現在位置: carview! > ニュース > イベント > 運命かえた名車、一堂に エンツォ・フェラーリ博物館企画展「ゲームチェンジャーズ」

ここから本文です

運命かえた名車、一堂に エンツォ・フェラーリ博物館企画展「ゲームチェンジャーズ」

掲載 1
運命かえた名車、一堂に エンツォ・フェラーリ博物館企画展「ゲームチェンジャーズ」

「初めて」を振り返る

イタリア北部エミリア地方には、フェラーリが運営する2つのミュージアムがある。1つは本社所在地マラネッロの「フェラーリ博物館」だ。もう1つは約20キロメートル離れたモデナにある「エンツォ・フェラーリ博物館」で、こちらは彼の生家を改装したものである。後者に隣接するホールでは、2024年2月17日まで企画展「ゲームチェンジャーズ」が開催されている。

【画像】エンツォ・フェラーリ博物館のフェラーリの歴史に残るゲームチェンジャーたち【現地より】 全15枚

展示の趣旨には「フェラーリ史における革新的モデルとデザイン、コンペティションカー、テクノロジー、そして最も忘れがたい勝利を紹介するものである」と記されている。

順路は、創業年である1947年の「125S」レプリカから始まる(以下、記載年は展示車に準拠)。フェラーリのネーミングを冠して最初に造られた記念すべきモデルである。

続くのは翌1948年「166MM」だ。発表されたのはトリノ・モーターショーで、フェラーリにとっては初のショーデビューであった。同時にカロッツェリア・トゥリング・スーペルレッジェーラによる全アルミニウム製ボディを採用した初のフェラーリ製バルケッタだ。MMはイタリアを代表するスピードレースで、のちにフェラーリが数々の優勝や好成績を果たす「ミッレミリア」にちなんだものである。

1970年代も革新は続く。1973年の「365GT4 BB」は180°V型12気筒エンジンを搭載した、フェラーリ初のミッドシップ市販モデルであった。

筆者自身が最も関心を寄せたのは、1987年「408 4RM」である。名エンジニア、マウロ・フォルギエーリによる指揮のもと、AWDモデルとして実現が模索された試作車である。実際には量産に至らず、四駆は後年の2011年「FF」まで待たなければならなかったが、開発段階で11もの特許を取得している。今回展示されたのは当時2台が製作されたうちの2号車である。

カスタマーを意識してきたモデル展開

今回の企画展を訪れた筆者は、2つの事柄をあらためて感じた。

第1は、フェラーリというブランドが、あたかも孤高の存在であるかのように語られることが多いが、実はいつの時代もカスタマーの存在を意識していたということである。

たとえば1956年「410スーパーアメリカ・ピニン・ファリーナ」は、エリート的オーナーに向けて放たれた最初のフェラーリとされる。とくに、そのネーミングからわかるように、強いドルを背景に活況を呈していた米国市場を意識していた。

初の4シーター・フェラーリである1960年「250GT 2+2」は、より快適なグラン・トゥリズモを求める市場の要望に応えたものである。

2005年「FXX」は、既存のエンツォをベースにしながら公道用ホモロゲーションには敢えて目をつぶり、サーキット走行を、それもレースではなく楽しむために開発された。これは世界各地で、レースではなく走りを堪能したいという富裕オーナーの存在をいち早く察知した製品企画に違いない。

フェラーリ 最新の挑戦

第2は、フェラーリは常に「らしくない」を投げかけてきたことだ。

今回の企画展で「初めて」を特集した理由がわかる瞬間は、最後の展示車が2022年「プロサングエ」であることを知ったときだ。車両脇に添えられた解説板には「4つのドアと、4つの快適なシートという斬新さ」と記されている。

そしてこう続けられている。「新型車には常に最先端の研究を結集してきました。特にプロサングエについては、企業の「良心」も要約されており、フェラーリ製グラン・トゥーリズモの進化に関するすべての知識、つまりプレステージ・モデルとしてのデザイン、空力、メカニズム、パフォーマンス、ドライビングプレジャーが絶対的なものとし集約されています」

読者諸氏もご存じのように、プロサングエはデビュー直後から、ファンだけでなく専門家の間でも賛否両論が戦わされてきた。だが、かつて1976年にフェラーリ初のAT車「400オートマティック」が登場したとき、それなりのインパクトをエンスージァストに与えた。1989年に電子/油圧制御式セミオートマティックをF1マシンに初搭載したときも当初はおおいに疑問視されたものだ。

しかし今日、すでに市販フェラーリが全車ATとなって早10年以上が経過した。F1のギアボックスもセミATがデフォルトである。

それら2つの事実と照らし合わせると、フェラーリがプロサングエで新カテゴリーに挑んだのも、けっして突飛なことではないのである。参考までにデザイン的観点から述べれば、その曲面処理は極めてダイナミックで、そこから醸し出されるリフレクションは限りなく繊細だ。皮肉に富んだ人がたびたび囁く「マツダ製SUVのように見える」というのは、明らかな的外れである。

