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【運転をシンプルでスマートに】スズキ・アクロス(最終) 長期テスト 優秀なPHEV

掲載 更新 20
【運転をシンプルでスマートに】スズキ・アクロス(最終) 長期テスト 優秀なPHEV

積算1万8798km ステアリングホイールから異音

text:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)

【画像】トヨタRAV4のOEM 日本未導入のスズキ・アクロス 全74枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


スズキ・アクロスの、トヨタ水準の組み立て品質を疑うようなことが起きた。長期テストの開始から約半年が経つが、内装のどこからかカタカタと音がする。

ステアリングホイール中央のボス付近にある、何かの部品から擦れたような音が出ている様子。乗っているうちに緩みが出たのだろう。機能的な不具合はないものの、以前よりうるさいとは確実にいえる。

積算1万9551km 小物が滑り出るトレイ

スマートフォン以外にも小物を置くであろうダッシュボード下のトレイには、デザイン上のミスがある。トランスミッション・トンネルから滑らかに傾斜が続いていて、追い越し加速などの度にトレイのモノが滑り出てしまう。

わたしの場合はUSBケーブルで繋いでいるので、スマートフォンだけは落ちないのだが。

積算2万821km 日常的な利用を上手にこなす

この長期テストが始まる数ヶ月前、どんな内容になるのか想像でなかった。プラグイン・ハイブリッド(PHEV)に乗ることについてもそうだし、スズキ・アクロスに限らす、同価格帯のクロスオーバーに乗ることにいても。

すでに読者の中には、この手のモデルをご経験済みの人もいるだろう。長期テストは終了となるが、スズキ・アクロスは筆者を驚かせるクルマだった。

日常的な自動車利用を、とても上手にこなしてくれることに深く感心した。予想外といえるほどに。お別れが寂しい。

シンプルでスマートにしてくれる品質

乗り始めた頃は、認知度の低い300馬力のファミリー・クロスオーバーを運転するという、目新しさに気が奪われていた。バックミラー越しに観察してくるドライバーや、歩行者の反応を見るのは、面白いものだった。

青信号のダッシュでは、0-100km/h加速6.0秒の俊足も披露できる。周囲のドライバーは、一層興味を掻き立てられただろう。

EVモードにも夢中になった。1Lでもガソリン消費を少なくしようと、平均燃費を向上させる挑戦は面白い。実際、筆者は何度も試した。

少し時間が経過し、アクロスを広く理解できるようになると、全体の良さに気付かされた。クルマの利用をシンプルでスマートにしてくれる、品質が備わっている。乗り方が正解かどうか、気にする必要もない。

アクロスの実用性の高さは、暮らしの質も高めてくれる。使い勝手の良い荷室があり、装備も充実。一般的な給電ポートも付き、クルマで撮影機材の充電も可能だった。

筆者は以前にランドローバー・ディスカバリー・スポーツの長期テストを担当していたことがあるが、荷室の使い勝手では、アクロスの方が僅かに勝っているとすら感じる。

インテリアの見た目や質感は、特別でもないし魅力的とはいい難い。でも、機能的だ。

作り付けはしっかりしていて、ブラインドで操作できるスイッチ類も好感触。シートヒーターと熱線入りステアリングホイール、バックカメラがないクルマには、今後は躊躇してしまうだろう。

内装の耐久性も悪くない。ダッシュボード下のトレイなど、不満はなくもないが、居心地は良い。長旅でも疲労は感じにくく、運転の安楽さも実感した。

感心したバッテリー残量の管理方法

スズキ・アクロスで強く印象付けられたのが、バッテリー残量の管理方法。常に鋭い反応を引き出すのに、不足ない電気を残してくれる。バッテリー残量が0の表示状態でも、駆動用モーターだけで駐車もできる。

最新のPHEVで、すべてが同等の管理を実現できているわけではない。同時に、アクロスほどの加速力を備えているわけでもない。扱いやすいパフォーマンスと運転のしやすさは、クルマにとって素晴らしい強みだといえる。

