9月8~10日に迫ってきたWEC富士6時間レース。2023年はトヨタ、プジョーだけでなく、フェラーリ、ポルシェ、キャデラック、そしてヴァンウォールがトップカテゴリーに加わり、大きな注目を集めることになるはず。だが、トヨタ、プジョー以外のハイパーカー/LMDhマニュファクチャラーは日本初上陸ということで、正直、馴染みの薄いドライバーも多いのではないだろうか。
というわけで、WEC富士をより楽しむために、このコーナーでは各マニュファクチャラーを代表するドライバーたちに、自分のチームメイトを紹介してもらうことにしよう。第1回は、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツだ。
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ポルシェといえば、かつて日本のスーパーGTやフォーミュラ・ニッポンで活躍したアンドレ・ロッテラーとフレデリック・マコウィッキが在籍中。日本に多くのファンがいる彼らふたりに、それぞれのチームメイトがどんな人なのか、教えてもらった。
■エキサイトするふたりをなだめるアメリカン
まずはフランス出身、5号車ポルシェ963でエントリーする『マコちゃん』ことマコウィッキ。彼がマシンをシェアするチームメイトは、デイン・キャメロンとミカエル・クリステンセンだ。
キャメロンはアメリカ・カリフォルニア州出身の34歳。ジュニアフォーミュラで好成績を残した後、2009年にはスポーツカーに転向し、これまでIMSAで2014年にGTDクラス、2016年にプロトタイプクラス、2019年にDPiクラスと3回もタイトルを獲得している。
昨年はチーム・ペンスキーからWEC・LMP2にデビューして、セブリング、スパ、ル・マンの3戦に出場。今年、ポルシェのファクトリードライバーとして、フル参戦を開始した。
一方のクリステンセンは、デンマーク出身の33歳。レーシングカートから、フォーミュラ・BMWヨーロッパ、GP3とシングルシーターの階段を上がってきたが、2012年にはポルシェ・ヤング・ドライバー・プログラムの一員となり、スポーツカーに転向。ドイツのカレラカップ、スーパーカップを経て、2014年にはポルシェのファクトリードライバーになった。その年から、WECのGTEプロクラスにフル参戦を開始。2018年にはル・マンでクラス優勝、そのシーズンはタイトルも獲得した。そして、今年はハイパーカーにステップアップしてきたドライバーだ。
「僕はすごくラッキーだよ、とてもいいチームメイトふたりがいて。一緒にいてとても雰囲気がいいし、いい時間を過ごせている」と42歳のマコウィッキはふたりのチームメイトについて語る。
「最初お互いに知らない時は、うまく行くかどうか分からないし、一緒に仕事をし始めるのは難しいものだ。でも、そこがうまく行っているからクールだね。僕らはそれぞれ違う3つの国の出身。デインはアメリカ、マイケルはデンマーク出身。だけど、レースに対しては同じ望みを持っている。それに、食事の好みも同じなんだ。ここはかなりの重要ポイント。大抵はイタリア料理をみんなで食べるけど日本に行った時は和食だね。僕が彼らにとても美味しい和食を紹介するつもりだ。ル・マン以外では、サーキットの外でいいレストランを見つけて、グラスワインを嗜みながら一緒に過ごし、リラックスすることもあるんだよ」
その時の話題は、マコウィッキによると多岐に渡るのだと言う。
「サーキットの外では、スポーツやカートのこと、経済や政治など、どんなことでも話をするよ。政治の話をしたりすることで、それぞれの国の違いが分かるし、文化や各国違う視点が分かって面白い。僕自身、レースでいろいろな国を旅してきたことで、よりオープンなマインドを持つことができているから、彼らと話すことでさらに他国のことを知れていいんだ」
では、彼らはそれぞれどんな性格の持ち主なのだろうか?
「僕らは3人とも、通常は落ち着いていて、リラックスしているんだけど、デインもそういうタイプだね。彼は、プロトタイプでの経験が一番多くて、仕事の上でこうあるべきという部分をいつも時間をかけて確認している。サーキットの外でのことをすべてバラすわけにはいかないけど(笑)、彼はとてもスポーツが好きで、自転車にもよく乗っているし、運動している時がハッピーなんだ」
「マイケルはアメリカでレースをしていた時にもチームメイトだったし、昔からよく知っている。それにポルシェにも長く在籍している。僕とマイケルは勝利に対して貪欲だし、ふたりとも強い性格だね。アグレッシブっていうんじゃなくて(笑)、性格が強い。その点、デインが時々僕らを落ち着かせてくれるっていうのがいいんだよ(笑)」
たしかにマコウィッキは日本にいる時も、ヨーロッパに戻ってからも、時々エキサイトしているのを見かけたことがある。そこはクリステンセンも同じよう。感情に起伏のある欧州人のふたりを、米西海岸のキャメロンがイージー・ゴーイングな感じでなだめてる、ということなのだろうか。このあたりは、富士でまた観察してみたいところだ。
■レースでの意思決定に関わりたがるのは誰?
