国内での法令違反
とてつもなく大きな「クルマの世界」における時代の変化。その前兆を強く感じる、2024年であった。
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まずは、国内での法令違反についてだ。
23年末に大きなニュースとなったダイハツによる型式指定の認証不正問題が、トヨタグループなど他メーカーにも飛び火した。
国が定めた認証に関する試験が、メーカー社内で的確に管理できていないという、メーカーの実態に対して、ユーザーのみならず販売の現場でも大きな衝撃が走った。
しかも、各メーカーの謝罪会見では「技術的には安全性は担保されている…」との言い訳が目立った。論点はそこではなく、法令遵守であるはずだ。さらに、日産などが関与する、下請法への抵触を疑問視されるような事案が報道され、メーカー各社は事実確認と再発防止に追われた。
こうした一連の動きの中で、年間売上が数兆円から数十兆円にまで巨大化したメーカー各社に対して、組織としての脆弱さをユーザーは目の当たりにしたと言えよう。
その上で、自動車産業が今、「100年に一度の産業構造変革」の真っ只中にいて、ひとつ間違えば自動車産業の行く末が危ぶまれる危険性があることを、ユーザーは薄っすらとイメージできたことだろう。
実際、巨大ビジネス化した自動車産業を大きくひっくり返してしまおうと目論む人たちがグローバルでうごめいているのだから。
そもそも「100年に一度…」とか、「ニューエラ(新しい時代)」といった表現が自動車産業界で使われるようになったのは、2010年代半ば過ぎだ。きっかけを作ったのは、欧州だ。
欧州起点のESG投資バブル
まず、フォルクスワーゲングループが燃費不正による業績悪化からのV字回復の狙い、EVシフトを打ち出した。数兆円規模の関連部品の購買を明言し、EVシフトに対する本気度を示した。
背景には、COP21(国連気候変動枠組み締約国会議)でのパリ協定がある。その時点で、グローバルで急速なEVシフトが起こるとは多くの人が予測していなかったが、フォルクスワーゲンは大きな賭けに出た印象があった。
こうした世間の動きを察知して、メルセデス・ベンツ(当時ダイムラー)やBMWは、EVシフトを少し横目で見ながらも、多様な産業とのコラボレーションが2020年代以降は必須とみて、社内組織変革やマーケティング活動を強化するようになった。
そのひとつが、メルセデス・ベンツが提唱したCASEだ。コネクテッド、自動運転、シェアリングエコノミー、電動化という大きく4軸が複合的に絡み合うことで「クルマからモビリティへの転換」を強調した。
ここに、欧州連合の執務機関である欧州委員会が、欧州グリーンディール政策を打ち出し、そこに中国とアメリカの政治的な駆け引きが重なったことで、グローバルでのESG投資バブルが起こる。
ESG投資とは、財務情報だけではなく環境、ソーシャル、ガバナンスを考慮した投資のこと。これにテスラや中国地場EVメーカーが上手く乗っかった形だ。
気になる投資ファンドの動き
そして2020年代はコロナウイルスの脅威に始まり、その後コロナ禍が段階的に収束していった。
気がつけばESG投資による行き過ぎたEVシフトは調整期となり、日本自動車工業会が提唱していたパワートレインの「マルチパスウェイ」がグローバルで当たり前になってきた。
一方で、CASEに次ぐマーケティング用語として、SDV(ソフトウェア・デファインド・ヴィークル)が猛威を振るっている。ここには生成AIが絡む。
生成AIを活用した自動運転については、グーグル(親会社アルファベット)から独立したウェイモが数兆円規模の先行開発投資を行っているとされ、日本メーカー各社は事実上の蚊帳の外だ。
ただし、SDVにしても生成AIにしても、自動車産業界における明確な定義はなく、自動車産業界全体がこれらに振り回されている印象がある。
その上で、メーカー各社は「バリューチェーンの変革」を掲げるものの、その中核を成す販売企業の再編という大手術への着手にはどのメーカーも慎重な姿勢を崩さない。
そうした中、海外ではレカロやブレンドなどブランド価値の高いティア1による合併・買収が進み、また中東系ファンドが英国マクラーレンの乗用車部門を買収するなど、自動車産業界の資本体系に地殻変動が起き始めている。
このように、2010年代半ば以降の、CASEやESG投資バブルを過ぎて、いまはモビリティ社会転換に向けた「踊り場感」がある自動車産業界。
第二次トランプ政権の影響だけではなく、2025年は「クルマの世界」で大どんでん返しが起こる可能性は否定できない。
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