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モーガン・プラス8に試乗 デビューから50年「完ぺきでない」という魅力

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モーガン・プラス8に試乗 デビューから50年「完ぺきでない」という魅力

もくじ

ー 50周年記念モデル 最後のBMW製V8エンジン
ー やはりクラシックモデル 高速ではヘルメット必須
ー 素晴らしいルックス 驚異のスペック
ー 驚きのグリップ・レベル 最後はドライバー次第
ー 欠点さえ魅力の1台 本物のブリティッシュ・ロードスター
ー 番外編:モーガンのいま

AUTOCARが望む、復活してほしい自動車メーカー(1) オースチン

50周年記念モデル 最後のBMW製V8エンジン

おそらく、新車のレビュー記事を専門にした自動車メディアにとっての最大の課題は、こうしたクルマは、苛立たしいほど完ぺきで、故障など滅多に起こさないために、辛辣な批評などしようがないことだろう。

だからこそ、明らかな欠陥を多く抱え、ひとつやふたつはそれなりの問題点も見つけることができるクルマのレビューは新鮮に感じられるのだ。

とは言うものの、もちろんモーガン・プラス8は新しいモデルなどではない。そして、今年で50周年となる区切りの年に、モーガンは現行モデルの生産を終えようとしている。

だが、その前にこれまでの50年を記念して、メカニカルコンポーネントはそのままに、ナンバープレートにちなんでMMC11として知られた、最も有名なオリジナルのプラス8を彷彿とさせる最後の50台を送り出すことにした。


お決まりのナンバリングに加えて、もともとスペアホイールがあった場所はドーム型のアルミニウム製カバーで覆われ、イエローに塗られた牽引フックと、オリジナルのプラス8に似せたデザインのホイール、ホワイトに縁どられた「キャノン」エグゾーストとブレーキキャリパーが備わる。インストゥルメントと内張も専用だ。

ボディカラーには2色が用意され、通常のソフトトップ・モデルにはグリーンが、写真のスピードスター・モデルはブルーとなる。

けれど、このクルマには秘密がある。つまり、現行プラス8が50年前と同じなのは、その名前だけであり、オリジナルモデルは、1968年以来パワートレインとしてきたローバーV8が潰えた2004年に、一旦その生涯を終えている。

いま目の前にあるのは、2012年に登場した、エアロ8にプラス8のレトロ風味のドレスアップをほどこしたモデルであり、このクルマは、航空機由来の接着とリベット接続によるアルミニウム製シャシーと、BMW製4.8ℓV8エンジンをベースとしている。

やはりクラシックモデル 高速ではヘルメット必須

もはやトネリコ材のフレームや、スライディングピラー式フロントサスペンションなどは採用しておらず、すべてがはるかに現代的に仕立てられている。オリジナルモデルとの関連性でいえば、あのポルシェ911のほうが、その繋がりが薄くなっていることを考えれば、もう誰もそんなことは気にしないのだろう。

プラス8はそれなりに古さを感じさせる。実際、そのデザインによるものか、時折、完全に時代遅れだと感じるほどだ。ドアハンドルはわたしの年老いたランドローバーと同じで、メーターも最初は問題ないが、スピードを出すと途端に読めなくなる。

キャビンはおそらく、より現代的な方法で作られたのだと思うが、路面のポットホールに出会うとまるでタルト菓子のように揺らめき、プラス8のハンドルは、中立付近から極端に敏感な反応を示す最近流行りのステアリングとはまったく違い、切り始めの反応がほとんどないことに驚かされる。

ブレーキもオーバーサーボ気味で、ものをしまい込む場所も、ラゲッジスペースすらない。現代的なBMWのステアリングコラムが場違いな印象を与え、もし、スピードスターで高速に乗るつもりなら、ドライバー自身が奇異な目で見られることになるだろう。まともであれば、お気に召さないかも知れないが、頭を守るためにヘルメットをかぶった方が良い。

素晴らしいルックス 驚異のスペック

もともと、クルマの見た目よりも、そのクルマがどんな風に走るかを重視しているほうだが、それでも、プラス8のルックスには目を見張らざるを得ない。ヴィンテージ・ホットロッドのように低く、ワイドに構えたボディは、何か純粋なドライビング体験を予感させ、現代のクルマよりも、より野性的で魅力にあふれる。

モーガンらしく、このクルマが現代のクルマのように完璧ではないことは分かっているが、それでもこのクルマを運転したくないとは思わない。

もちろん、目の前にあるモデルが、公称わずか1100kgの、4.8ℓV8のパワーをマニュアルギアボックス(オートマティックも選択できるが必要だろうか?)を介して、リアだけにその駆動力を伝達するスポーツカーだということも忘れることはできない。もしこれが新たなスポーツカーの企画として発表されたものであれば、全員が狂喜乱舞するようなスペックだ。


