今季2024年の開幕戦を終えたSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”は、来季2025年の導入を予定する新型“SUV”用の新世代シャシーを公開。新開発の直列4気筒2.1リッターのターボエンジンを搭載するこの新設計シャシーは、世界最大級の鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミッタル社製の鋼管パイプフレームを採用し「安全性はもちろん、二酸化炭素排出量も削減する取り組みにより、持続可能性も最高レベル」になったと謳われる。
従来の構造を初期の基礎として使用した新しいプロジェクトとして、2020年よりトヨタ・カローラとシボレー・クルーズによる争いを支えてきた現行“JL-G09”シャシーのVer.Bは、シリーズ主催団体であるバイカーと参加チームのエンジニアリング部門の共同作業により、わずか数カ月で作成された。
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量産モデルに近いラインを持つ新車を投入し、レースカーとロードカーの同一性と近似性を高める狙いにより、同年にデビューしたTOYOTA GAZOO Racingブラジル製カローラのユニボディを使用することを前提に、クルーズとのモデル間の均衡と空力的なマッチングや重量配分、そして特定コンポーネントの適応が図られた。
その方針は成功を収め、過去4年間は参戦ほぼ全車が秒差圏内にひしめき、実に25台が0.5秒差という接戦が演出され、昨季2023年はシボレーとトヨタの両陣営が年間12勝ずつを分け合うという象徴的なリザルトが残っている。
そのJL-G09Bからバトンを受け継ぐ新車両規定『Audace SNG01』は、シリーズを運営するバイカーの母体であるヴェローチ・グループの技術部門オーダステック社が開発を主導。ドライバーを保護する新しいセーフティケージにはアルセロール・ミッタル社製の中炭素鋼が採用されており、CO2排出量を削減した生産を認証する同社の世界的なプログラムである“XCarb”認証を取得している。
同社のラテンアメリカ部門運営担当副社長、ホルヘ・アデリーノ・デ・ファリアによれば、この取り組みは植林による残留排出量の補償などを含め、脱炭素化の課題に対する取り組みを強化するものだという。
「我々は安全性、テクノロジー、持続可能性という柱を通じてストックカーとつながっている。このケースでは当社の研究開発センターを利用してセーフティケージ用のスチールソリューションを開発し、プロセス全体がXCarb認証を取得して持続可能な方法で実行される」と続けたデ・ファリア。
「モータースポーツにとっても脱炭素化アジェンダの重要性が考慮され、以上のことが再確認された。人々と地球のためにスマートな鋼材を製造することが我々の目的でもあるんだ」
■SKFレーシングの公式ベアリングサプライヤーも継続へ
同社は中炭素鋼の使用に加え、高張力鋼を使用して構造を軽量化し、燃料消費量を削減するソリューションを提示してもいる。プロモーター代表としてバイカーを率いるCEOのフェルナンド・ジュリアネッリも「新世代のストックカー車両のプロジェクトは、さらなる安全性と持続可能性をもたらすことを目指している」と付け加える。
「ストックカー2025プロジェクトに対するアルセロール・ミッタルの貢献は、少なくとも3つの側面で重要な進歩をもたらした。クルマの安全性と競争力が向上し、同時に二酸化炭素排出量も削減される。これはプロジェクトの目標を前進させるのに非常に役立つ技術的な組み合わせでもあるんだ」
そのうえで、車両のベースモデルを「SUVとする」ことをアナウンスしている同規約では、引き続きファンとの双方向性を重要視していることも特徴で、マシンにはクアルコム社製モバイルCPUのスナップドラゴンによる高速5G対応の通信機能が備えられる。
将来的には同社が提供するWi-Fi 6EとWi-Fi 7のテクノロジーも活用し、拡張現実(AR)メガネとマルチカムを併用することで、観客がドライバーの隣に仮想的に座っているかのようにレーシングカー内部から360度ビューが提供される、臨場感あふれるリアルタイム5G伝送も計画されている。
また、ときを同じくしてイタリアのSKFレーシング社も契約を更新し、ブラジルを代表するレーシングファミリーであるジャフォーネの一族企業にルーツを持つ、現行JL-G09Bが使われる2024年シーズン終了まで、4年連続のシリーズ公式ベアリングサプライヤーであり続けることも発表された。
同社のアフターマーケット部門ラテンアメリカ担当コマーシャルディレクターのミッシェル・ヴァンスは「競技車には摩擦を軽減し、耐久性を高めた特別なホイールベアリングが必要だ。さらにSKFはベアリングを供給するだけでなく、シーズンを通してチームに必要なサポートをすべて提供していく」としている。
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