現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > アルピーヌA110/アバルト124GT/フォーカスRS WRC第11戦を巡る 後編

ここから本文です

アルピーヌA110/アバルト124GT/フォーカスRS WRC第11戦を巡る 後編

掲載 更新
アルピーヌA110/アバルト124GT/フォーカスRS WRC第11戦を巡る 後編

もくじ

ー 2日目:曲がりくねった地方道4501号
ー SS:スレート・マウンテン
ー グランドクロスが生んだアルピーヌA110
ー 番外編:1973年を振り返る
ー 3台のスペック

軽自動車70年の歴史 日本ならではの傑作小型車26台 前編

2日目:曲がりくねった地方道4501号

フォーカスRSの後に続いて自然保護区に延びる4501号線を走る。今年のラリーGBのブレニング・アルウェン・ステージに混ざるべく、アルピーヌA110の低くスラントしたノーズで、高く切れ上がったフォードのテールを追い回す。決して忘れられない光景だった。

アルピーヌの最高出力は、どちらかというと控えめな252psでも、想像以上に速く感じられる。かなり手を焼くような険しい道でも、本気で走るマウンチューン仕様のフォーカスRSヘリテイジ・エディションにしっかりと着いて走ることができる。

ご存知の通り、フォード・フォーカスRSヘリテイジ・エディションは超人的なパフォーマンスを備えており、ターボが生むパワーも底知れない。しかし、フォーカスとは対照的な、路面のきめ細やかなフィードバックが得られるアルピーヌA110は、1.8ℓ4気筒ターボの生み出すパワーを、自信を持って完璧に引き出すことができる。

アバルト124GTも、ウェールズの道を、やや誇張しすぎながらもクセになるエグゾーストノートを田園地帯に響かせつつ、快調に飛ばす。ただし、フットレストは垂直すぎるし、180cmを超える身長のドライバーは、背中を折り曲げなければならないほどキャビンはタイトで、例えハードトップを外したとしても、洗練性に関しては疑問符を付けなければならない。正直、価格の妥当性も疑問ではあるけれど、惹かれるのを止めることも難しい。

アバルト124GTはこの3台の中では最も遅く、仕上がりも荒いが、クルマのパフォーマンスとしては英国の郊外の道にパーフェクト。それに、フォーカスの硬すぎる乗り心地は、アバルトの容赦ないエグゾーストノートと同じくらい、ドライバーに疲労感を与えることも事実。何でもやりすぎは禁物。正直いって、人生の楽しみとしてのドライビングとは、やや一線を画すものだとは思う。

SS:スレート・マウンテン

スポンサーの影響力で、ウェールズラリーGBに生まれる新しいスタイル。現代のF1でセレブリティの存在が見過ごされがちなように、ラリーにはとても情熱的で感情的な側面もある。

我々の目前にある景色は、ウェールズの丘陵地帯に8000平方kmにも広がる鉱山と、そこに置かれたクルマ。スレート・マウンテンのランドスケープは、このラリーというスポーツの持つ魂を強く明示している。埃で目が霞んでフォーカスを見失う前に触れておくと、ここはWRCで、3.2km程のスペシャルステージとして組み入れられた場所。山頂からは、タイトなヘアピンが続くワインディングを見下ろすことができる。道端には槍のように尖った岩が剥き出しで、路面は黒いスレートで覆われている。我々のラリーのフィナーレはここに決めた。

コースに降り立ち、危険なほどきついコーナーを抜ける。一瞬逆方向にステアリングを切ってドリフト状態に持ち込む、スカンジナビアンフリックを何度か決め、往年のアリ・バタネンの走りを再現してみる。このコースを激しく攻め立てたといいたいところだけれど、今回の3台は本当のラリーカーではない。普通のタイヤを履き、充分なロードクリアランスもなく、板金の必要がない状態でメーカーに返さなければならない。現実が気持ちを抑える。

極めて高速で複雑なコースをやや抑えて走ったけれど、これまでの時間を振り返る。今回の3台の素晴らしい特徴、個性をラリーシーンが生み出したことは間違いない。

アバルト124GTはシンプルで積極的なドライビングを受け入れつつ、どこか気まぐれさも残る。アバルトにはFIAのR-GTクラスに該当するラリーバージョンも存在はするのだが、実際に壮大なラリーコースでドライブしてみても、古い英国製のロードスターやクーペほど、ラリー車としての雰囲気が強くない。ロータスエランやMG Bといった、人生を豊かにさえしてくれる、スポーツ・ロードスターという英国の自動車文化は、愛おしいものだ。

対象的にフォーカスは、ハイパフォーマンスなホットハッチとしての、偉大な道標としての完成度がある。荒々しくも楽しさに溢れ、熱い走りと利便性を兼ね備えている。確かに祖先となるエスコートとはメカニカル的に異なる成り立ちだとはいえ、他の2台と同様に、21世紀のWRCとの結びつきは確かなものだと思う。

グランドクロスが生んだアルピーヌA110

そしてアルピーヌ。価格は確かに他の2台とはかなりの差があるが、その価値は間違いないもの。フォードもアバルトも、仕上がりは秀逸ではある。それでもなお、高速道路や海岸線の道、都市部や競馬場のダートコース、郊外の道にスレートマウンテンのラリーステージなど、すべての走りは、クルマの成り立ちを骨格に至るまで証明していた。

