11月6日(土)、WEC世界耐久選手権第6戦バーレーン8時間レースの決勝がバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われ、トヨタGAZOO Racingのセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組8号車トヨタGR010ハイブリッドが勝利を挙げた。
トヨタの2台に可能性が残されていたハイパーカー世界耐久ドライバー選手権(ドライバーズ・タイトル)は、2位でフィニッシュした7号車GR010ハイブリッドの、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペスが獲得している。
■8号車はトラブルによりステアリングを交換
2021年のWECもいよいよ最終戦。富士6時間レースのキャンセルに伴う代替レースが開催された前週に引き続いての、バーレーンでの連戦となった。前週の第5戦は日中の6時間レースだったが、最終第6戦は14時スタートの8時間レース。レース後半はナイトセッションとなり気温も下がるため、前週とは異なるセットアップや戦略が求められる。
長距離レースの今戦では決勝レースで与えられるポイントも1.5倍に。大量得点も可能となるなか、各チャンピオンシップのタイトル争いに注目が集まる一戦となった。
レースウイーク前に発表があったとおり、トヨタGAZOO Racingの中嶋一貴、JOTAのアンソニー・デビッドソンにとってはこれがWECでの最終レースということで、グリッド上では多くのドライバー・関係者と握手をする姿が見られた。
現地時間13時56分、気温31度/路温43度というコンディションのもと、フォーメーションラップが開始され、13時59分に8時間レースのスタートが切られた。
スタートではフロントロウに並んだ2台のトヨタGR010ハイブリッドがやや慎重に1コーナーにアプローチするなか、その背後のアルピーヌ・エルフ・マットミュート36号車アルピーヌA480・ギブソンのニコラ・ラピエールがアグレッシブな動きを見せ、2コーナー立ち上がりまでにトヨタの2台をパスし首位に立つ。
15分が経過し、ターン10から11までで7号車トヨタのマイク・コンウェイがラピエールの前へ。次の周には8号車トヨタのセバスチャン・ブエミもラピエールをパスし、トヨタがワン・ツーを取り戻した。
45分が経過する頃、アルピーヌがスローダウンし、そのままピットへ。ガレージに入れられて修復を行った。ラピエールによれば、ギヤにトラブルがあり、シフトがしづらい状況だったという。
トヨタ2台は1時間経過を前にした最初のピットインで7号車が左側2輪を交換したのに対し、次の周にピットインした8号車は4輪を交換と戦略を分けた。ピットアウト後、8号車のペースが勝っていたからか、チームはポジションの入れ替えを指示。タイヤがフレッシュな8号車ブエミを前に出す。
その後は差がじりじりと拡大していき、2度目のルーティンピットを迎える直前には7秒程度のギャップとなっていた。
1時間45分が経過する頃、LMGTEアマの車両のデブリ清掃のため、このレース初めてのフルコースイエロー(FCY)が導入されると、トヨタの2台は同時にピットへ。2台ともにタイヤ4輪を交換し、8号車は中嶋一貴へ、7号車はホセ・マリア・ロペスへと交代した。
3回目のピットには7号車が先に飛び込み、左側のみタイヤを交換。1周後にピットインした8号車一貴も左側のみと、同じ戦略で戦うことに。ピットアウト後には両車のギャップが縮まり、3秒ほどとなる。
レースはスタートから3時間を過ぎ、完全に夜に。3時間14分、デンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSRが接触ののちに1コーナーのライン上でストップすると、2度目のFCY導入となった。
3時間半を前に、デブリ回収のため3度目のFCYが導入。ここでトヨタ2台は4回目のピットに同時に入り、8号車はブレンドン・ハートレー、7号車は小林可夢偉へとドライバー交代。2台とも4輪を交換する。
トヨタ勢は4時間半経過時点の5度目のピットで左側2輪を交換。そしてドライバー交代を伴う6度目のピットを前に、ハートレーからはアップシフトに問題があるとの報告がなされ、8号車はブエミへと交代するタイミングでステアリング交換に踏み切る。7号車は可夢偉からコンウェイへと交代。残り2時間を迎え、差は30秒ほどとなる。
残り1時間半、7回目のピットで7号車はロペスへドライバー交代。8号車は一貴がコクピットに収まり、自身にとってのWEC最後のスティントへ。
