2025年シーズンに向けたF1ドライバーマーケットの動きは既に本格化しているが、その“椅子取りゲーム”の音楽は間もなく止まり、シートを得られず立ちすくむドライバーが出てくることになるだろう。
来季に向けては、現在FIA F2を戦うオリバー・ベアマンとアンドレア・キミ・アントネッリのF1ステップアップが有力視されている。それはつまり、今季のF1レギュラードライバーの内少なくともふたりがシートを失うということを意味する。
■動き加速する2025年F1ドライバーラインアップ! ペレス&角田の残留決定で、次なる注目はサインツJrの去就とメルセデスの”残り1席”
今シーズンのストーブリーグは例年よりも早く始まった。年明けの段階でルイス・ハミルトンのフェラーリ移籍やランド・ノリスのマクラーレンとの契約延長が実現したことがその大きな要因と言える。現在、トップチームのシートはほぼ埋まっており、RBも首脳陣から角田裕毅、ダニエル・リカルドの現行ラインアップに満足しているとの声も聞かれる。ただその他の中団チームは未確定な部分が多い。
まずはフェラーリを離れるカルロス・サインツJr.がどこに行くのかが注目ポイントだ。アウディワークスチーム化が近いザウバーと契約する可能性が高いと言われていた一方で、ウイリアムズも彼の移籍先候補として取り沙汰されるようになった。
アルピーヌは先日、エステバン・オコンとの契約を今季限りで解消すると発表。そのオコンはハース入りの噂もあるが、一方でピエール・ガスリーはアルピーヌに残ると予想されている。
ザウバーのバルテリ・ボッタスと周冠宇も、来季の契約が決まっていないドライバーだ。ただザウバーにはニコ・ヒュルケンベルグが加入することが決まっており、残るシートは1席。そこにサインツJr.が収まる可能性が高いことを考えると、ふたり共チームには残らないかもしれない。ただボッタスに関しては、サインツJr.に席を奪われた場合の行き先がウイリアムズになるとも言われている。
ハースからはヒュルケンベルグが離脱するが、後任としてベアマンの昇格が濃厚。そこにオコンが加入する場合は、ケビン・マグヌッセンのシートが危うい。ウイリアムズはアレクサンダー・アルボンと契約を延長しており、もう1席にはサインツJr.やボッタスの名前が挙がっている。
これらの状況を考慮すると、周、マグヌッセン、そして現ウイリアムズのローガン・サージェントの3人が、特に来季のシートが危ぶまれている中団勢のドライバーと言える。
マクラーレン、ルノー、そしてハースを追われたことがある(※後にハースから復帰)31歳のマグヌッセンにとっては、こういった状況に不慣れなわけではない。そんな彼はハースに残留したいとの意思を明確に示していた。
マグヌッセンは次のように語った。
「チームは僕のことをよく知っている。だから僕の方で何か証明することはない」
「今回のドライバー市場はとても開かれているし、どうなるか分からない。僕はここでレースを続けたいという意思を明確にしてきたし、チームは良い位置にいて、僕もその一員でいたいんだ」
「それがどうなっていくかが分かるまで、どのくらいの時間がかかるかも分からないけど、その時が来るまで僕は走り続けるよ」
周にとって不幸なのは、自身のポテンシャルを示す機会が限られているということだ。ボッタスはメルセデスの黄金時代を経験してグランプリ通算10勝を記録しているが、現在のザウバーはポイント獲得すらままならない。
言うまでもなく、周は他チームから注目を集める存在となる必要があるが、本人もそのことでプレッシャーがかかっていることを自覚している。
「(重要なのは)1周(の速さ)なのかレース(ペース)グラフなのか、チームとのコミュニケーションの取り方なのか分からないけど……当然トップ10にもっと近付いて戦うことができればいいと思っている」
周はそう語った。
「でもまだチャンスは十分あると思っているし、レースもたくさん残っている。チームと共に良いリザルトを残せればいいね」
自身の将来について、彼はこう続けた。
「僕はオープンだ。あらゆるチームと将来について話をしている。決まったことは何もないけど、将来的にはグリッドに僕のポジションがあるはずだと感じている。でもそれがどこになるかは分からないね」
またウイリアムズ入りが取り沙汰されているボッタスは、移籍市場のスピードが早まっていることは懸念材料だと語り、それによって自身が早急な決断を下さなければいけない可能性があると認めた。
「自分の選択を早くする必要があると思う」とボッタス。
「もちろん何も決まっていないし、僕の方ではサインもしていないから、特に大きなニュースはないんだけど、今もあらゆる選択肢を見ているし、自分の所属チームがどこになるかについて出来るだけすぐに行動する必要がある」
「シートを得られる自信はあるけど、このスポーツでは確実なものはないし、サインするまで100%なんて存在しない。でも少なくとも今の状況を見る感じでは心配していない。とにかくこの数週間は興味深いものになるだろうね」
心配されるのはサージェントの去就。彼はウイリアムズから放出される可能性が高まっている。
カナダGPを前に自身の将来について質問されたサージェントは「必要なレベルまでパフォーマンスを発揮できるところまで来ている」と主張していた。ただそれは手遅れという可能性もあるが、それ以上に気がかりなのは、F1キャリアが終わりを迎えた場合の“プランB”を検討しているかについて尋ねられた際に「ノー」と答えたこと。彼にとってはそれを検討すべき段階まで来ているかもしれない。
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