2021年F1第4戦スペインGP日曜日のカタロニア・サーキットには、少し重苦しい雰囲気が漂っていた。それは、いまにも雨が降りそうな鼠色の雲が上空を覆っていたせいばかりではなかった。
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が、土曜日の予選後に無線と海外のメディアに発したコメントを巡って、その後チームに謝罪するという騒動となっていたことも関係していたからだった。
角田裕毅、燃圧低下で序盤リタイア「ペースはよかったので完走できず残念」アルファタウリ・ホンダ/F1第4戦
「こんなマシンじゃ、戦えない」という無線で発した言葉は、プロのドライバーとしては口にすべきことではなく、角田はその日の夜にSNSで謝罪した。
一方、角田が海外のメディアに発した「チームメイトと同じことをやってもフィードバックが違う。もちろん同じクルマなんだけれど、クルマの性格があまりにも違うのでちょっと疑問を感じています。何が起こったのか、なぜこんなに苦労しているのか、自分でもよくわからない」というコメントは、第3戦ポルトガルGP後に日本語で筆者にも語っていたように、角田が抱いている悩みだった。
ただし、スペインGPの予選後に、角田は筆者に対してそのことは語らなかった。
では、なぜ海外のメディアに、予選後のタイミングであの発言を行ったのか。考えられる要因は、ポルトガルGPではまだ半信半疑だったため日本のメディアにだけ語ったが、スペインGPの予選を終えて、チームメイトとの差が再び明確になったため、その疑問は確信となり、海外のメディアにも英語で不満をぶちまけたのではないかということだ。
じつはスペインGPの予選後にミックス・ゾーンに来た角田と1対1の取材をしていて、強く感じたのが『こんなはずじゃない』というような焦りだった。それは「もし予選Q1の2回目のアタックをもう少し遅らせていれば、路面コンディションが良くなって、タイムが上がってQ2に進出できていたかもしれませんね」という筆者の問いに、角田はこう答えていた。
「タイヤのウォームアップも自分のペースでできるので、それ(早めにコースインしたこと)は良かったと思います。問題点はそこ(2回目のタイムアタックを開始したタイミング)ではなくて、なんで(1回目のアタックで)チームメイトに比べてペースがなかったのかだと思います」
「本来であればQ3を戦うクルマなので、Q1で戦うようなクルマじゃない。だから、ポジショニングには関係ないです。そもそも2セット目のタイヤを履いている時点でおかしい。根本的に何が足りていないのかをつめ直したいと思います」
しかし、チームメイトのピエール・ガスリーですら今回はQ2落ちするほど、現在の中団争いは接近した戦いとなっている。いまは周りのパフォーマンスやチームメイトとの差を気にするよりも、自分と自分のエンジニアたちを信じて、いかにAT02を自分のマシンに仕上げるかに集中してほしい。
もちろん、そのことは角田自身が一番感じていることだろうとは、SNSで「今日は自分の走りをまとめきることができませんでした。まだまだクルマへの理解を深める必要があると感じています。チームとデータ分析を進めて、より良いセッテイングを模索していきたいと思います。明日は全力で挑むのみです!」と綴っていることからもわかる。
全力で挑んだ日曜日のレース。しかし、角田のレースはわずか7周で終わった。
「燃料圧力の低下が発生したためにリタイアしました。今週末は厳しい週末になりました。問題の原因については、早急にチームと一緒に解析を進めていきます」
同じマシンでも、同じパワーユニットでも、自分だけトラブルに見舞われることもある。悔しいが、それがモータースポーツ。レース後、角田はこうコメントした。
「いまの段階ではマシンに何が起きたのかわかっていないので、マシンが戻ってきたら調査を進め、エンジニアとともにすべてを見直したいと思います」
またひとつ、経験を積み、成長したスペインGPだった。
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みんなのコメント
でも、アイロットの様に実力はあってもシートを獲られないドライバーが殆どなのだから、そういう意味では角田は運を持っている筈。
ここが踏ん張りどころで、角田の人間力が試されているんだよ。