トヨタのフラッグシップSUVであるランドクルーザー、世界中が待ち望む14年ぶりのフルモデルチェンジの詳細が、2021年6月10日東京時間午前2時半にオンラインで公式発表された。
2021年に登場する新型車のなかでも最大の注目を集める新型ランドクルーザー(ランクル300)の発表情報を、すべてお知らせしたい。
噂の次期モデルのSUV化もチャレンジか!? クラウンがこれまで歩んできた道も挑戦の歴史だ!!
文/柳澤隆志 写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】未掲載写真も収録!! 世界初披露された新型ランクル300の姿をまとめて見る!!!
■東京の午前2時半はドバイの午後9時半にあたる
今回発表された新型ランドクルーザー300シリーズは、世界中で高い評価を受ける「陸の王者」として活躍を期待されている。伝統の「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」としての「オフロードでの信頼性・耐久性・悪路走破性という骨太さ」に加え、「オンロードでの乗り心地の良さと使い勝手の良さ」を持つ、高級SUVとして二つの性格を持つよう企図されている。
そしてその相矛盾するような二面性が「二兎を追うものは一兎をも得ず」ではなく、両者の「いいとこどり」となってデビューしてくると思うと期待は高まる。
中東を狙い打ったような時間にワールドプレミア(世界初披露)された、トヨタのフラッグシップSUV新型ランドクルーザー
今回のグローバルプレミア発表時間「東京時間午前2時半」とは、究極の実用性とラクジュアリー性の両者を兼ね備えることが非常に重要となるマーケット、「中東」で最も注目を浴びる時間帯を意識したもの。
東京時間午前2時半は、サウジアラビアのリヤドでは午後8時半、UAEのドバイでは午後9時半にあたる。新型ランドクルーザーが二羽のウサギを捕まえている自信の表れと言ってもいいかもしれない。
今回の世界初披露では、砂漠を疾走するシーンと都市部のハイウェイを走行するふたつのシーンが公開された。ランクル300が持つ「二面性の両立」がアピールされたかたち
今回の新型ランドクルーザー開発を取り仕切ったトヨタ自動車・横尾貴己チーフエンジニアは、自らが先代200シリーズのハンドルを握り、世界の道の8割が集まるというオーストラリアをドライブしたところ、「クルマの挙動に逐一注意を払う必要があり、疲れたこと」に気づき、新型300シリーズの開発に当たっては「まず運転しやすいこと、疲れないこと」を目標にしたという。また悪路走破性に関しては歴代過去最高だった80シリーズを超えることを目標としたとのこと。
世界初公開写真。グリルの形状が異なるモデルが存在することがわかる(真ん中のおそらく標準仕様はレクサスLXに似ている気が…)
■70年の蓄積を背負った究極の働くクルマ
1951年8月にTOYOTA BJ型として発売されてから70年の時を経て蓄積された伝統のフレーム構造を持つ「究極の働くクルマ」としての経験知に加え、パワートレインユニットとプラットフォームを一体で開発するTNGAの発想に基づく最新技術、新GA-Fプラットフォームを導入。第一に運転しやすく疲れないドライビングポジションを確保。
新型ランクル300は2種類(以上)のグリルを持つことが判明。グリル内には「GR」のロゴも見える
構造は不変ながらも新設計されたラダーフレームと世界初のフレーム溶接技術に加えエンジンのダウンサイズにより200kgの軽量化と重量バランスの適正化、低重心化を実現。悪路でのタイヤの路面密着性を高めるため、タイヤのストローク方向とショックアブソーバーの位置関係を改善するなどサスペンションの基本性能の向上が図られた。
またオンロードではスタビライザーを電子制御で作動させて走行を安定させ、オフロードではスタビライザーの機能を解除して悪路での足回りの柔軟性を確保するE-KDSSを世界初搭載。
ドライバーが悪路での障害物を見落とさないよう直感的に可視化するマルチテレインモニターや路面状況をクルマが確認しマルチテレインセレクトが自動で選択され、オフロードでの運転支援がより強力となった。
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■エンジンは2種類のV6ツインターボ
新開発されたガソリン3.5L、ディーゼル3.3Lの2種類のV6ツインターボエンジンは従前のV8エンジンの動力性能を上回り、意のままに操れる気持ちの良い走りを実現。ガソリン車で305kw/415馬力、650Nmのトルクを、ディーゼル車で227kw/309馬力、700Nmのトルクを生み出しさらに燃費の向上も図られた。
(一部で予想されていた電動化(ハイブリッド)仕様は、現時点ではラインアップされないことも判明)
今回発表された写真からは、20インチとみられるホイールや精悍なLEDライトに加えて、シルバーとマットブラックで高級感と視覚的なインパクトを作り出したフロントグリルが確認できる。デザインは先代200シリーズを踏襲しているが14年分の若返りを果たし、よりボクシーかつ強めの押し出しとなり視覚的なバランスはより低重心化を遂げた。
