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イニシャルセッティングのパフォーマンス不足に苦しんだ佐藤琢磨。後半戦の巻き返しに手応えを掴む

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イニシャルセッティングのパフォーマンス不足に苦しんだ佐藤琢磨。後半戦の巻き返しに手応えを掴む

 2021年シーズンはすでに後半戦に入っている。17戦の予定がトロントのキャンセルで16戦に減り、先日行われたロードアメリカが第9戦目で、残るは7戦だ。

 ポイントランキングトップは24歳のアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)で、2番手は21歳のパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)。

残り2周のオーバーテイクショーで8位の琢磨「イエローコーションも味方し、良い作戦を立ててくれた」

 どちらも今シーズン最多の2勝を挙げている。開幕から7戦で7人のウイナーが誕生し、そのうちの4人がキャリア初優勝だった。すでに9レースも行われたというのに、チャンピオンシップをリードしているのが25歳以下のドライバーふたりなのだから、アメリカで”いよいよインディカーも世代交代か”との声が上がるのも当然だ。

 ランキング6番手には20歳のリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、7番手には第2戦セント・ピーターズバーグでキャリア4勝を挙げたコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)もいる。彼も22歳の若さだ。

 上記のドライバーたちが才能に恵まれていることに疑いの余地はないが、それ以上に出場チーム全体のレベルアップ、実力拮抗がインディカー・シリーズの混戦ぶりに拍車がかけられている。

 表彰台には第9戦までで13人が上り、そうできていないのはAJフォイト・エンタープライゼスとカーリンの2チームだけ。出場チームの実力伯仲ぶりは、史上最強のチーム・ペンスキーが9レースを戦ってもまだ1勝も挙げられていない点にも明らかだ。

 インディカー12シーズン目の佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング=RLL)、ここまでのハイライトはインディ500だった。


 予選15番手、決勝14位と結果だけを見れば芳しくはないが、レース序盤にしてトップ10入りを果たし、最終スティントでの優勝争いに照準を合わせて着々とセッティングをチューンアップして行く戦いを見せ、2連勝による通算3勝目も期待できる戦いぶりになっていた。

 残念ながら、レース終盤土壇場にRLLのピットが燃費セーブによる大逆転勝利を狙う大ギャンブルを選択。それが失敗したのだった。

「最後に戦わせてもらえなかったのが本当に悔しい」とレース後に琢磨は語った。

 彼が8番手周辺を走り続けていたのは、前にいるライバルたちを抜けないからではなく、最終ピットを少しでも遅らせ、フレッシュタイヤで優勝争いでの優位を獲得するために、最も燃費の良い環境を味方につけて走っていたからだったのだ。

 しかし、チームの作戦担当は、“抜けないなら作戦でひっくり返すしかない”という考えに囚われてしまった。

■常設ロードコースで大苦戦
 第9戦までで206ポイントを稼いだ琢磨は、ランキング10番手につけている。トップのパロウとは143ポイント差だ。ベストリザルトはデトロイト/レース1での4位と、今季はまだ表彰台がなく、トップ5入りもこの1回だけ。

 トップ10フィニッシュは第2戦セントピーターズバーグ(6位)テキサス/レース1(9位)、ロードアメリカ(8位)と、デトロイトを含めて4回記録して来ているが、はっきり言って苦戦が続いている。

 今年の琢磨は予選で思うようにパフォーマンスを発揮できていない。開幕からの9戦でロードコース、ストリートコースともに3戦が行われたが、琢磨はまだ予選でセグメント1を一度もクリアできていないのだ。

 ストリート&ロードでの予選平均順位は17.7位。ここまで厳しい結果になっているのは、RLLのエンジニアリング・グループが戦闘力の高いマシンを用意できていないためと言わざるを得ない。

 レースウイークエンドの走行時間はどんどん短縮される傾向にあるため、各サーキットへと運び込むマシンに施された“イニシャルセッティング”の重要性が今は非常に高い。

 走り出しのスピードが不足している場合、その週末にマシンを優勝争いのレベルまで向上させるチャンスは少ないだろう。予選はプラクティス終了後に大きなインターバルを開けずに行われるケースが多いため、セッティングをじっくりと検討し直す時間的余裕はない。

 プラクティス、予選と厳しい状況が続けば、レースに向けてはウォームアップでまた新たなトライを行うことになるが、毎セッション異なるセッティングを試している状況では、走り出しから良いマシンにファインチューニングを重ねたライバルたちとの優勝争いには絡んではいきにくいのだ。