最終盤、トヨタ2台のギャップは減っていき、残り20分では約10秒ほどとなるが、一貴がドライブする8号車がそのままトップチェッカー。一貴自身にとって59戦目となるWECのレースで通算17勝目をマークして有終の美を飾り、WECに別れを告げた。
ハイパーカークラスのドライバーズ・タイトルは、2位でフィニッシュした7号車のコンウェイ/可夢偉/ロペスが獲得している。
序盤にトラブル修復により順位を下げたアルピーヌは、その後下位クラスのマシンをパスしていき、トヨタから6ラップおくれの総合3位でフィニッシュした。
■チームWRTがル・マンからの3連勝でLMP2タイトルを獲得
LMP2クラスは、序盤からレーシングチーム・ネーデルランド29号車オレカ・ギブソンのギド・バン・デル・ガルデがトップを奪い、後続を引き離す展開に。
2番手以下は混戦が続くが、2~3時間目にかけて、ランキング上位勢が浮上してくる。2回目のルーティンピットを終えて各車がドライバー交代を済ませると、3番手にはJOTA28号車のストフェル・バンドーン、4番手にランキング首位のチームWRT31号車のロビン・フラインスがつけ、やがてフラインスがバンドーンをパス。そのうしろにはJOTA38号車のデビッドソン、ユナイテッド・オートスポーツ22号車のフィリペ・アルバカーキと、役者がそろう。
その後、ジェントルマンがドライブするプロ/アマカテゴリーの車両がポジションを下げてきたことで、WRT31号車がクラストップ、2番手にJOTA28号車という形に。
2時間40分をすぎ、各車は4回目のルーティンピットへ。トップの31号車はシャルル・ミレッシへとドライバー交代。28号車はショーン・ゲラエルが、38号車にはロベルト・ゴンザレスが乗り込んだが、38号車にはピットレーンでのスピード違反のためドライブスルーペナルティが科せられた。これにより、3番手にはユナイテッドAS22号車が浮上する。
4時間50分で導入されたFCYのタイミングで、上位勢全車がピットへ。2番手の28号車バンドーンは自己ベストタイムを刻みWRTを追いかけるが、ギャップは大きく、追いつくには至らない。
結局このあとも首位WRTを脅かす存在はなく、WRT31号車のフラインスがトップチェッカーを受け、フラインス/フェルディナンド・ハプスブルク/ミレッシがLMP2クラスのタイトルを決めた。2位にはチーム内バトルの末、JOTAの38号車が入り、28号車が3位に続いた。
■終始テール・トゥ・ノーズとなったGTEプロのタイトル争いは、まさかの結末
LMGTEプロクラスは、ポルシェGTチーム92号車ポルシェ911 RSR-19とAFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evoが同点に並んでタイトルを争う状況に。92号車ポルシェ、51号車フェラーリ、91号車ポルシェ、52号車フェラーリというグリッド順でレースがスタートするが、3周目の最終コーナーでは51号車のジェームス・カラドが92号車ケビン・エストーレとのブレーキング競争に勝利し、トップを奪う。
次の周のターン6~8では51号車と92号車がサイド・バイ・サイドの状態となり、カラドはコース外を走行しながらも首位をキープ。しかし6周目、今度はエストーレがターン4でトップを奪い返し、その後は1秒以内のギャップで接近戦が展開された。
1時間が経過する直前、51号車のカラドが最終コーナーで再逆転しトップへ。同時にピットインしたこの2台の位置関係は変わらなかったものの、先にピットを済ませていた91号車ポルシェのジャンマリア・ブルーニがアンダーカットを成功させ、クラストップに躍り出る。
ブルーニにカラド、エストーレが追いつき、今度は3台1パックの戦いに。2時間を前に導入されたFCYでは、まず2&4番手のフェラーリ勢がピット作業を行い、それぞれアレッサンドロ・ピエール・グイディ、ミゲル・モリーナへと交代。次の周にはポルシェ2台もピットへ向かい、91号車はリヒャルト・リエツ、92号車がニール・ジャニへと交代してコースに戻ると、91号車、92号車、51号車というオーダーとなる。
3番手に落ちたピエール・グイディは、それでも執拗に92号車ジャニに食らいつき、2時間を過ぎても依然タイトルを争う2台はテール・トゥ・ノーズの状態が続いた。
3度目のルーティンピットのタイミングで91号車が3番手へとポジションを下げると、タイトル争いがそのままこのレースのクラストップ争いに。3時間半経過時点で導入された3度目のFCYでは、またもテール・トゥ・ノーズ状態のまま2台が同時にピットに飛び込むと、ここでカラドへと交代した51号車がわずかに先行。マイケル・クリステンセンに交代した92号車が追う展開となった。
92号車の背後には52号車が迫ったが、レース折り返しとなる4時間を過ぎたところで、GTEアマクラスのトラフィックが出現した隙をつき、52号車のダニエル・セラが92号車をかわして2番手浮上に成功する。