筆者は常に沢山の撮影機材を積んで走っていたから、洗練性は判断しにくい。荷室からは常時、いろいろな荷物が出す音が聞こえていた。そこで最後に機材をすべて降ろし、シートをフラットにして走らせてみた。

ホイールハウス付近から、サスペンション・ノイズが出ている。プレミアム志向のSUVよりボリュームは大きい。リアシートの背もたれの位置でも、違いは生まれるようだ。だが、乗り心地は充分に良いといえるものだった。

スズキ・アクロスの英国価格は、4万7000ポンド(714万円)。その価格に見合うカリスマ性や、欲しいと思わせるような強い特徴は欠けているように思うが、かといって体験を霞ませるほどではないだろう。

アイコン的なスタイリングではない。でも、オーナーの多くはアクロスを強く気に入っているはず。

電動化時代にオススメできる優れたモデル

筆者の住環境には充電ポートがなく、PHEVユーザーとしてベストではなかった。結果的に駆動用バッテリーをケーブルで充電したのは数度のみ。それでも、1万6000km以上走った平均燃費は、15.9km/Lと良好だった。

同僚に話を聞くと、競合モデルのPHEVと比較しても3割ほどは好燃費だという。

好むと好まざるとに関わらず、電動化技術の進展は止まらない。結論としてスズキ・アクロスは、そんな潮流にピッタリの優れたモデルといえそうだ。

セカンドオピニオン

AUTOCARでは、スズキ・アクロスの詳細テストを行った。本当に、強い感銘を与えたクルマだった。PHEVは増えつつあるが、アクロスのように扱いやすい動的特性を備えたモデルは非常に少ない。

駐車エリアにコンセントがなければ、充電はできない。それでも、普通に乗っているだけで完成度の高さを実感できる。 Matt Saunders(マット・ソーンダース)

テストデータ

気に入っているトコロ

楽しさ:かなり速く、操縦性も中型SUVとしては優秀。オフロードにも対応できる。
経済性:バッテリーが満充電で気候が良ければ、駆動用モーターで72km走れる。平均で15.9km/Lの燃費も得られる。
実用性:ハイブリッド・システムが荷室や乗員空間を削っていない。運転もしやすい。

気に入らないトコロ

ビープ音:システムがオンのまま、荷室から荷物を出し入れしているときなど、止まらない警告音がうるさい。
フォント:モニターなどに表示される文字のフォントに統一性がない。高級感あるインテリアなら、気づかわれている部分だ。

走行距離

テスト開始時積算距離:4575km
テスト終了時積算距離:2万821km

価格

モデル名:スズキ・アクロス 2.5 PHEV E-FOUR E-CVT(英国仕様)
開始時の価格:4万5599ポンド(693万円)
現行の価格:4万5599ポンド(693万円)
テスト車の価格:4万5849ポンド(696万円)

オプション装備

7ピン・タイプ2充電ケーブル:250ポンド(3万8000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:100.0km/L
タンク容量:55L
バッテリー容量:18.1kWh
平均燃費:15.5km/L
最高燃費:22.8km/L
最低燃費:13.5km/L
航続可能距離:920km

主要諸元

0-100km/h加速:6.0秒
最高速度:180km/h
エンジン:直列4気筒2487cc自然吸気+ツイン電気モーター
最高出力:306ps/6000rpm(システム総合)
最大トルク:−
トランスミッション:e-CVT
トランク容量:490-1168L
ホイールサイズ:19インチ7.5J
タイヤ:235/55 R19 ヨコハマ・ブルーアース
車両重量:1865kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:625ポンド(9万5000円/1か月)
CO2 排出量:22g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:1358.5ポンド(20万6000円/ガソリン)
燃料含めたランニングコスト:1358.5ポンド(20万6000円)
1マイル当りコスト:0.13ポンド(20円)
不具合:なし

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