9月9日、静岡県の富士スピードウェイで開幕した2022年WEC世界耐久選手権第5戦『富士6時間レース』。日本初登場となるトヨタのGR010ハイブリッド、そしてプジョー9X8といったマシンを中心に、技術的な見どころも多い一戦となっています。
そんなイベントを、メカ好きライターの世良耕太氏が逃すはずがありません。コロナ禍によりここ3年はル・マン取材からも遠ざかっている世良氏は、このイベントを待ちに待っていたひとり。編集部ではそんな世良氏を走行前日・木曜日のピットロードへと“派遣”しました。そこで自由に集めてもらったネタを提供いただいたところ……“獲れ(撮れ)高”が多すぎて急きょ2回に分けて掲載することに。
トヨタ、チームオーダーは「状況に応じて」/富士“皆勤賞”はふたりetc.【WEC富士木曜Topics】
まずは第1弾、皆さんも大いに気になっているであろう、プジョー9X8のディテールを中心にお届けします。
* * * * * *
3年ぶりのWEC富士です。木曜日は雨予報だったのにいい方向に外れ、まったく期待していなかったのに、富士山をくっきり望むことができました。「富士山を見られたので、今回の日本滞在はこれで満足」と、フランスからやってきたFIAの担当者は言っていましたが、いやいや、まだ何も始まってませんて……。
さっそく(といっても14時頃ですが)、ピットレーンを歩いてみます。LMP2にタイヤを供給するグッドイヤー(Goodyear)のロゴが目立ちますね。3年前はどうだったかな?
この時間帯、散発的にピットでタイヤ交換の練習が始まるのですが、クルマに近づいてジロジロ見ていると、「危ないから、そのラインまで下がって」とメカニックさんに言われることがあります。「そのライン」がグッドイヤーのラインです。
みなさん(筆者も、ですが)のお目当ては日本初上陸(というか参戦まだ2戦目)のプジョー9X8とみえて、プジョーのピット前だけ人口密度が高い(笑)。
さっそくガレージを覗き込んでみますが、おしゃれな空間ですね。カラーコーディネートが行き届いています。フロントバルクヘッドが開けっぴろげで“臓物”が見えていますが、これについては次の記事でじっくり観察します。
ウインドスクリーンにムース(クリーナー)を塗って、ワイパーの払拭具合を確かめているようでした。フリープラクティスが予定されている金曜日は雨予報でしたから。
で、捨てバイザーならぬテアオフ(tear-off)の引きはがしタグ部分を注視してみると、「///4」と記してあります。4枚貼ってあることを示していますが、「///」はプジョーの市販車にも採用されているヘッドライトのシグネチャー(ライオンが鋭い爪で引っかいた痕をイメージ)と呼応しています。こういう遊び心、好きです。
前から失礼します。プジョーは2021年にライオンのエンブレムを一新し、全身をかたどった形状から、たてがみをなびかせる横顔に変わりました。市販車では、今年国内に導入された新型プジョー308が新しいエンブレムを採用しています。ブランドを問わず、エンブレムの裏にミリ波レーダーを隠すのが定番なのですが、以前のエンブレムでは隠すのが難しかったため、紋章型の大きなエンブレムに切り換えたとの説があります。
9X8、エンブレム部分も光ります。そして、奥に空気が抜けるような構造になっています。気になるのは、空力デバイスであるスプリッターの形状・構造ですよね。
角度調節機構が確認できます。六角穴部分をプラス側に回すと、奥にチラッと見える上下方向のロッドが動いてフラップが立ち、マイナス側に回すと寝るのでしょうか。
サイドポッド側面にもライオンのエンブレムがあります。黒く塗りつぶされているので分かりづらいのですが、エンブレムの上方にルーバーが切ってあります。
斜め後方から覗き込んでみると、熱交換器らしきものが確認できます。インタークーラーでしょうか。9X8は2.6L・V6ツインターボエンジンを積んでいます。サイドポッド側方を流れる空気で、冷却後の空気を引き抜く狙いでしょうか。
ルーフ後端にちょこんと載っている白い物体、これ、テレメトリーのアンテナです。FIAの指定により、カテゴリーを問わずWECに出走するすべての車両がこのマレリ製のアンテナを搭載しています。台座部分は(空力的な効果を考え)チームが独自にデザイン。
例えば、LMGTEプロカテゴリーのシボレー・コルベットC8.Rはルーフに埋め込むように搭載しています(プロトタイプは台座に載せるのが一般的)。
そういえば、ミッドシップのコルベットC8.RもWEC富士初登場ですね。全体像は下の写真で確認していただくとして、前端にあるピトー管を見てみましょう。ボンネットフードの傾斜に沿って空気が流れるので、この角度で正面から風を受けることができるのでしょう。
次回につづきます。
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