続いては6号車勢。最初日本に来た時は20歳そこそこだったが、今やトリオの中でも最年長の41歳となったドイツ人のロッテラーに、年下のチームメイト、ケビン・エストーレとローレンス・ファントールを紹介してもらった。
エストーレはフランス・リヨン出身の34歳。レーシングカートでは、2001年に仏カデット選手権のチャンピオン、2004年にはヨーロピアンICAのチャンピオンに輝き、4輪にステップアップしてからも、フォーミュラ・キャンパス・バイ・ルノー&エルフのデビュー戦で勝ったかと思えば、チャンピオンも獲得。F1まっしぐら、という才能だ。
しかし2007年、仏フォーミュラ・ルノーでシリーズ9位となった後、スポーツカーに転向。フランスやドイツのポルシェ・カレラ・カップやスーパーカップをはじめ、FIA GT、アメリカン・ル・マンシリーズのGTDクラスなど、多くのGTカテゴリーレースに出場して来た。2014年からはIMSA、2015年からはWECに参戦を開始。2017年からは、GTE Proクラスで一貫してポルシェのファクトリーチームでステアリングを握り、今年はハイパーカーにステップアップしている。
一方のファントールは、ベルギー出身の32歳。カートで活躍した後は、いきなり大幅ステップアップでドイツF3に参戦したのだが、ここでシリーズ4位となり、ベルギーのナショナルチームメンバーに入る。また、フォルクスワーゲンも彼をオフィシャルドライバーに抜擢した。翌年にはドイツF3タイトルを獲得。続いてF3ユーロシリーズにステップアップして2年間戦ったが、ここでは勝利することができなかった。翌2012年には、スポーツカーに転向し、FIA GTに参戦。2013年からはアウディのファクトリードライバーとなり、ブランパンシリーズやマカオGTカップ、ニュルブルクリンク24時間レースなど各種のGTレースに参戦している。
そして、2017年にはポルシェに移籍。2018年には、エストーレ&クリステンセンとともに、ル・マンでクラス優勝を果たした。エストーレ同様、今年はハイパーカーにステップアップし、ロッテラーとトリオを組んでいる。
さて、ロッテラーにとっては後輩ドライバーにあたるこのふたり。それぞれどんなドライバーなのだろう?
「まず今年、富士に戻れて僕はとてもハッピーだよ。日本が恋しくて仕方がなかったからね」
「ということで、僕の新しいチームメイトを紹介しよう。ケビンは、フランス人でとてもいいヤツだ。ドライバーとしては、プッシュしてアタックしてって言うのが大好きだね。それと同時に、とてもフレンドリーでもある」
「レースに対する決定の場に関わることも好きだし、サインガードに行って、エンジニアリングチームやマネージメントと一緒にストラテジーなど意思決定をするのも好きなんだ。とても情熱的なレーサーだよ。また、彼はとても家庭的なんだ。息子と娘がいると思うけど、よく家族と子どもの面倒も見ているよね。すごく家族思いだよ」
「ローレンスは、ベルギー出身だから、ずっと昔から知っているんだよね。アウディのGT3でレースをしていたし、僕がアウディに所属していた時代は、同じイベントでよく顔を合わせた」
「彼は、とにかく食べ物に関して特別なところがあるんだ。グルテンを取ることを極端に嫌がっていて、いつもグルテンフリーの食事をしているんだよ。牛乳も飲まないし、とても食べ物に対して難しいところがあるんだ。だから、一緒に食事ができるいいレストランを見つけるのが、とても大変なんだよね。彼は、フィットネスや睡眠時間の管理、また血糖値に関して、ものすごくプロフェッショナル。常に、グルコースの値を計測しているしね。ベッドに行くのもものすごく早いんだよ。でも、チームメイトとしては素晴らしいし、一緒にレースできることを楽しんでいるよ」
ちなみに、このグルテンフリーに関しての話は、ファントール自身にも聞いてみた。すると、「昔はなんでも食べていたけど、レースの時に腹痛が起きたり、体調がすぐれない時があったんだ。だからアレルギーなどを調べて、グルテンが合わないと分かった。食べなくなってからは、すこぶる快調になったよ」とのこと。
ロッテラーのコメントにもあるように、右腕につけたセンサーで、常に血糖値も確認。黒いパッドの中に短い針が入っていて、数値を常にスマホで見られるんだそう。グルテンフリーを貫いているということで、ひょっとして主食は米? だとしたら、日本では食べるものに困らないはず。御殿場では、そろそろコシヒカリの新米も出回る頃だし、美味しい米を食べて帰ってほしいところである。
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