ラリーステージから一般道へと戻れば、まるで装備を外したクラブレーサーのように、普通の運転さえいとわない。この洗煉性と使い勝手の良さは、ポルシェ718ケイマンの完成度に迫ると思う。もしオーナーになったら、小さく使いにくそうなカップホルダーを変更して、シートポジションを低めにセットし直すだけで、満足できるはず。

カップホルダーは別として、アルピーヌA110の世界観は完成している。優れた開発者とアイデア、技術、開発予算、受け入れられる市場とブランド力。すべてが一体となって、このクルマが生まれている。ここには一切、手のはいる余地が無いとさえ思う。わたしが心配なのは、このグランドクロスのような一致は、もう二度と起き得ないのではないかということ。

きっと杞憂に過ぎないとは思う。数年後、次のモデルでも、こうして集まることができると信じたい。人々が豊かな大地から生み出した、素晴らしい自動車。きっとこの巡り合わせは今回限りではないはず。特にアルピーヌA110のようなクルマとの出会いは。

番外編:1973年を振り返る

アルパイン・ルノーは1970年と1971年の国際ラリー選手権ですでに名を馳せていた。1973年に名称が世界ラリー選手権、通称WRCへと変わると、さらに独占状態が強くなる。

A110をドライブした、ジャン・クロード・アンドリュー(フランス)とオベ・アンダーソン(スウェーデン)、ジーン・ピア・ニコラス(フランス)が、開幕ランドのモンテカルロで、表彰台を独占したのだ。唯一、フォード・エスコートを駆ったハンヌ・ミッコラだけが4番手につけ、5番手にも入賞していたA110に割って入る形となった。

ラリーは、モナコを最終目的地とし、モンテカルロの険しい山岳地帯や南フランスの様々な都市で、スペシャル・ステージが開催された。その時、フィアット・アバルト124ラリーは、7位へ食い込むのがやっとだった。

今回は、1位から3位までを独占したアルピーヌと、同時期に戦ったフィアット、フォードに敬意を評して、その頃の子孫ともいえる3台を集めた。他に1973年にラリーへ参戦していたクルマの子孫として、現代のクルマを見渡せば、ポルシェ911やBMW M2、日産フェアレディZなどがあるといえる。加えて、トヨタ・オーリス、プジョー508、シトロエンDSなども含まれるだろうか。なかなかバリエーション豊かだ。

3台のスペック

アバルト124GTのスペック

■価格 3万3625ポンド(497万円)
■全長×全幅×全高 4060×1740×1240mm
■最高速度 230km/h
■0-100km/h加速 6.8秒
■燃費 15.6km/ℓ
■CO2排出量 148g/km
■乾燥重量 1060kg
■パワートレイン 直列4気筒1368ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 170ps/5500rpm
■最大トルク 25.3kg-m/2500rpm
■ギアボックス 6速マニュアル


アルピーヌA110プルミエールエディションのスペック

■価格 5万1805 ポンド(766万円)
■全長×全幅×全高 4205×1800×1250mm
■最高速度 249km/h(リミッター)
■0-100km/h加速 4.5秒
■燃費 16.3km/ℓ
■CO2排出量 138g/km
■乾燥重量 1103kg
■パワートレイン 直列4気筒1798ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 252ps/6000rpm
■最大トルク 32.9kg-m/2000rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ・オートマティック


フォード・フォーカスRSヘリテイジ・エディションのスペック

■価格 3万9895 ポンド(590万円)
■全長×全幅×全高 4390×2010(ミラー含む)×1472mm
■最高速度 265km/h
■0-100km/h加速 4.5秒
■燃費 12.9km/ℓ
■CO2排出量 175g/km
■乾燥重量 1599kg
■パワートレイン 直列4気筒2261ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 375ps/6000rpm
■最大トルク 51.8kg-m/3200rpm
■ギアボックス 6速マニュアル

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
motorsport.com 日本版
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
AUTOSPORT web
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
Auto Messe Web
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
WEB CARTOP
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
日刊自動車新聞
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
くるまのニュース
アストンマーティン、技術責任者ファロウズ更迭は今季の不振が理由と説明「彼は2023年のマシン開発に大きな影響を与えたが……」
アストンマーティン、技術責任者ファロウズ更迭は今季の不振が理由と説明「彼は2023年のマシン開発に大きな影響を与えたが……」
motorsport.com 日本版
ブルーインパルスがラリージャパン2024開幕を祝う航空ショー。6機が豊田スタジアム上空で華麗なスモーク
ブルーインパルスがラリージャパン2024開幕を祝う航空ショー。6機が豊田スタジアム上空で華麗なスモーク
AUTOSPORT web
[15秒でニュース]首都高速八重洲線通行止め…10カ年計画の新環状線プロジェクト
[15秒でニュース]首都高速八重洲線通行止め…10カ年計画の新環状線プロジェクト
レスポンス
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
motorsport.com 日本版
約148万円! スバル新型「軽ワゴン」発表! “水平対向”じゃないエンジン&スライドドア搭載! ”大開口“実現の「シフォン」が販売店でも話題に
約148万円! スバル新型「軽ワゴン」発表! “水平対向”じゃないエンジン&スライドドア搭載! ”大開口“実現の「シフォン」が販売店でも話題に
くるまのニュース
アウディ Q6 e-tronの中国専用「ロング版」はただ長いだけじゃない…広州モーターショー2024
アウディ Q6 e-tronの中国専用「ロング版」はただ長いだけじゃない…広州モーターショー2024
レスポンス
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
motorsport.com 日本版
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村