自然吸気V12気筒は、エンツォと同じF140
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
【画像】フェラーリ599 希少なGTO、エンツォ、後継のF12ベルリネッタも 全56枚
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
従来のフェラーリでも、乗りやすい存在だった599。ディーラーのショールームへ姿を表したのは2006年。ソフトで丸みを帯びた575Mマラネロの、後継モデルだった。
フロントにV型12気筒エンジンを載せ、リアタイヤを駆動するグランドツアラーでありながら、一気にハードルは低められていた。フェラーリとして印象的な走りが味わえたが、近年の599の取引価格が現実的な領域で推移している理由でもある。
F12ベルリネッタの前身でもあり、まだ充分な競争力は備えている。手入れの行き届いた599なら、12万ポンド(1680万円)程度で取引されているようだ。
長いボンネットを開けば、伝説のエンツォの動力源にもなった、F140型と呼ばれる自然吸気の6.0L V12ユニットが現れる。ややデチューンされているとはいえ、F1スーパーファストと名付けられたATを介して、600馬力以上のパワーがリアタイヤへ伝えられる。
この素晴らしいF140ユニットは、専用のアルミニウム製シャシーにマウント。0-100km/h加速は3.5秒と、今でも成績は優秀な部類に入るだろう。599の車重は1.8t近くあるが、最高速度は320kmを超えている。
もちろん、ハンドリングも優秀。オプションとしてカーボンセラミック・ブレーキが用意された初めての量産車でもあり、デルファイ・マグネライドと呼ばれる磁性流体を用いた可変ダンパーも装備する。
この可変ダンパーは、信頼性という点では599のアキレス腱。しかし路面を問わない順応性と、優れた動的性能を支える技術でもある。
599XXや599 GTOというハードコア仕様も
ハンドリング・グランツーリスモ・エボルツィオーネ(HGTE)と呼ばれるパッケージが追加されたのは2009年。引き締められたサスペンションにソフト・コンパウンドのタイヤ、幅広のホイールなどを装備し、シャープな走りを獲得している。
新車当時からHGTEは人気のオプションで、中古車として流通している高価格帯の599の多くにも装備されているようだ。だがタイヤの摩耗は早く、速度抑制用のコブ、スピードバンプは不得意分野になってしまう。
フェラーリ599のハードコア仕様としては、さらに上がある。グランプリ規格のサーキットへ足を運び、100万ポンド以上を用意できるなら、サーキット専用マシンの599XXを手に入れることも可能だった。
通常のドライバーが購入できる最速フェラーリの1台で、最高出力は標準から110ps増し。車重は300kgも軽量化されていた。フェラーリのテストコース、フィオラノを当時は最短時間で周回したマシンでもある。
崇高なマシンだが、お金持ちなだけでは購入できなかった。生産された599XXは、わずか29台。忍耐力に長けた選ばれた人しか、契約書にサインはできなかったのだ。
一方で、公道走行が可能な599 GTOなら50万ポンド。車重は若干増え、パワーもわずかに劣るものの、サーキットでのスリルは引けを取らない。しかも、そのまま自宅へ乗って帰れるという大きなアドバンテージもあった。
不具合を起こしやすいポイント
ボディ
リアクォーター・パネルが腐食を起こしやすいが、コートペイントで進行を止め、修復は可能。599のボディサイズは大きく、市街地での取り回しはしにくい。バンパーやボディ下部のほか、外装に凹みや擦り傷などがないか確認する。
ホイールのガリ傷やラグナットの錆、パースペックス製のリアライト・カバーが劣化していないかも観察したい。
エンジン
燃費は5.3km/L程度。ガソリンスタンドで、エンツォと同じエンジンだと自慢する時間は沢山あるだろう。定期点検は8000km毎と指定され、英国でかかる費用は約1500ポンド(21万円)。
エンジン前部、ガスケットからのオイル漏れが珍しくない。燃料ポンプのプラスティック部品はヒビが入りやすい。割れてくると、ガソリンの匂いが車内に入ってくる。
トランスミッション
599では一般的なオートメーテッドMTは基本的には堅牢だが、フルード交換を怠ると不具合を招く。5万6000km毎に交換しておきたい。
専門ショップなどで定期点検を受けていれば、クラッチの摩耗もわかる。75%程を使ったところで新品に交換したい。英国なら作業に3000ポンド(42万円)くらいは必要だ。
サスペンションとブレーキ
オプションのカーボンセラミック・ブレーキは強力な制動力を生むのの、599の場合はスチールディスクほど長持ちしない。交換費用も安くない。
乗り心地が不安定なら、ショックアブソーバーのフルード漏れを確かめる。交換費用は高く、リビルドも難しい。コントロールアームとボールジョイントは、劣化が早く交換頻度は短め。コツコツ音がし始めたら、劣化のサイン。
電気系統
毎日のように運転するドライバーを除いて、バッテリーは常に充電しておく方がベター。無用なシステムエラーを防げる。ジャンプスタートは避けたい。
荷室内のカットオフ・スイッチを利用し、トリクル・チャージャーをつなぐと良い。バッテリー・コンディショナーは、オプションで用意されていた。バッテリーを切りシャットダウンすると、エラーコードが消える場合がある。不具合が起きたら試してみると良い。
専門家の意見を聞いてみる
ジェームズ・キャボーン ケント・ハイパフォーマンス・カーズ代表
「599を探すなら、評判の高い専門ショップか、主要ディーラーが売るクルマが良いでしょう。比較的数は多く売れたフェラーリです」
「複数のオーナーを転々としている傾向もあります。状態に優れ、クリーンな履歴であることは、ちゃんと確認した方が良いでしょう」
いくら払うべき?
6万ポンド(840万円)~7万4999ポンド(1049万円)
初期の599 GTBが中心。英国では左ハンドル車が含まれていることも。アフターマーケット製の派手なボディキットで着飾っている場合も。
7万5000ポンド(1050万円)~8万9999ポンド(1259万円)
状態の良い599 GTB。走行距離は9万6000km以下のものが多い。エリック・クラプトンが過去に乗っていた599は、8万9900ポンド(1258万円)で売られていた。インテリアはブラウンだ。
9万ポンド(1260万円)~11万4999ポンド(1609万円)
カーボンセラミック・ブレーキにデイトナ・パターンのシートを備えた、フル装備状態の599を英国では選べる。
11万5000ポンド(1610万円)以上
後期型のHGTEや、特別エディション・モデルが出てくる。価格はGTOで40万ポンド(5600万円)を超える。貴重なSAアペルタの場合、100万ポンド(1億4000万円)はくだらない。
知っておくべきこと
フェラーリは、新車登録から最長15年間を保証する、ニューパワー15と呼ばれる保証サービスを提供している。中古車でも保証サービスへ加入可能で、オーナーはリコール対応やディーラーでの整備を受けられる。
ただし改造されていないなど、一定の条件がある。保証サービスに入る前に、ディーラーで技術者によって確認を受けることになる。
英国で掘り出し物を発見
フェラーリ599 登録:2009年 走行:2万5700km 価格:10万8950ポンド(1525万円)
どちらかといえば、控えめなスタイリングのフェラーリ599。ありがちなロッソ・コルサではなく、ネロ・デイトナというボディカラーが一際似合う。
これは走行距離が短い、状態の良い599。傷1つない艷やかなボディとオリジナルのアルミホイールが、価値を一層高めている。
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みんなのコメント
リセールはミッドシップのモデルなんだろうけど。