2番手グリッドを射止めた。
そんな展開の陰に隠れてしまった形だが、Q2でのアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)の走りも、十分に賞賛に値するものだった。
フェルスタッペン「難コンディションを把握し、ひとつも判断ミスをしなかったことでPPを獲れた」レッドブル/F1第9戦
乾きかけの路面から、再び雨の襲来という難しいコンディションのなか、アルボンは2番手フェルスタッペンに0.367秒差のトップタイムを叩き出した。勝因は言うまでもなく、他の14台が浅溝のインターミディエイトタイヤでアタックに出ていくなか、ただひとりスリックタイヤのソフトを選択したことだった。
Q2スタート時点で雨はほぼ止み、走行ラインは乾きつつあった。DRSも使用可能となった。とはいえセクター2から3にかけては、場所によってかなり濡れている。まずはインターでタイムを出して、状況を見てスリックに履き替えるというのが定石で、実際ほとんどのドライバーはそれに従った。
しかしアルボンだけは、果敢にソフトで出て行った。バンピーな路面や高い縁石、そしてダウンフォースを削ってタイムを出すことが求められるため、ここではマシン挙動が不安定になりやすい。ウェット路面では、その傾向にさらに拍車がかかる。
一方で今季のウイリアムズは最高速に優れる代わり、基本的なダウンフォースが足りないクルマだ。それでもあえてソフトを履いた理由として、今季まだ1ポイントしか獲れてない最下位チーム故に、失うものがないという点は確かにあっただろう。しかしアルボンへの厚い信頼がなければ、チームはこんな賭けに出なかったはずだ。
そしてアルボンはその期待に見事に応え、ノーミスの走りでトップに立った。それを見て他のドライバーも次々にソフトに履き替えたが、再び雨が降り始めたこともあってフェルスタッペンを含め、誰もアルボンのタイムを更新できず。Q2首位が確定した。
シャルル・ルクレール(フェラーリ)、セルジオ・ペレス(レッドブル)が11、12番手に終わり、ルイス・ハミルトン(メルセデス)も10番手でQ3進出が精一杯と、トップドライバーたちが大苦戦しただけに、アルボンの走りはいっそう輝きを放った。
中団グループが例年以上に熾烈な戦いを繰り広げるなか、ウイリアムズの純粋な戦闘力は全10チーム中最下位と言っていい。にもかかわらずアルボンは第3戦オーストラリアと今回のQ3進出、そして第4戦アゼルバイジャンからの3戦連続Q2進出と、予選一発の速さが光る。
入賞は今のところ開幕戦のみだが、ブレーキトラブルや不可解な挙動でのクラッシュによる2回のリタイア以外は、すべて完走を果たしている。2018年のFIA F2でジョージ・ラッセルやランド・ノリスとタイトル争いを繰り広げたアルボンの高い潜在能力が、F1でもっと評価される日は必ず来ることだろう。
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