F1での優勝経験を持ち、日本のモータースポーツシーンでも大活躍を演じたヘイキ・コバライネンが、新たにJBXEと契約。今季で創設3年目を迎えるワンメイクの電動オフロード選手権『エクストリームE』にて、同じ北欧ノルウェー出身のヘッダ・ホサスとペアを組み、この週末に開幕を控えた“シーズン3”より電撃参戦することが発表された。
また、ルイス・ハミルトン率いるX44ビーダ・カーボン・レーシングは新体制移行に伴い、これまでレギュラーを務めたWRC世界ラリー選手権“9冠”のレジェンド、セバスチャン・ローブに代わり、ジャマイカ出身の新鋭フレイザー・マッコーネルを起用。そしてシリーズのリザーブドライバー的役割も担う“チャンピオンシップ・ドライバー”には、新たにアンドレアス・バッケルドとタマラ・モリナーロの就任がアナウンスされている。
エクストローム復帰にシャイダー参戦、さらにニューフェイスも。各陣営の体制が確定/エクストリームE
昨季2022年のシーズン2でランキング9位に終わり、初年度には“チーム代表”のジェンソン・バトン自らがステアリングも握ったJBXEは、この2年間で落ち込んだポジションの立て直しと同時に、入れ替わりの激しかったドライバー陣容を「安定的なものにしたかった」との希望を明かした。
「僕らの新しい男性ドライバーとしてヘイキを発表できること、そしてヘッダがチームに加入してくれたことを喜んでいる! モータースポーツの世界で確立された彼らのようなビッグネームを持ち込めたこと、そして僕自身、F1時代に一緒にレースをした喜びを共有する誰かを伴えることは、チームにとって素晴らしいことさ」と語ったJBXEオーナーのバトン。
「スーパーGTでの旅を終え、彼がラリーの世界に足を踏み入れた後、チームが彼にアプローチすることは非常に簡単だった。ヘイキがチームへの参加を同意してくれたことにとても感謝している。そして同様に、コクピットで大きな進歩を続けているヘッダを獲得できたこともうれしく思う。彼女は完全に、彼女の地位に値する存在だからね!」
当時はマクラーレンに所属し、2008年のF1ハンガリーGPで初優勝を飾ったコバライネンは、このキャリア唯一の勝利で史上100人目のグランプリウイナーとしてF1史に名を刻んだのち、2015年に来日してスーパーGT GT500クラスに参戦。翌年にはチャンピオンを獲得すると、F1前夜の2006年にマーカス・グロンホルムとともに国別対抗ネイションズカップを制したRoC(レース・オブ・チャンピオンズ)の記憶が蘇ったか、JRC全日本ラリー選手権にも挑戦を開始した。
ここでも持ち前のセンスを披露した現代の“フライング・フィン”は、2021年に全戦制覇という圧巻の戦績でJN2クラス・チャンピオンを獲得すると、翌年には最高峰のJN1で旧型シュコダ・ファビアをドライブし、そのまま2年連続でシリーズを制覇。総合での“全日本王者”に輝くとともに、シーズン終盤にはWRC世界ラリー選手権に復帰した『ラリージャパン』で念願のWRCデビューを果たし、クラス4位、総合でもトップ10に喰い込むなど鮮烈な印象を残した。
■新たな挑戦への期待を語るコバライネン
「サウジアラビアでJBXEに参加できることを本当に楽しみにしている。素晴らしいチームとドライバーによるチャンピオンシップだし、彼らと競争することも本当に楽しみだ!」と、新たな世界への期待を語るコバライネン。
「それは僕のキャリアのなかでもまた新しいものになる。F1でのスティントの後、日本のGTといくつかのラリーを戦ってきた。つねに新しいチャレンジを探しており、今回これを試してみるのを楽しみにしているんだ。間違いなく急な学習曲線になるだろうが、僕はそれを受け入れる準備ができている。うまくいけば、僕らはすぐにスピードを上げられるだろう!」
一方、現在もヴェローチェ・レーシング配下の開発ドライバーであるホサスは、昨季のサウジアラビア・ネオムでケビン・ハンセンと組み、デビュー戦で表彰台を獲得するなどシリーズでの存在感を増している。
「JBXEで2シーズン目もふたたびドライブできるのが本当に楽しみ。元F1ドライバーであるジェンソンとヘイキのふたりのサポートと専門知識を得ることは、ドライバーとしての私の成長と開発を継続するのに大きく役立つはずよ」と、頼もしい先輩の存在を挙げた22歳のホサス。
