NTTインディカー・シリーズ第5戦、第108回インディアナポリス500マイルレースのプラクティスが、5月14日からインディアナポリス・モータースピードウェイで始まった。前哨戦となるロードコースのインディGPから左回りのスーパースピードウェイのレイアウトとなり、伝統のインディ500の舞台に戻った。
今年のエントリーは全11チーム34台。ホンダユーザー18台、シボレーユーザーが16台。7人のルーキードライバーとインディ500優勝経験者が8名いる。
インディ500走行スタートも初日は2年連続降雨に。ディクソンがトップスピード、琢磨も順調な走り出し
その中で2回以上のインディ500優勝を経験しているのは、最年長のエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング/4回優勝2001、2002、2009、2021年)と、今年で15回目の出場となる佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/2回優勝2017、2020年)だけだ。
琢磨は今年インディ500のみに専念するスポット参戦である。昨年所属していた名門チップ・ガナッシ・レーシングから、2020年に優勝したRLLに戻り3度目の優勝を狙う。メインスポンサーに工作機械メーカー、AMADA USAのサポートも決まって万難を拝しての出場だ。
4月に行われたIMSでのオープンテストでは、雨に祟られて満足な周回数をこなせず消化不良に終わっていた。またRLLの4台目のエントリーとあって、琢磨の75号車のクルーも急造チームの感は拭えなかった。琢磨はインディ500の本番に向けて「宿題がたくさん残ってしまった」とコメントを残していた。
5月に入りスピードウェイにはプラクティスの前々日から入り、前日にはHRC USAのプロモーションやメディア対応をして1日を過ごしていたが、午後にはプラクティスに備えてエンジニアリングミーティングを入念に行っていた。
「オープンテストでできなかったことと、やはり昨年このチームは予選のスピードが足りなかったので、まずそこの確認をしたい」という琢磨。
昨年予選落ちを喫したRLLとしては、再びあの悪夢を見ることを許されない。チーム4台がそれぞれ手分けをして、スピードを追求していくようだ。
しかし、テスト初日から雨予報のインディアナポリス。午前中に雨が落ちると予想されており、プラクティス開始の9時からどれだけ走れるかが問題だった。
ガレージを早めに出て準備にかかる琢磨の75号車。琢磨もヘルメットを被り、グリーンフラッグの10分前にはもうコクピットに収まっていた。
グリーンフラッグとなると、満を持して待機していたマシンが一斉にコースイン。琢磨も隊列の中に加わった。1周のインスタレーションラップを終えるとピットでマシンのチェック。そしてコースの空き具合を見て、またコースに出て行った。
計測を開始してすぐに時速210マイルを越え、ラップを重ねてアベレージ225.551mphをマーク。いきなりタイミングモニターのトップに立った。その後、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)が228.399mphで上回り、すぐさまスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が前車のトゥをうまく利用して229.107mphをマーク、ここまでのベストスピードをマークした。
琢磨もさらにセッティングを変更しタイムアップを狙っていたが、無情にも小雨が落ち始めてイエローコーションが出されピットに戻ることに。琢磨もしばらくはマシンの中で雨が止むのを待っていたが、雨雲のレーダーは、まもなく大粒の雨となるのを訴えていた。
ここまでわずか30分にも満たない走行時間だったが、琢磨はゆっくりとマシンを降りヘルメットを脱いだ。
すべてのマシンはガレージに戻され天候の回復を待っていたが、回復の気配が見られなかったため、午後2時過ぎにプラクティスの終了がアナウンスされた。これを考慮し、プラクティス2日目は2時間早く始められることになっている。
琢磨はわずか計測6周ながらも、あっという間にオープンテスト時のタイムを上回った。テストを続行したいのはもちろんだったが、その表情は決して曇っていたわけではなかった。
「ディクソンの229マイルはすごいね。あれは決勝を想定したセッティングで、トゥを使って出したものでしょう。僕も少しトゥに入っていたかな?」
「もちろん雨で残念でしたけど、オープンテストの後ミーティングを重ねて来て、エンジニアがいろいろと頑張ってくれて、その想定していた数字が予想通りに確認できたのが良かったです」
「もし想定していた数字と走行した時の数字が合っていなかったら、また昨年みたいに大変なことになってしまうけど、今日はバッチリだった。明日のテストもまだ決勝セッティングの確認は始めないで、いくつか試したい予選用のセッティングがあるので、まずそれを確認したいと思っています」
例えわずかな走行時間だったとしても、マシンにスピードがあり、セッティングの方向性が見えたことは、プラクティスの初日の大きな収穫だったようだ。
そして何よりも「75」の数字がリーダーボードのトップ立つと、本来のスピードが帰って来たと安心できた。明日以降のプラクティスも楽しみだ。
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