4時間半を過ぎ、51号車が5回目のピットストップで左側2本のタイヤを交換してコースに戻ると、先にピットを終えていた92号車のクリステンセンが先行。カラドは2番手へと後退する。
その直後のFCYでは、92号車がピットへ。一方の51号車はステイアウトし首位浮上と、タイトルを争う2台の戦略が明確に分かれることに。FCY解除後、2台のギャップは10秒ほどとなる。
しかし92号車のステアリングを引き継いだエストーレはカラドとの差をどんどん詰めていき、5時間20分を前に1コーナーへのブレーキング勝負を制すと、トップに立つ。その後も92号車はリードを少しずつ広げていった。
6時間経過を前に、51号車はピーエル・グイディへと交代し、4輪にフレッシュタイヤを装着し、追い上げを敢行。両車のギャップは12秒ほどとなる。
残り1時間13分、デブリ除去のため5回目のFCYが導入されると、トップ2台はここでピットイン。92号車のステアリングを握ったクリステンセンが約6秒差でリードをキープする。
ここから51号車のピエール・グイディはじりじりと間合いを詰めていき、残り35分の時点では、その差が約1秒となる。残り1回の燃料スプラッシュが必要がどうかも焦点となり、燃費走行が続くなか、2台はまたしてもテール・トゥ・ノーズに。
そして残り12分、議論を呼ぶ接触は起きた。
最終コーナーでLMP2にオーバーテイクされるタイミングで、92号車に51号車が追突する形で接触。51号車は走行を続けたが、スピンアウトした92号車はコース復帰に時間を要し、51号車が10秒ほど先行する形になった。
ここで、すぐさま「ポジションを戻せ」というレースコントロールからの指示が51号車に対して出される。しかし51号車がポジションを戻すよりも前に、92号車はスプラッシュのためピットへと向かった。
次の周、51号車がピットへ向かい、同じく燃料を補給。残り7分でコースへと戻ると、51号車はレースコントロールからの指示には従わず首位をキープ。ポルシェ陣営に困惑の色が見えるなか、51号車のピーエル・グイディがそのままクラス首位でトップチェッカーを受けた。
本稿執筆時点で発行されている暫定リザルト上では、クラストップは51号車となっており、ピエール・グイディ/カラド組の手に年間タイトルが転がり込んだ。
■藤井誠暢が躍動するもペナルティ。GTEアマのタイトルは83号車フェラーリに
日本勢の活躍にも注目が集まるLMGTEアマクラスでは、序盤、クラス11番手スタートだったDステーション・レーシング777号車アストンマーティン・バンテージAMRの藤井誠暢が、今回のレースでも俊足ぶりを見せつける。
15分が経過する頃には2番手へと浮上。さらに藤井はPPスタートのチェティラー・レーシング47号車フェラーリのロベルト・ラコルテを追う。
40分すぎ、1コーナーでラコルテに仕掛けた藤井だったが、両車は接触。藤井はトップ浮上に成功するも、ラコルテがコース外に押しやられる形となったため、777号車にはドライブスルー・ペナルティが科せられてしまう。
一方、木村武史がスタートを担当したケッセル・レーシングの57号車フェラーリも順調にポジションを上げ、一時4番手付近を走行する場面も。
チェティラーの47号車フェラーリは、一時チーム・プロジェクト1の56号車ポルシェにトップの座を譲ることもあったが、56号車にペナルティが科せられたことにより、再びトップを奪い返す。
5時間を前にした4度目のFCYでのピット作業を終えると、今度はランキング首位のAFコルセ83号車(フランソワ・ペロード/ニクラス・ニールセン/アレッシオ・ロベラ)がクラス首位へ。83号車はこのままクラス優勝を飾り、同時にLMGTEアマクラスのタイトルも決めている。2位にはデンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ、3位にはチーム・プロジェクト1の56号車が入った。
木村のケッセル・レーシングはクラス5位、星野敏と藤井のDステーション・レーシングはクラス8位で、最終戦を終えている。
これで2021シーズンのWECは全レースが終了。最終戦の地・バーレーンでは、11月7日(日)に『ルーキーテスト』が開催される。そしてWECの2022年シーズンは3月、アメリカ・セブリングで開幕予定だ。
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みんなのコメント
しかもアルピーヌなんてプライベーター並w
スカパーで見てたけどWECはLMP2クラスの接戦楽しむ見るレースだね
トヨタはいつまで独り善がりのレース続けるか分からんが勝って当然負けてもクラス表彰台確実
なんだかな~だね