「ネオムは昨年リザーブドライバーとして参加したとき、私にとってシリーズでの初めてのレースになった。その最初の場所に戻ることに非常に興奮しているし、新しいチームメイトのヘイキと一緒に仕事ができることも楽しみ。彼はF1からラリーまで多くの経験を積んでいるし、エクストリームEにもすぐに適応できると確信しているわ」
そのコバライネンにとって、F1時代のチームメイトでもあった“セブン・タイムス・チャンピオン”ことハミルトン率いるX44は、自身が主催する慈善事業やイギリス王立工学アカデミーとの連携をさらに強化し、このスポーツ内での障壁を打破し、より多様で包括的な環境を作り出すことに新たな焦点を当てるという。
「僕のチームがこれまで取り組んできた素晴らしい仕事を誇りに思っている。今年、次のレベルに進むのが待ち切れないね」と語った“サー”ハミルトン。
「ハミルトン・コミッションの調査結果から、モータースポーツ業界は非常に参入しにくい場所であることがわかっている。だからこそX44ビーダ・カーボン・レーシングが、次世代に機会を提供する強力なプラットフォームになることを願っているし、それはかつてないほど重要になっている」
「僕らは業界としてスポーツを前進させるために真の行動を起こし、チームの新しい方向性は、その真の変化を実現するために僕が取り組んでいる方法のひとつなんだ」
そこでX44は、今季よりイギリスの名門カーリンと提携。新たな代表にステファニー・カーリンを迎え入れ、スペイン出身の王者クリスティーナ・グティエレスのペアとして、ラリークロス界の若手有望株を起用する。
■「チャンピオンシップドライバーの電話をもらって興奮した」とバッケルド
「こうしてチャンピオンシップを獲得したチームの一員になれたことを光栄に思う。昨季のクリスティーナのパフォーマンスにとても感銘を受けたし、彼女と一緒にドライブするのが待ち切れない」と、2019年のARXアメリカズ・ラリークロス王者であり、現在も北米の『ナイトロ・ラリークロス(ナイトロRX)』で勝利を重ねる24歳のマッコーネル。
「彼女のこれまでの経験から多くのことを学びたいと思っているし、世界チャンピオンと一緒にレースをすることは、決して悪いことではないよね(笑)。それにこのプラットフォームを利用して、世界をより良い場所にするチームの一員になることも楽しみだ。スポーツをより包括的にし、若い才能にチャンスを与えようとするルイスの献身をいつも尊敬しているし、彼と一緒にその旅に参加できたことを光栄に思っている」
そのマッコーネルと今もライバルとして戦うアンドレアス・バッケルドは、昨季はエキサイト・エナジー・レーシングでティモ・シャイダーとともに2位表彰台を獲得したタマラ・モリナーロと協業し、各週末でのレースコースのテストと最終決定を支援する、シリーズのメンター的な役割を果たす。
「チャンピオンシップドライバーの電話をもらって興奮したよ」と、ラリークロス界の盟主としてユーロRXを3度制覇し、2020年のフランスでは電動SUVの『オデッセイ21』をテストした経験を持つバッケルド。
「以前にもマシンをテストしたことがあるが、レースに来て、そのクレイジーさを目の当たりにして圧倒された。これまでのモータースポーツで経験したことのないようなモノで『スゴいことになった』と思ったよ(笑)。あいにく砂の上でレースをしたことがないから、コースは僕にとって非常に異なっている。グラベルではなく、海のそばのビーチや砂漠でレースをするのは、まったく違う話なんだ」と続けたバッケルド。
「コースにはいくつかの複雑な機能があり、ドライバーは賢く、ソフトな砂によってかなり轍(わだち)が掘られる可能性があるし、いくつかのタイトなターンとゲートは『全速力で走りたい』という欲求を管理する必要もあるね。新しいコンチネンタルタイヤは非常に優れたサイドサポートを備えているが、ドライバーがリスクを冒しすぎると、ロールオーバーが発生する可能性もあるからね」と、早くも職務に忠実な姿勢を見せる。
「その点で、シリーズ経験豊富なタマラと一緒に仕事ができることも素晴らしいこと。僕は彼女から多くを学んでおり、パドックでは誰もが僕を心から歓迎してくれた。開幕戦ですべてが明らかになるのが本当に楽しみだよ」
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