今回公開された映像では内装も公開(左ハンドル仕様)。豪華で上級。まさに「陸の王者」のイメージを踏襲することになる
ただし実際の全長・全幅・ホイールベースやデパーチャーアングル、アプローチアングルは先代のそれを完全に踏襲している。特にトヨタ自ら黄金比と言うホイールベースは80シリーズの頃から不変のままだ。
内装デザインもドライバーの平衡感覚を確保するため水平基調が意識されたインストルメントパネルや操作性を追求したスイッチ類など機能美を追求するものとなっている。
そして環境性能面では「陸の王者」であるにもかかわらず車両使用時の年間CO2排出量をグローバルの全台数ベースで見て従来型から約10%低減した。
安全性能も現代のクルマとして抜かりなく、最新・先進の予防安全パッケージである「Toyota Safety Sense」をはじめプリクラッシュセーフティ、横断歩行者検知機能、緊急時操舵回避支援機能などに加え、パーキングサポートブレーキまで搭載される。
フロントグリルの異なるモデルでは、デパーチャーアングルも異なることが確認できる
■「GR SPORT」のバッジを掲げたグレードが
今回はグレードなどの詳細は公開されなかったが、ワールドプレミアのビデオではZX、VX-R(中東専用グレード)と、ランクル史上最高のオフロード性能を持つと噂される「GR SPORT」というプレートを備えるグレードが紹介された(なんらかの「走りのグレード」が存在することは確かなようだ)。「GR SPORT」ではTOYOTAとアルファベットで大きく書かれた無骨なロゴが目立つ。またフロントグリルからサイド回りのクラッディングパネルもオフブラックの精悍かつ実用性の高そうなものとなっている。
公開された映像には「GR SPORT」のロゴが大写しになるシーンも。登場時から用意されるかどうかはわからないが、確実にスポーツモデルが存在することを示す
写真で見るかぎり、「GR SPORT」のプレートを掲げたグレードは、アプローチアングル/デパーチャーアングルが通常の車両よりも大きくとられている。すなわち路面と車体の干渉を防ぎ悪路走破性を高めるためにフロント/リアバンパー下部の張り出しが少なくなっているように見受けられる。また車高もより大きく確保されているように見える。
ランドクルーザーは、ランドクルーザーがなければ行き来できないぐらい過酷な場所で暮らす人々の命を支えてきた。これまでに世界170か国と地域で1040万台、年間30万台以上が販売されてきた事実をみればそれが過剰なステートメントでないことがわかる。
そして「ランドクルーザーは人々の安全と安心を支える生活に必要不可欠な唯一無二の道具である」というトヨタの哲学に基づいて今回の300シリーズも設計・開発されている。
日本にいると想像できないことだが、雪の積もった狭い山道を登って標高4000mを超える村までたどり着き、キャタピラーがなければ走破できないような深い泥と岩にまみれた未舗装路を超え、川を渡って患者を都会の病院に届けなければならない、というようなシチュエーションが世界には存在する。あなたがそのクルマのハンドルを握る立場だとしたら、どんなクルマを選ぶだろうか。
世界中の過酷な環境で愛され続けるランドクルーザー。こうしたユーザーを抱えるため、新型ランドクルーザーには多面的で多層的な性能が求められる
クルマが物理的に壊れたり砂漠や雪道、泥道を走破できずにスタックしたりすると文字通り死を覚悟しなければいけない環境でも安心して「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」としてユーザーに選択され続けてきたクルマがランドクルーザーなのだ。
そしてそのような信頼性へのユーザーの要求に加え、現代のクルマに求められる洗練された乗り心地、環境性能、アクティブ/パッシブセイフティー/走行支援性能といった要素を満たし、両立させることは極めて難しい。単純に言ってしまえば壊れないよう丈夫に作ればクルマは重くなり、乗り心地や環境性能は一般的に低下するからだ。
室内の豪華さは折り紙付き。3列シート7人乗りであることも確認できる
だがランドクルーザーの開発に当たっては快適性能を高めるために走破性を犠牲にするなどというトレードオフの発想はありえない。ユーザーの命にかかわる高い要求を必ず満たすように運命づけられ鍛え続けられてきているクルマなのだから。
それが今回のフルモデルチェンジで何一つ犠牲にすることなくすべての要素がひたすら改善されているというではないか。
そんな新型ランドクルーザーが世界でデビューするのは今年の夏。トヨタによれば、「本年夏以降、世界各地で発売する予定」と公式に明言された。
トヨタのプライドをかけたモノづくりの究極の到達点といっていい新型ランドクルーザーを、この目で見られる日が来るのが楽しみで仕方がない!
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吉原工場からのラインオフだろうな