 琢磨のチームメイトのグラハム・レイホールは、最上位がテキサス・レース2での3位で、それ以外にも5位フィニッシュが4回、トップ10入りはトータル6回ある。いずれも琢磨より少しずつ良く、ポイントスタンディングでは琢磨のすぐ上の9番手に、22ポイント差でつけている。

 ロード/ストリートの予選でグラハムはセグメント1通過を3回果たしているが、それはグループ分けで琢磨より幸運に恵まれたことにも助けられてのもの。セグメント2を戦っての予選ベストリザルトは9位(3回)。トップレベルのスピードが確保されているとは言い難い。

 RLLというチーム全体のパフォーマンスが不足している。琢磨とグラハムではマシンの好みが異なり、セッティングの二極化が進んでもいるようだ。そして、今シーズンはこれでのところ、グラハムのセッティングの方が僅かに良いものになっているとも見えている。

 琢磨がセッティング向上に手間取っているのは、今年から彼がマット・グリースリーというエンジニアとのコンビで戦っていることも影響している。

 琢磨がRLLに復帰してから昨年までの3シーズンを一緒に戦い、昨年のインディ500を含む4勝を挙げたエディ・ジョーンズは引退。今年の琢磨はRLLに新規加入して来たエンジニアとのコミュニケーションを深めるところからスタートしている。

 しかも、そのグリースリーがテキサスのレース後に母国イギリスに一時帰国すると、パンデミックの影響もあってアメリカに戻れなくなってしまった。

 不幸中の幸いは、インディ500ではチーム全体のサポートをする予定になってたジョーンズがインディアナポリスのロードレースから琢磨担当についたことだった。


 グリースリー復帰までジョーンズが代役を務める体制が整えられ、ダメージは最小限に抑えられている。現場を半年離れていたジョーンズを、大西洋の反対側にとどまっているグリースリーがアシストしながら……という戦いがロードアメリカでも続いていた。

 ミド・オハイオの後には1カ月以上のインターバルがあるので、第11戦ナッシュビルからグリースリーは復帰することとなるかもしれない。

■ロードアメリカで掴んだセッティングの手応え
 このような状況下、琢磨陣営は各レースウイークエンドにおいて、走行を重ねるごとにマシンを改善し、レースで最も高い競争力を発揮する戦いを見せてきている。セント・ピーターズバーグ、デトロイトでの好走は、新規開催のテネシー州ナッシュビル、そして、2013年に歴史的初勝利を挙げたカリフォルニア州ロングビーチというふたつのストリートレースでの活躍に繋がるだろう。

 パンデミックの影響でロングビーチは今年だけ最終戦として開催されることになっているのだ。最終戰でのパフォーマンスはランキングに大きく影響する。

 今年はオーバルレースが少なく、シーズン後半戦にスケジュールされているのはイリノイ州マディソンだけ。ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイの全長は1.25マイル。ショートオーバルでのレースは今シーズンはこれのみだ。

 琢磨は一昨年にこのコースで優勝している上、エアロスクリーン装着で争われた昨年のダブルヘッダーでもスピードを見せてた。レース1の予選が5番手、レース2の予選ではポールポジションを獲得し、レース結果は2位と9位だった。RLLのショートオーバル用セッティングは今シーズンも高い戦闘力を保っていると見られ、優勝争いが期待できる。

 課題は常設のロードコースだ。一昨年には優勝したアラバマ州バーミンガムのバーバー・モータースポーツパークでの成績が今年は予選19番手、決勝13位。なぜか相性の悪いインディアナポリスモータースピードウェイのロードコースでは予選17番手、決勝16位という結果だった。

 残る7戦のうち、常設ロードコースは4戦と最も多く、今シーズン2回目のインディアナポリスモータースピードウェイ/ロードコースでのレースも含まれる。


 ロードアメリカでの琢磨は、予選20位から8位にまでポジションを上げてゴールした。そこにはもちろんチームの採った作戦の良さも影響していたが、ゴール前2ラップで切られたリスタートから、レッドタイヤ装着も味方につけて1周につき2台、合計4台をパスした走りには琢磨らしさが出ていた。

 ダメージを負ったマシンという不利を乗り越え、アグレッシブに走っての8位フィニッシュ。

 マシンを降りた琢磨は、「予選、そして、その後のウォームアップよりもマシンは良くなっていた。今シーズンの我々はロースピードとハイスピードのコーナーでのマシンバランスの変化が大き過ぎた」

「今日のレースでは、昨日のウォームアップからさらに変更したセッティングを投入し、これまでにあった差を少し縮めることができていた」と掴んだ手応えを語っていた。

 長い時間がかかったが、ついに明るい兆しが見えたようだ。次戦ミド・オハイオから、琢磨とRLLは常設ロードコースで攻勢をかけて行く。

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