2024年シーズンのF1は、前年王者であるレッドブルの優位性が崩れ、最終戦までコンストラクターズ選手権のタイトル争いが繰り広げられる1年となった。シーズン中は7人の勝者が生まれ、上位勢にはどのチームにも優勝のチャンスがあった一方、中団チームは数少ない入賞のチャンスを確実にものにしなければならず最終戦まで熾烈な争いが続いた。
そんな2024年シーズンに開発されたF1マシンを振り返るこの企画では、今回はコンストラクターズ選手権4位のメルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チームの『W15』を取り上げる。
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■W15/メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム
リヤサスペンションをプルロッド方式からプッシュロッド方式に変更した2024年のメルセデス。2023年前半までのゼロポッドというコンセプトを2023年シーズン中に捨て、2024年は新しいリヤサスペンションとともにシーズンを開始した。
メルセデスの新車W15で特徴的なデザインだったのが、ユニークなフロントウイング。アッパーフラップの一番の上のフラップとノーズコーンの接合部分がカーボンファイバーではなく、細長い金属製のパーツとなっている。しかし、これがW15の根本的なバランス問題を発生させてしまう。奇抜なフロントウイングは高速走行時にはグランドエフェクト効果を発揮してフロントのグリップが増すのだが、低速域のコーナーでは逆にアンダーステア傾向になるという悪癖を抱えていた。
第6戦マイアミGPに続いて、第7戦エミリア・ロマーニャGPでもアップデートを投入したものの、このアップデートはフロアの改良が主で、フロントウイングが抱えていた問題を改善できていなかった(写真上がオーストラリアGPのフロアで、下がエミリア・ロマーニャGPのフロア。フロアエッジなどに変更が加えられているのがわかる)。
エミリア・ロマーニャGPではリヤウイングも新しくした。それまでの利益ウイング(写真上/オーストラリアGPのもの)は、ビームウイングが2枚だったが、エミリア・ロマーニャGPからは大きめのビームウイング1枚と、その斜め前方にロワーウイングを1枚追加した。これはアルピ―ヌのアップデートと真逆の進化の仕方で興味深かった。
シーズン序盤に採用した奇抜なフロントウイングには、低速域でアンダーステア傾向になるという悪癖があったため、低速コーナーが多い第8戦モナコGPでメルセデスはついに奇抜なフロントウイングの使用をあきらめ、通常のアッパーフラップを持つオーソドックスタイプに変更してきた。モナコGPではまずジョージ・ラッセルだけが採用し、続くカナダGPで2台そろって、新しいフロントウイングで戦った。
マイアミGP&エミリア・ロマーニャGPのアップデートと、モナコGPから投入した新しいフロントウイングの効果もあって、第11戦オーストリアGPと第12戦イギリスGPで2連勝したメルセデスは、ベルギーGPに新しいフロアを投入する(写真)。しかし、この新フロアが想定していたとおり機能していないことが判明。夏休み開け初戦のオランダGPでも同様の問題に見舞われたメルセデスは、続く第16戦イタリアGPでは新旧フロアを比較テスト。第17戦アゼルバイジャンGPでは旧スペックを使うなど、フロアのアップデートに関して失敗を犯してしまう。
第19戦アメリカGPでフロアをアップデート。フロア入口にある小さなフェンスのデザインが開幕戦から使用していたものと近いタイプにモディファイされた(写真下の赤矢印)。さらにサイドポンツーンのインテーク部分がマクラーレンを思わせるデザインに変更された。
しかし、そのアメリカGPでは予選でラッセルがクラッシュ。ラッセルは続く第20戦メキシコシティGPでもクラッシュ(写真)し、アメリカGPに投入したアップデートを活かしきれない。またこのクラッシュにより、シーズン終盤に投入を予定していたアップデートもコストキャップの問題から断念。2023年のコンストラクターズ選手権2位から2024年は4位に後退してしまった。
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