エアロ8の基本骨格がもたらした恩恵は小さくない。レーク・ディストリクト周辺で、最後にこのクルマをそれなりのペースで走らせたのは1989年だったが、約30年前の基準だったとしても、プラス8は「路面不整に出会うといきなり道路幅一杯に横っ飛び」したことを覚えている。

その乗り心地は「ゾッとするほど」であり、ステアリングは「ハンドルを握る手を振りほどくほどのキックバック」を返してきた。それに比べれば、今回のプラス8のシャシーはマクラーレンの洗練を身に着けたと言ってもいい。

驚きのグリップ・レベル 最後はドライバー次第

そして、最も重要な点は、このクルマにとって、数値は全く意味がないということだ。372psのパワーで、0-100km/h加速は4.5秒でこなすが、従順でゴロゴロとしたサウンドを奏でるエンジンと、スローだが素晴らしい出来の6速トランスミッションの組み合わせは、このクルマのキャラクターに完ぺきにマッチしている。そのパワーデリバリーは素晴らしい余裕を感じさせ、2000rpmからあふれ出すトルクによって、ギアチェンジは気の向くままだ。

このクルマのグリップ・レベルにも驚かされた。標準装備のLSDと、2016年にエアロ8に対して行われたサスペンション改良によって、コーナーでは断固として路面を掴んで放そうとしない。実際、限界はもっと低くても良いようにさえ思う。このクルマが一旦スライドをはじめれば、素早い対応が必要になるが、それもプラス8を運転する楽しさの一部だと思うからだ。


すべてがクルマ任せの多くの最近のモデルとは違い、モーガンではドライバーが最後の安全装置だ。インプットに対してステアリングがどれだけ反応するかを予測しながら、コーナーへの進入速度が高すぎないことを確認して、トルクとトラクションに任せてコーナーから飛び出す。

このクルマは基本的には安定志向であり、最初にアクションを起こしてから、最終的にコントロールを失うまでに、ややルーズなステアリングで正しい操舵を与える必要がある。

欠点さえ魅力の1台 本物のブリティッシュ・ロードスター

このクルマは、長所ではなく、不器用なところが魅力の1台であり、それが理解できなければ何の意味もない。

しかし、わたしがこの最後のプラス8で最も気に入っているのは、自分が何者かを知っているということだ。サーキットに君臨しようとしているわけではなく、毎日乗れるクルマだと主張している以上のものは何もない。素直で、基本に忠実な公道スポーツカーであり、本来の目的以外のことを望みさえしなければ、失望することもない。


つまり、このクルマが本来もつ価値さえ分かれば、所有する喜びは非常に大きいものがあるということだ。では、12万9000ポンド(1959万円)に見合う楽しみは味わえるだろうか?

ほかでは手に入れることができない、信頼性のある、本物の伝統的ブリティッシュ・ロードスターが欲しいひとびとにとって、プラス8は単にそう見えるだけでなく、さまざまな不器用さにもかかわらず、ただモーガンであることによって、実際にその期待に応えてくれる。

番外編:モーガンのいま

英国のモーガンのラインナップは、3ホイーラー、いわゆる「クラッシック」ラインと、エアロ8の3つに分けることができる。この分類に従えば、プラス8はエアロと基本骨格を共有してはいるが、「クラシック」に属するモデルとなる。

おそらく予想外だったと思うが、モーガンのベストセラーは3ホイーラーではなく、トネリコ材のフレームと、第一次世界大戦まで遡ることができるフロントサスペンションを積んだ究極のクラシックモデルだ。プラス8以外に、112psの1.6ℓエンジンを積んだ4/4、156psの2ℓエンジンを積んだプラス4と、3.7ℓ284psのV6ロードスターが存在する。

しかし、いま注目を集めているのは、長寿を誇ったBMW製N62型V8エンジンの供給終了によって、プラス8とともに、そのモデルライフを今年終えることになるエアロだろう。

そして、モーガンは次の一手については何も語ろうとはしないが、新たな名を与えられた新型モデルが、今年中には登場する予定だ。

もちろん、新型モデルも非常に伝統的なスタイルと見た目をもつクルマになるはずだ。当然ながら、モーガンは時代の先端に立とうなどとはしていない。エンジンはターボ付きとなる可能性がある一方で、クラシックラインにフォード製4気筒と6気筒エンジンが積まれていることを考えれば、マスタングの自然吸気V8が搭載される可能性も残っている。

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