1月12日、元日にスタートした『第45回ダカールラリー2023』は後半戦に入った。首都リヤドでの休息日で車両を完全に整備し直し、クルーも英気を養ったあと、ラリーはいよいよ、エンプティ・クォーター「空白地帯」と呼ばれるサウジアラビア南東部のルブアルハリ砂漠を舞台とするマラソン・ステージに突入した。
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)から参戦している3台のGRダカールハイラックスT1+は、マラソン・ステージ1日目となったステージ11を終えた時点で、ディフェンディングチャンピオンのナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組が総合2番手に1時間20分ほどの大差をつけての総合首位を堅持している。チームメイトのヘンク・ラテガン/ブレット・カミングス組はライバルと僅差で表彰台を争う総合4番手、、ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ組も総合5番手につけている。
ローブ、5ステージ連続優勝で総合2番手浮上。二輪ではプライスが首位に立つ/ダカールラリー12日目
休息日後に行われた3ステージの各日レポートは以下のとおりだ。
【ステージ9】
1月10日(火)のステージ9は、休息日を過ごしたサウジアラビアの首都リヤドからハラドへ向かうSS距離358km、総走行距離686kmで争われました。
アル-アティヤ/ボーメル組とド・ヴィリエール/マーフィ組は順調でしたが、総合2位につけていたラテガン/カミングス組にとっては厳しいステージとなってしまいました。
この日4番手でスタートしたラテガン/カミングス組は、スタートしてわずか18kmの地点で、砂丘を飛び越えた時に激しく着地し、燃料を大量に積んでいて車両が重かったこともあり、左リアダンパーを破損。通常であれば、後続の車両からのサポートを待つところでしたが、同じGRダカールハイラックスT1+で参戦するプライベーターのヤジード・アルラジ/ダーク・フォン・チッツェビッツ組からの協力を得ることになりました。
今大会の前半戦で一時総合3位と上位を争いながらも、ステージ6でホイールハブを破損し、事実上の上位争いから脱落することとなったアルラジ/チッツェビッツ組は、ここでラテガン/カミングス組に自らの車両のダンパーを提供。交換作業に50分近くを要したものの、ラテガン/カミングス組はその後ペースを取り戻し、63位でステージ9をフィニッシュ。総合順位では2位から4位へと後退しましたが、総合3位の車両とはわずか3分ほどの差となっています。
前半戦、タイヤのパンクに苦しんだド・ヴィリエール/マーフィ組は、砂が増えてきたこのステージ9でクリーンな走りを見せ、トップと8分55秒差のステージ7位でフィニッシュ。総合順位は5位をキープしています。
総合首位のアル-アティヤ/ボーメル組は、2番手スタートの予定でしたが先行予定の車両がスタート時間に間に合わなかったため、先頭スタートでコースを切り拓いていく役割となりました。しかし、アル-アティヤ/ボーメル組は渡河などもあったこのステージで、慎重かつリズムに乗った走りを見せ、ド・ヴィリエール/マーフィ組よりわずか3秒遅れのステージ8位でフィニッシュし、総合首位を守りました。
総合2位につけていたラテガン/カミングス組が順位を落としたことで、プライベーターとしてGRダカールハイラックスT1+で出場しているルーカス・モラエス/ティモ・ゴットシャルク組が2位へ浮上。ダカールラリー初挑戦のブラジル人ドライバーのモラエスは、経験豊富なコ・ドライバーとのコンビで素晴らしい走りを見せています。
【ステージ10】
1月11日(水)のステージ10は、いよいよ大会の山場となる「エンプティ・クォーター」の砂漠地帯へ入りました。ハラドからシェイバーまで、総走行距離は624km。翌日からのマラソン・ステージへ向けた足慣らしとも言えるステージのはずでしたが、SS区間は114kmと短いながらも、最速車両ですら1時間48分もかかるという、参加者を苦しめる難ステージとなりました。
アル-アティヤ/ボーメル組はこの難ステージもトラブルなく乗り切り、首位から5分45秒遅れのステージ4位でフィニッシュ。総合首位の座を守りました。
チームメイトのド・ヴィリエール/マーフィ組は、アル-アティヤ/ボーメル組がトラブルに見舞われた場合に備え、すぐ後方で伴走する体制を取りました。ステージ序盤にアル-アティヤ/ボーメル組を先行させると、その後は追走を続ける形となりましたが、首位から12分24秒遅れの22位でフィニッシュ。総合では後続との差を広げながら5位の座を守っています。
