現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 移籍を決めたスーパーフォーミュラ王者、山本尚貴の転機『気付かせてくれたのはスーパーGTでした』

ここから本文です

移籍を決めたスーパーフォーミュラ王者、山本尚貴の転機『気付かせてくれたのはスーパーGTでした』

掲載 更新
移籍を決めたスーパーフォーミュラ王者、山本尚貴の転機『気付かせてくれたのはスーパーGTでした』

 東京オートサロン2019の会場で1月11日に発表されたホンダの体制発表。その中でもっとも話題を集めたカテゴリーは、やはり、ドラスティックな体制変更を行ったスーパーフォーミュラだった。2019年のホンダは、誰ひとりとして昨年と同じ環境を継続するドライバーはおらず、全員が新天地で新型車両SF19の導入初年度を戦うことになる。

 そのなかでも、とくに注目したいのは王者・山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の移籍だ。これについて山本は「昨年の夏前に僕自身で決めた」ことを明かした。

全チームでドライバー変更の大シャッフル。ホンダが2019年スーパーフォーミュラのラインアップを発表

「ここ数年、自分の課題として鈴鹿以外のレースで勝てない、夏場のレースで結果を残せないという悩みがあり、それを打開するためにも何かを変える必要性を感じていた。その結論が『新しい環境(チーム)に自分の身を投じること』でした」

「だからと言って、どのチームでもいいわけではなく、やはりプロのドライバーとしては速くて強いチームがいい。それがダンディライアン。もちろん野尻(智紀)選手のスピードがあってこそではありますが、予選であれだけの速さを見せられるのはドライバーにとって魅力的。だから、そこに僕が無限で学ばせてもらったノウハウをミックスさせることで、さらに速くて強いクルマに仕上げられるんじゃないかと」

 新たな環境に身を置くことは、たしかに可能性を広げることになる。しかし、それは同時に不安をともなうもののはず。とくに山本の場合、13年から組んでいる女房役・阿部和也エンジニアに全幅の信頼を寄せていることで知られている。その点はどう考えているのか。

「チーム無限や阿部さんと離れることに不安はあります。本音を言えば、不安な気持ちのほうが大きい。正直、阿部さん以外のエンジニアと組むなんて考えられないくらいで、だからこれまで長いあいだ一緒にやってきました。ただ、長年やっているからこそ、お互いに見えなくなる部分が出てきてしまうのも事実。それを気付かせてくれたのがスーパーGTでした」

「GT500では伊与木(仁)エンジニアと組んでいますが、阿部さん以外の人だからこそ見えるもの、自分を引き出してくれるものがあることを昨年あらためて痛感したんです。阿部さんとは13年と18年にタイトルを獲った。でも過去の栄光に浸っているだけだと、そこで成長は止まってしまう。より厳しい環境に身を置くことで生み出されるエネルギーもあるはずだし、常に挑戦者の気持ちを持ち続けたい」

「あ、くれぐれも阿部さんと喧嘩別れしたわけではないですからね(笑)。きちんと話し合って、お互いの将来を見据えたときに、いったん離れることがプラスになるとふたりとも納得できました。昨年の最終戦の後、阿部さんからは『尚貴と一緒にやれてよかった』と言ってもらえたし、その言葉は本当にドライバー冥利に尽きます」

「モータースポーツは機械を使った競技だけど、操っているのは人間同士。阿部さんをはじめ、チーム無限のスタッフとレースできたことは僕にとって一生の財産。だから、昨年の最終戦はどうしても勝ちたかったし、阿部さんやチームのみんなにタイトル獲得という結果でこれまでの感謝の気持ちを示したかった。いままでのレース人生のなかで、あれほど“自分以外のヒトのため”に走ったことはなかった」

 山本の移籍は自身がより速く、強くなるための決断だったということが分かった。同時に、この移籍の影響は“山本だけ”にとどまらない。

 山本と入れ替わるかたちでダンディライアンからTEAM MUGENへと移籍する野尻智紀は、これまで決勝でのロングランペースに課題を抱えてきた。これまで模索してきたその答えは、新天地であっさり見つけられるかもしれない。同様のことは他のドライバーにも当てはまり、結果的に山本の移籍はホンダ陣営全体の底上げにつながる可能性を秘めている。

 環境の変化と言えば、戦いの場を欧州から日本へ移す福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)にも注目したい。昨年、4戦に出場した福住は、今年、山本とともに無限からダンディライアンへと移籍する。スーパーフォーミュラ経験が少ない福住は、これまでの固定観念が少ないぶん山本以上に新たな環境に柔軟に対応できる可能性はある。

 スーパーフォーミュラとGT500に参戦する牧野は、14年の4輪レースデビュー以降、毎年、チームを移りさまざまなシリーズを戦ってきた。昨年はFIA‐F2で日本人初となるレース1優勝を果たしながらもシリーズランキングは13位に低迷した。心機一転、今年は国内で戦うことになったが、その胸中にはどのような思いがあるのか。

「もちろんヨーロッパでフォーミュラを走っていたかったという思いはありますが、いまはとにかく目の前のことに集中して結果を残したい。GT500も楽しみです。昨年末のセパンテストではさまざまなタイヤを試して本当に勉強になりました。今年は年間を通しての走行距離も多くなりますし、自分にとって知識やドライビングの引き出しを増やす1年にします。F1ですか? もちろんあきらめていません!」

