実用性を求めるならシューティングブレーク
フェイスリフトを受けた、2代目メルセデス・ベンツCLA。ドライビングポジションは、人間工学的にも良好。腰を支える、ランバーサポートの位置も好ましい。
【画像】フェイスリフトで訴求力増強 メルセデス・ベンツCLA 競合サイズのモデル 親分のCLSも 全132枚
シフトレバーは、ステアリングコラムから伸びている。電子ハンドブレーキのスイッチはダッシュボード上にあるが、すぐに操作は慣れるだろう。
クーペ風で低めのルーフラインにもかかわらず、パノラミック・サンルーフが備わっていても、フロントシート側の空間は充分広い。190cm近く身長がある筆者も、快適に運転席へ座れる。
リアシート側は、流石に高さ方向で余裕がない。このクラスの平均でも狭いといえ、膝がフロントシートの背もたれに当たってしまう大人も多いのでは。
荷室は460Lと広々。実は、全長が約300mm長いレクサスESより広い。
実用性を求めるなら、シューティングブレークがある。荷室容量はトノカバー下で485Lあり、高さ方向にもゆとりが生まれる。ただし、テールゲートの開口部は広くなく、荷室の床面と段差もある。ホームセンターでの用足しに活躍するとは限らない。
パワートレインの洗練度は優秀
今回は、アップデートを受けたCLA 250eと一緒に220dへも試乗したが、どちらもパワートレインの洗練度は優秀。クルージングマナーは好ましく、動力性能は充分以上。扱いやすく、燃費効率にも優れるといっていい。
プラグイン・ハイブリッドの250eは、一般的な条件で56kmほど電気の力だけで走れる。都市部の流れに対応するほどパワフルで、80km/hまでの加速も許容する。
駆動用モーターは、デュアルクラッチ8速ATの手前側に備わり、走行中は変速もする。アクセルペダルを踏んでから、反応までに1~2秒ほどのタメが生じる。電気自動車のようには感じられないだろう。
1.3Lガソリン・ターボエンジンは、冷間時や高回転域で少しノイズが目立つ。ユニットとしてのマナーは、このクラスの平均レベル。それでも充分に温まれば、日常的な条件では静かに仕事をこなす。
路面が滑りやすい状況でアクセルペダルを踏み込むと、フロントタイヤのトラクションが足りなくなる場面がある様子。電子アシストが巧妙になだめるが、常に鋭いダッシュを披露するわけではない。
8速ATは滑らかに次のギアを選ぶが、マニュアルモードで変速を求めると、僅かに遅れる場面も。試乗した日は雨がちだったが、0-100km/h加速に約8秒を要した。カタログ値は7.5秒がうたわれている。
加速力で勝るディーゼル スポーティな走り
他方、CLA 220dの2.0Lディーゼル・ターボエンジンは、加速力で勝る。現実的な環境ではより鋭く、洗練され、トルクが太く扱いやすい。マイナス点といえば、アイドリングストップ機能の反応が、若干鈍いことくらいだろう。
操縦性は、メルセデス・ベンツが主張するとおり、なかなかスポーティ。姿勢制御は適度に引き締まり、シャシーバランスに優れ、高速域でも落ち着いている。リア・サスペンションがトーションビーム式になる、250eでも。
旋回時のロールや、加減速時のピッチを巧みに抑制。このクラスのサルーンやハッチバックとしては、軽快に回頭していく。ただし、太いトルクを一気に展開してしまうと、フロントタイヤが乱れてしまうが。
乗り心地は良好ながら、メルセデス・ベンツ特有といえる、ザラついたノイズが大きいかもしれない。試乗車は2台ともAMGライン・グレードで、ローダウン・スポーツサスに19インチのアルミホイールを履いていたことも、それを増長させていたようだ。
理想的な静けさより、1割ほど及ばないと思う。タイヤの空気圧が高すぎる状態のように。それでも不快なほどではなく、不満を抱くオーナーは限られるだろう。
車重が増えるCLA 250eでも、動的特性で足かせを実感することはなかった。リアがマルチリンク式の220dへ引けを取らず、操縦性は軽快で、衝撃吸収性もイイ。
フェイスリフトで訴求力向上 称賛の仕上がり
フェイスリフト後のCLAの英国価格は、スポーツ・エグゼクティブ・グレードで約3万5000ポンド(約647万円)から。Aクラスの同グレードと比較すると、約3000ポンド(約56万円)以上お高い。内容を考えると、少々そぐわない価格差かもしれない。
燃費は、空力特性に優れる滑らかなボディが貢献。CLA 220d シューティングブレークの場合、110km/hのクルージングで平均21.2km/Lに届く。250eでは、駆動用バッテリーの充電が切れても、同条件で17.5km/L程度が得られる。
2代目CLAは初代から確実に実力を高めていたが、フェイスリフトによって、訴求力は一層増したといえる。モダンなインテリアを備え、適度にスポーティで、積極的に運転したいと考えるドライバーの気持ちにも応えてくれる。
俯瞰すると、リアシートは狭く、実用性はほどほど。同クラスの中で、価格設定は強気でもある。しかし、動力性能に不満はなく、操縦性は正確で、乗り心地は上質。2代目の前期型から、高級感や洗練度も増している。
流麗なスタイリングに、惹かれる人も少なくないだろう。小さなメルセデス・ベンツとして、称賛できる仕上がりだと思う。
◯:魅力的なスタイリング スムーズで高効率なエンジン
△:子供向きの広さのリアシート 上級グレードほど強気の価格
メルセデス・ベンツCLA 250e AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)のスペック
英国価格:5万1130ポンド(約946万円)
全長:4688mm
全幅:1830mm
全高:1439mm
最高速度:228km/h
0-100km/h加速:7.6秒
燃費:90.9km/L
CO2排出量:23g/km
車両重量:1765kg
パワートレイン:直列4気筒1332cc ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:15.6kWh
最高出力:218ps(システム総合)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(前輪駆動)
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