ステージ9でポジションを落としたラテガン/カミングス組にとっては追い上げのチャンスとなるはずだったステージ10ですが、予想以上に難しいコースに苦しむこととなり、それでも首位から7分59秒遅れの9位でフィニッシュ。総合4位を守りました。
前日総合2位へと浮上した、プライベーターとしてGRダカールハイラックスT1+を駆るモラエス/ゴットシャルク組はこの日も首位から15分49秒遅れの3位フィニッシュと好走を見せ、アル-アティヤ/ボーメル組に次ぐ総合2位をキープしています。
【ステージ11】
1月12日(木)のステージ11では、「エンプティ・クォーター」と呼ばれる砂漠地帯でのマラソン・ステージ初日を迎えました。シェイバーのビバークから砂漠地帯のリモートビバークへと向かう、総走行距離は427km、SS距離は274kmで争われ、ステージ終了後はサービスクルーのいないビバークで一夜を過ごすこととなります。
このため、続くステージ12へ向けた整備や修理はドライバーとコ・ドライバー自身で行わなくてはなりません。しかし、TGRの3台はこのステージを揃ってクリーンに走り抜いたと報告。チームは安堵に包まれました。
このステージでチーム最速だったのは、アル-アティヤ/ボーメル組で、首位から6分42秒遅れのステージ5位。ステージ11を終えた時点で、総合では2位に1時間21分04秒差をつけて首位を守っています。
ラテガン/カミングス組も好調な走りで、アル-アティヤ/ボーメル組に次ぐステージ6番手でフィニッシュし、総合4位。ド・ヴィリエール/マーフィ組もトップから10分04秒遅れのステージ9位で、総合5位をキープしています。
TGRの3台のGRダカールハイラックスT1+は、大きなトラブルに見舞われることなくこれまでに7000km以上を走破してきました。搭載されている新型ランドクルーザー300譲りの3.5リッターV6ツインターボエンジンは、過酷な地形やコンディション下でも確かな信頼性を示し、トヨタ車のDNAともいえる品質、信頼性と耐久性を証明しています。
マラソン・ステージの2日目となるステージ12は、「エンプティ・クォーター」で185kmのSSを戦った後、シェイバーへと戻ります。そして、ラリーはサウジアラビア東岸を北上する形でアル=フフーフを経て、1月15日(日)にダンマームでフィニッシュを迎えます。
■ダカールラリー2023 ステージ11 終了時点の総合結果
Pos.Driver&Co-DriverCarGap総合首位#200 ナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメルGRダカールハイラックスT1+-総合4番手#217 ヘンク・ラテガン/ブレット・カミングスGRダカールハイラックスT1+1h49'17総合5番手#205 ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィGRダカールハイラックスT1+2h14'18
■ステージ11終了時のコメント
●チーム代表 グリン・ホール
「3台揃ってマラソン・ステージ前半をノートラブルで走り抜いてくれたというのは、とても素晴らしいニュースだ。本当にこのステージが心配だったからね。ナッサーは充分なリードで首位を守り、ヘンクとジニエルも着実な走りでそれぞれの総合順位をキープしている。次のステージ12を終えれば、ここシェイバーのビバークで彼らとまた合流できる」
●ナッサー・アル-アティヤ(No.200)
「すべてが予定どおりとなったステージだった。後続とのマージンが充分にあるので、プッシュする必要はなかった。今日の最大の目標は、明日へ向けて完璧なコンディションを保ったままゴールすることで、それは達成できた」
●ジニエル・ド・ヴィリエール(No.205)
「今日のステージでは幾つか油断できない砂丘越えもあった、全体的には順調な一日でした。ミスを犯さない、クリーンな走行を心掛けて走ってきましたし、トラブルなくリモートビバークに戻れて満足している」
●ヘンク・ラテガン(No.217)
「難しい砂丘越えが多く、今日は無理をせずに走りました。砂丘の走り方についてはまだ学ぶところがある。ここ数日、我々にとってとても難しいステージが続いているが、明日以降も難しいコースが待っていると思う。経験を積むため、気負うことなく、とにかく走り続けるよ」
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