日本のスーパーGTは先週最終戦を終えたばかりだが、今週末にはWEC世界耐久選手権がバーレーンでの最終戦を迎える。そのWEC最終戦をより楽しむために、今回はドライバーではなく、現場で活躍する女性メカニックに注目し、ご紹介したい。
パドックやピットレーンを歩いていると、WECでは結構多くの女性メカニックが活躍していることに気づく。今回はその中から2名をピックアップ。どんな仕事をしているのか、どうしてメカニックになったのかなど、深いところまでを含めて聞いてみると、実に興味深いバックグラウンドと、彼女たちの“努力”が浮かび上がってきた。
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■ケータリングの仕事から転身。大型免許取得後、ポルシェから声がかかる
まずひとり目として紹介するのは、まだメカニック歴4年目というドイツ人のビアンカ・ヤナスさん。現在は、BMW Mチーム WRTでファブリケーターとして働いている。彼女は現在39歳。いったいどうしてメカニックになったのだろうか? そのキャリアはとても面白い。
「私はドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州で生まれましたが、フランクフルト周辺で育ちました。子どもの頃、家族がF1を観ていましたが、身の回りのレースはそれくらいでしたね。ですから、メカニックになることを計画していたわけではなく、なんとなく夢中になったんです。DTM(ドイツツーリングカー選手権)のケータリングや物流の仕事から始めて、今はレースカーの修理で生計を立てています」
そう、ビアンカは、最初はメカニックとしてではなく、ホスピタリティーブースなどで料理や飲み物をサーブする係だったのだ。
「モータースポーツのキャリアは、DTMでメルセデス・ベンツチームのケータリングを担当したことから始まりました。それ以来、サーキットにいるのが大好きになりました。サーキットの人々や雰囲気は、通常のケータリングイベントよりもはるかに素晴らしい。モータースポーツ関連の仕事のほとんどで、私はチームの"お母さん"のような存在でした。ガレージに食べ物や飲み物を運んだり、アイスクリームやチョコレートで人々の一日を明るくしたり。とてもやりがいのある仕事です」
「彼らとは数多くのレースに参戦し、2017年と18年にはWECのチームでいくつかのイベントに出場し、2018年からフォーミュラEで働き始めました。これもまた“単なる”ケータリングの仕事でしたが、水とチョコレートを提供する仕事を通して、多くの人と知り合い、最終的には実際にクルマの開発に取り組むチームに入ることができました」
その間、ビアンカは、現場での仕事の幅を広げようと努力してきた。
「2020年に大型トラックの免許を取得し、ヨーロッパのF1イベントでフェラーリのドライバーとして走り始めました。そこで少し運転経験を積んだところ、ポルシェ・ペンスキーから、トラックドライバーになる機会をもらったんです。そしていま、再びWECのパドックで働いています。現在はWECでのクルマの開発以外にも、フォーミュラEでのケータリングの仕事を楽しんでいます。同じ環境でまったく異なる2つの世界が体験できるのは素晴らしいことだと思っています」
ある意味、二刀流で活躍している彼女に筆者が初めて会ったのは、2023年。当時はポルシェでタイヤ管理の仕事をしていた。そこからWRTに入るまでは、どのような紆余曲折があったのだろう。
「23年にポルシェ・ペンスキー・モータースポーツで働き、24年にキャデラックチームに移籍する機会を得ました。キャデラックで働いていた頃からボディワークの仕事を始めました。とても少人数のチームだったので、それぞれが複数のタスクと責任を担っていたんですよね。私も最初は物流とガレージ技術の担当として採用されたんですが、最終的にはその仕事に加えて給油係とボディワーク/コンポジットアシスタントも兼任することになったんです。どちらの仕事も、こんなに楽しいとは思っていませんでした」
