バッテリーは212kWh 車重は4111kg
あのGMCハマーが復活した。豪腕級のバッテリーEV(BEV)として。実物を目の当たりにすると、あっけに取られてしまう。誕生を素直に喜ぶべきなのか、少々悩んでしまう。
【画像】すべてが破格 GMCハマーEV ピックアップ BEVのクロスオーバーと比較 全101枚
ボディサイズは巨大。そのボディが包む動力性能も甚大。オーバーエンジニアリングという言葉がピッタリはまる、BEVのモンスター・オフローダーだ。
今回試乗したハマーEV ピックアップは、発売を記念したエディション1。従来の概念を覆す、1587.0kg-mと桁違いの最大トルクを発揮する。4ケタある。最高出力は1014psと、こちらも驚くほどの数字だが、インパクトが薄れるほど。
大きなボディを活かし駆動用バッテリーの容量は212kWhと、近年の高性能BEVの約2倍。バッテリーパックが2段に重ねられているという。車重は4111kgで、これも最近のBEV SUVの倍近い。すべてが破格といっていい。
ちなみに英国の場合、この車重のおかげで通常の運転免許ではハマーEVを運転できない。日本でも、普通免許を2017年3月12日以降に取得した人の場合は、車両重量が3.5t未満までとなっている。
航続距離は、アメリカのテスト基準で529kmがうたわれる。212kWhという容量を考えれば短いだろう。急速充電能力は350kWまでと、かなり高性能だ。
ハマーEVが、BEV技術として驚くほど高水準にあることは間違いない。それと同時に、世界中の自動車業界が高効率化や持続可能性へベクトルを向けている時代に、求められる内容なのか考えてしまう。
アルティアム・プラットフォームの開発へ展開
このモンスターBEVの想定ユーザーは、フォルクスワーゲンID.3やシトロエンe-ベルランゴとはまったく違う層ではある。比類ない悪路性能を備えた巨大なオフローダーを欲する、ごく一部の人に向けられている。
BEVを志向しつつ、メルセデスAMG G 63では物足りないと感じたり、通常のラム1500 TRXでは不十分だと考えるような人がターゲット。テスラ・サイバートラックのために貯金を始めた、という人にもピッタリかもしれない。
ハマーEVへ投じられた高度な技術開発によって、親会社のゼネラル・モーターズ(GM)はアルティアムと呼ばれるEVプラットフォームの開発へ結びつけた。われわれに身近なBEVモデルの設計も、よりスピーディーに展開できるようになったという。
基本的なBEVのシステムは、ブライトドロップZevo 600という最新の商用バンでも用いられている。先日試乗したプレミアムSUV、キャデラック・リリックでも、多くが共用されているそうだ。
今回、英国編集部はアメリカ・ミシガン州にあるGMのミルフォード・テストコースで、ハマーEVの試乗機会をいただいた。ただし、走行は特別なクローズドコースに限られ、許された時間も限定的ではあった。
オンロードでのマナーや、圧倒的な動力性能を存分に確かめることはできなかった。それでも、どんな個性や能力を備えているのか、その概要は確かめることができたと思う。
オリジナルのハマーに影響を受けたデザイン
圧倒されるほどのスタイリングは、秘めたモノを如実に表している。1990年代に熱狂的な支持を集めた、軍用車両のハンビーから展開したオリジナルのハマーに、強い影響を受けていることは明らかだろう。
ボディは平面的で四角く、質実剛健な軍用車両を祖先とすることは、教えられなくても想像できる。実用性も高そうだ。
それでいてヘッドライトはLED化され、ワイドで薄い。HUMMERと記されたセンター部分もLEDで照らし出され、モダンなBEVであることも主張している。
ハマーEVは、ピックアップトラックのボディスタイルで北米市場から販売がスタートする。ワゴンボディのSUVバージョンも、それほど間を置かずに投入予定となっている。
角張ったスタイリングのおかげで、実物は実際の寸法以上に大きく感じる。とはいえ全長5507mm、全高2201mm、全幅2009mmと、間違いなく小さくはない。フロアに敷かれた駆動用バッテリーの影響もあって、特に背は高く見える。
サイドステップに足を掛け、よじ登るようにハマーEVの運転席へ座る。インテリアデザインも、オリジナルのハマーと雰囲気は遠からずといったところ。
内装は全体的に四角く軍用車的でありながら、プレミアムな質感や素材で仕上げられている。メルセデス・ベンツ Gクラスと、テイストは重なるようだ。
この続きは後編にて。
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