 スーパーフォーミュラでの連覇に向けて王者・山本を軸に据えながら大胆な体制を敷いてきたホンダ陣営。この布陣がいったいどのように機能するのか、いまから開幕が待ち遠しい。

■オートスポーツ 1月18日発売 No.1498 ホンダ体制発表の狙いとリスク 東京オートサロン特集


関連タグ

こんな記事も読まれています

ついに[レガシィ]の名が消える…… 2025年春にメイン市場の北米で生産終了! でもアウトバックは生き残る!
ついに[レガシィ]の名が消える…… 2025年春にメイン市場の北米で生産終了! でもアウトバックは生き残る!
ベストカーWeb
「Appleのパクリ」はもはや過去! 中国シャオミ初EV「SU7」受注7万台突破と新経済圏ブチ上げ、米中貿易摩擦も何のその?
「Appleのパクリ」はもはや過去! 中国シャオミ初EV「SU7」受注7万台突破と新経済圏ブチ上げ、米中貿易摩擦も何のその?
Merkmal
アウトドアテイスト満点な新設[HuNT]がイカす!!! ホンダの中核コンパクトSUV[ヴェゼル]が満を持してマイチェン!
アウトドアテイスト満点な新設[HuNT]がイカす!!! ホンダの中核コンパクトSUV[ヴェゼル]が満を持してマイチェン!
ベストカーWeb
THE NORTH FACEを体現した一台! トリプルネームで開発されたトヨタ ランドクルーザープラドがベースのキャンパー
THE NORTH FACEを体現した一台! トリプルネームで開発されたトヨタ ランドクルーザープラドがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
走るファーストクラス【レクサス LM500h エグゼクティブ】
走るファーストクラス【レクサス LM500h エグゼクティブ】
グーネット
GAINER TANAX Zが岡山で待望のシェイクダウン。ドライバーふたりもポテンシャルに手ごたえ
GAINER TANAX Zが岡山で待望のシェイクダウン。ドライバーふたりもポテンシャルに手ごたえ
AUTOSPORT web
もう[ハリアー]超えやん!! 日本の[ヤリス]にも採用してよ!! 欧州仕様のエアコン機能が神すぎる
もう[ハリアー]超えやん!! 日本の[ヤリス]にも採用してよ!! 欧州仕様のエアコン機能が神すぎる
ベストカーWeb
中上貴晶が語るテストチームとのズレ。ホンダRC213Vの現状は「問題が多過ぎる。データ解析しても表れない」
中上貴晶が語るテストチームとのズレ。ホンダRC213Vの現状は「問題が多過ぎる。データ解析しても表れない」
AUTOSPORT web
いよいよランクル250の販売がスタート!どんなモデルがライバルになる?
いよいよランクル250の販売がスタート!どんなモデルがライバルになる?
グーネット
プリウスオーナーにおすすめ!鋭角のフロントガラスにフィットする内窓専用ワイパー カーメイト
プリウスオーナーにおすすめ!鋭角のフロントガラスにフィットする内窓専用ワイパー カーメイト
グーネット
ジープ 限定車「コマンダー オーバーランド」発売 ブラウン内装がプレミアムな室内空間を演出
ジープ 限定車「コマンダー オーバーランド」発売 ブラウン内装がプレミアムな室内空間を演出
グーネット
レンジローバーイヴォーク 2025年モデル受注開始!PHEV車を中心に価格を見直し
レンジローバーイヴォーク 2025年モデル受注開始!PHEV車を中心に価格を見直し
グーネット
ベテランだってチト怖い!? 鬼門!! [高速道路の合流]への恐怖心を払拭せよ!
ベテランだってチト怖い!? 鬼門!! [高速道路の合流]への恐怖心を払拭せよ!
ベストカーWeb
昭和世代じゃなくてもグッとくる!?  ちょい[イケてるクルマ]にまつわる言葉8選
昭和世代じゃなくてもグッとくる!?  ちょい[イケてるクルマ]にまつわる言葉8選
ベストカーWeb
新型エルグランド大胆妄想!! アルファードに勝つために必要な性能と価格とは?
新型エルグランド大胆妄想!! アルファードに勝つために必要な性能と価格とは?
ベストカーWeb
なぜ「SLS AMG」は比類なきスポーツカーだったのか? メルセデス・ベンツとAMGが注いだコスト度外視の革新的技術とは
なぜ「SLS AMG」は比類なきスポーツカーだったのか? メルセデス・ベンツとAMGが注いだコスト度外視の革新的技術とは
Auto Messe Web
MotoGPスペインGPプラクティス|王者バニャイヤ、レコード更新し初日最速。マルク・マルケス3番手
MotoGPスペインGPプラクティス|王者バニャイヤ、レコード更新し初日最速。マルク・マルケス3番手
motorsport.com 日本版
トヨタ・ランドクルーザーの中核モデル「250」シリーズが発売。特別仕様車のZX“First Edition”とVX“First Edition”も設定
トヨタ・ランドクルーザーの中核モデル「250」シリーズが発売。特別仕様車のZX“First Edition”とVX“First Edition”も設定
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村