「でも、残念ながらプログラムが中止になり、新しい仕事を探さなければなりませんでした。というわけで、いまはWRTチームの新メンバーですが、来シーズンもチームに残ることを嬉しく思っています。新しい挑戦を楽しみにしていますし、できる限り多くのことを学びたい。目標は、給油係に戻ってピットクルーに復帰すること。何か特別な魅力があるんですよね」
現在は、パートナーとスコットランドに家を建築中だというビアンカ。細かいことまで全部自分たちでやっているとのことで、「レーストラックで学んだり修理したりして帰ると、家でも同じことをしている」のだそう(建築作業もやっているのだろうか?)。
こうしたハードな日々を送るためには、何と言っても身体が資本。そのため、ビアンカは、朝ヨガを行い、日中も外でアクティブに過ごすように心がけているのだという。たまの息抜きは音楽を聞きながらのドライブ。また、家にいる時は、いつもそばを離れない小さなビーグル犬の女の子と多くの時間を過ごしているそうだ。
■実家はカタルーニャ・サーキットからわずか5分
続いて紹介するるのは、プロトン・コンペティションのフォード・マスタングGT3を整備しているスペイン人のイオナ・エルナンデスさん、26歳。彼女はレース中、タイヤ交換も行っているという強者で、最初からメカニックを志してきた人物だ。
「私は、バルセロナで生まれました。カタルーニャ・サーキットからクルマで5分のところなんですが、2年半前まではそこに住んでいました。業界に入るに当たって、サーキットの近くに住んでいるのは有利かもしれませんね。でも、ウチの家族にモータースポーツに関わっている人やモータースポーツ界で働いている人はいませんでした。ただ、私自身は子供の頃からモータースポーツが好きで、学校で勉強していた頃はそれが唯一の興味でした」
そんなイオナは高校を卒業すると、バルセロナにあるモータースポーツ専門の学校に入学する。当時は、学費の足しにするために、小さな子どもたちに水泳を教えたり、レストアの仕事をしたりもしていたそうだ。それと同時に、学生時代からレースの仕事にも携わり始める。
「私は2021年にプロとして働き始めましたが、それ以前はスペインのチームでインターンシップをしていました。午前中は学校の授業を受け、午後からはカートやTCRの仕事をしていたんです。クルマのメカニックになる前はタイヤも扱っていて、最初はそこから始めました。学生時代は、イタリアの『ダイナミック』というチームでも働いていました」
「そして、学校を出て最初に入ったのがプロトン。一方、ダイナミックでは、今でもGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのレースに出場しています。これまでメカニックとして、WEC、ELMS、IMSA、ALMS、そしてGTWCに出場しました。今シーズンはWECとELMSに出場しています。デイトナやセブリングなどのIMSAレースやGTWCでも仕事をしましたね」
中でもWECに関しては、前述のようにレース中にタイヤ交換を行っている。これは彼女にとっても、大きな出来事だったそうだ。
「タイヤ交換に関しては、ついにその仕事をできるようになったという思いです。2年前にWECに参戦を開始して、唯一この選手権でやらせてもらえるようになったんですよ。でも、そこまで行くのは簡単ではありませんでした……」
この発言から、いかに苦労と努力を重ねてきたかということが感じられる。重いタイヤを扱うのは、並大抵のことではない。でも、そんなイオナにとって、この先にはまだまだ夢がある。
「最高の自分になるため、成長を止めずに走り続けたいです。そして将来は、優秀なチーフメカニックになりたい。そのためのモットーは『止まらなければ、どんなにゆっくりでも構わない』ということですね」
休日も家の塗装や改造はじめ、さまざまな手作業を行うのが好きというイオナ。最近はジム通いする時間が取れないということだが、たまにランニングをしたり、仕事中には常に身体を動かして、体重管理もしっかりと行っているそうだ。頑張ってほしい!
[オートスポーツweb 2025年11月06日]
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みんなのコメント
チームに貢献出来るよう、頑張って下さい。
中でもタイヤ交換を担当するのは特に信頼が厚いスタッフらしい。凄いよな。