三重県の鈴鹿サーキットで8月7日11時30分にスタートを迎えた『2022 FIM世界耐久選手権(EWC)第3戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第43回大会』の決勝レースは19時30分に8時間レースのフィニッシュを迎え、Team HRC(長島哲太/高橋巧/イケル・レクオーナ)が214周を走破して総合優勝を飾った。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりの開催となった“真夏の祭典”こと鈴鹿8耐。金曜日から始まったレースウイークは8月7日の日曜日に、いよいよ8時間の決勝レース開催日を迎えた。金~土曜日と雨が降ったり止んだりという不安定な天候に見舞われた鈴鹿サーキットだが、決勝日は心配された雨も降らず、快晴の気温27度、ドライコンディションのなかでレースが幕を開けた。
【途中経過】レースは最後の1時間に突入。同時に3番手のYARTヤマハにアクシデント/鈴鹿8耐7時間
スタートでホールショットを奪ったのは、F.C.C. TSR Honda France(TSRホンダ)のジョシュ・フックとなり、2番手にはTeam HRCの高橋巧、3番手にはKawasaki Racing Team Suzuka 8H(カワサキ8H)のレオン・ハスラムが続く。2周目にはスプーンひとつめで作本輝介(Astemo Honda Dream SI Racing)がマシンコントロールを失い、前を走行する浦本修充(SDG Honda Racing)に突っ込むかたちで接触。このアクシデントで早くもセーフティカー(SC)が導入された。
そんな波乱の展開となるなか、首位争いは“ホンダワークス”であるTeam HRCの高橋がF.C.C. TSR Honda Franceのフックをオーバーテイクしトップを奪還。リスタート直後には、22番グリッドから4番手に浮上してきたヨシムラSERT Motulのグレッグ・ブラックが3番手に上がってくると、その勢いのままトップ2もオーバーテイクしてなんとトップに立つ。
その後も団子状態でトップ争いが繰り広げられるなかでヨシムラSERT Motulは3番手に後退、Team HRCとKawasaki Racing Team Suzuka 8Hによる首位争いはカワサキ8Hに軍配が上がる。しかし9周目のホームストレートで圧倒的な直線スピードを披露したTeam HRCが再び隊列の先頭に躍り出る。
トップ3が1回目のピットを完了した後もTeam HRCは首位をキープし、2番手にカワサキ8H、YART-YAMAHA OFFICIAL TEAM EWC(YARTヤマハ)が3番手に続く。レースはこの3チームによる優勝争いがその後も繰り広げられることになる。
スタートから2時間18分となる60周目には、デグナーふたつめの立ち上がりでT.MOTOKIDS TAKADA Iron Works NACが単独転倒、マシンから出火が発生したため2度目のSCが導入された。
そしてこのSC導入でトップ争いに変化が。鈴鹿8耐ではSCが導入されると2台のホンダNSXが異なる場所で同時にコースに出ていき、それぞれの場所で隊列を組むことになっているが、トップのTeam HRCはコースを半周先行するSCを捉えたのに対し、2番手のKawasaki Racing Team Suzuka 8Hはその隊列に加わることができず、もう1台の後方SCの隊列につくことになってしまう。
これでトップを快走していたTeam HRCはカワサキ8Hとの差をさらに広げ、SC導入前には30秒ほどだったギャップを1分以上に広げる。しかし、カワサキ8Hのジョナサン・レイがスーパーバイク世界選手権(SBK)6回王者の走りを披露し、Team HRCと同等かそれを上回るタイムを連発して追い上げを開始する。
トップ2チームによる別次元のトップ争いが展開されるなか、スタートから3時間50分に200Rシケインでなんとカワサキ8Hのレイが転倒。幸いにもライダーとマシンにダメージはなく、レイはすぐさま横たわったマシンを起こして走行を再開するも、1分ほどまで縮まっていたTeam HRCとのギャップは1分40秒に広がってしまった。
その後レースは折り返しとなる後半戦に突入し、Team HRCが2番手以下をラップダウンにする速さをみせて独走状態を展開していき、18時30分にスタートから7時間を迎えた。また、日没前にはレースコントロールから『全車ライトオン』の指示が提示される。
その直後、スプーンひとつめでAKENO SPEED・YAMAHAと、3番手走行のYARTヤマハが折り重なるようにクラッシュしてしまい、YARTヤマハのマービン・フリッツはスポンジバリアに埋まったマシンを起こして走行を再開するも、そのままピットへ向かいガレージでの修復を余儀なくされる事態に。レースはクラッシュパッドを修復する必要があり3度目のセーフティカーが導入された。
レースは18時49分に残り49分で再開を迎え、日が傾き始めた鈴鹿サーキットを舞台にレーシングバイクたちのヘッドライトがコースを照らし、グランドスタンドでは観客たちのペンライトが幻想的な光景を生み出していく。196周目にはトップ独走のTeam HRCが最後のピットストップへと向かい、エースの長島が最終スティントに出ていく。そして3番手にはYRATヤマハのクラッシュにより、ヨシムラSERT Motulが浮上してくる。
そんなトップ3の後方ではS-PULSE DREAM RACING・ITECとTOHO Racingによる争いが白熱し、198周目にテール・トゥ・ノーズのバトルが繰り広げられるとTOHO Racingの清成龍一がS-PULSE DREAM RACING・ITECをライドする渥美心の前に出て4番手に浮上する。だがTOHO清成はその後にガソリン補給のみのスプラッシュピットを行う必要があったため、再びS-PULSE渥美が先行。
鈴鹿サーキットは18時51分に日没を迎えコースが暗闇に包まれ、各マシンのライトが一層と眩しくなるなかレースは最終盤に突入。そして19時30分、8時間で争われたレースはフィニッシュを迎え、ファステストラップも記録する圧倒的な速さと安定感でライバルのみならずトラブルやアクシデントすら寄せ付けなかったTeam HRC(長島哲太/高橋巧/イケル・レクオーナ)が214周を走破して3年ぶりの鈴鹿8耐でトップチェッカー。ホンダにとって2014年のMuSASHi RT HARC-PRO以来の8年ぶり、そして1982年創立のHRC(ホンダ・レーシング)40周年を祝う鈴鹿8耐総合優勝を成し遂げた。
2位にはレース序盤からトップ争いを繰り広げたKawasaki Racing Team Suzuka 8H(レオン・ハスラム/アレックス・ロウズ/ジョナサン・レイ)が1周差で続き、3位には急きょシルバン・ギュントーリの欠場が決定してしまい、8時間をふたりで戦うことになったヨシムラSERT Motul(グレッグ・ブラック/渡辺一樹)が入った。
4位はS-PULSE DREAM RACING・ITEC(生形秀之/渥美心/津田拓也)、5位はTOHO Racing(清成龍一/國川浩道/國峰啄磨)、6位はHonda Dream RT SAKURAI HONDA(濱原颯道/日浦大治朗/國井勇輝)、7位は終盤のクラッシュから素早いマシン修復を果たしてレースに復帰したYART-YAMAHA OFFICIAL TEAM EWC(マービン・フリッツ/ニッコロ・カネパ/カレル・ハニカ)、8位はTeam ATJ with JAPAN POST(高橋裕紀/伊藤和輝/小山知良)、9位はTEAM KODAMA(児玉勇太/長尾健史/長尾健吾)、10位はF.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/マイク・ディ・メリオ)というトップ10になっている。以下45台中44台がチェッカーを受け、リタイアはBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMの1台のみだった。
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みんなのコメント
カワサキでは物足りなかったなぁ
でも、なんだかんだ表彰台に登るヨシムラの方がスゴイと思ってしまう