会場の一角にはエンツォの言葉が紹介されている。La migliore Ferrari che sia mai stata cortruita e la prossima(今まで造ったことがない最高のフェラーリは、次に登場するモデルだ)。

我々がこの言葉をいつまでも信じられるように、マラネッロのエンジニアやデザイナーたちには奮闘してほしいものだ。

こんな記事も読まれています

全国に「警察軽トラ」配備へ なぜ? 警察庁初の取り組み、理由は? ダイハツ製61台を24年度中に導入! 各都道府県警察で運用
全国に「警察軽トラ」配備へ なぜ? 警察庁初の取り組み、理由は? ダイハツ製61台を24年度中に導入! 各都道府県警察で運用
くるまのニュース
転倒時にバイクを守る! エンジンガードは装着した方がいいのか?
転倒時にバイクを守る! エンジンガードは装着した方がいいのか?
バイクのニュース
『ランクル40 / 70』にもピッタリ! トーヨータイヤ『OPEN COUNTRY A/T III』がラインアップ拡充
『ランクル40 / 70』にもピッタリ! トーヨータイヤ『OPEN COUNTRY A/T III』がラインアップ拡充
レスポンス
寒いとバカっ速! ラスベガスで完勝ワンツーのメルセデス、懸念のグレイニングも一切出ず「不思議だね」とウルフ代表
寒いとバカっ速! ラスベガスで完勝ワンツーのメルセデス、懸念のグレイニングも一切出ず「不思議だね」とウルフ代表
motorsport.com 日本版
約99万円! トヨタ新型「“軽”セダン」発表! 全長3.4m級ボディで4人乗れる! 安全性向上&寒さ対策UPの「ピクシス エポック」どんな人が買う?
約99万円! トヨタ新型「“軽”セダン」発表! 全長3.4m級ボディで4人乗れる! 安全性向上&寒さ対策UPの「ピクシス エポック」どんな人が買う?
くるまのニュース
夢だけで終わらせたくない「マイ・バイクガレージ」 たぐちかつみ・マイガレージ回顧録 VOL.01
夢だけで終わらせたくない「マイ・バイクガレージ」 たぐちかつみ・マイガレージ回顧録 VOL.01
バイクのニュース
「(次期)セリカ、作ります!」ラリージャパン会場でトヨタ中嶋副社長が明言!! 開発開始を宣言、次期86も「出す」
「(次期)セリカ、作ります!」ラリージャパン会場でトヨタ中嶋副社長が明言!! 開発開始を宣言、次期86も「出す」
ベストカーWeb
スズキ・フロンクスが月販目標の9倍も受注! 絶好調な理由は小さくて安いのに感じられる「高級感」!!
スズキ・フロンクスが月販目標の9倍も受注! 絶好調な理由は小さくて安いのに感じられる「高級感」!!
WEB CARTOP
車載電池のノースボルト、米国で破産法を申請 事業継続にめど
車載電池のノースボルト、米国で破産法を申請 事業継続にめど
日刊自動車新聞
【初試乗!】さらにスポーティになった「メルセデスAMG GT 63 PRO」はポルシェとのGT対決に終止符を打てるか!?
【初試乗!】さらにスポーティになった「メルセデスAMG GT 63 PRO」はポルシェとのGT対決に終止符を打てるか!?
AutoBild Japan
レクサス新型「FF最大・最上級セダン」世界初公開に大反響! めちゃ“斬新グリル”&一文字ライト採用! “6年ぶり”に内外装刷新の「ES」中国に登場!
レクサス新型「FF最大・最上級セダン」世界初公開に大反響! めちゃ“斬新グリル”&一文字ライト採用! “6年ぶり”に内外装刷新の「ES」中国に登場!
くるまのニュース
20年前の個体なのに走行距離301キロ!? 555台の限定車 BMWアルピナ「ロードスターV8」がオークションに登場 極上車の気になる予想価格とは
20年前の個体なのに走行距離301キロ!? 555台の限定車 BMWアルピナ「ロードスターV8」がオークションに登場 極上車の気になる予想価格とは
VAGUE
完璧なシーズンでも届かない、王者の背中。ノリス「たとえミスがなかったとしてもタイトルを手にできたかどうか……」
完璧なシーズンでも届かない、王者の背中。ノリス「たとえミスがなかったとしてもタイトルを手にできたかどうか……」
motorsport.com 日本版
苦手な「前向き駐車」なぜコンビニで推奨されるのか? 「もちろんやってる」「出る時が怖い…」賛否あり!? バック駐車じゃない理由への反響は?
苦手な「前向き駐車」なぜコンビニで推奨されるのか? 「もちろんやってる」「出る時が怖い…」賛否あり!? バック駐車じゃない理由への反響は?
くるまのニュース
今でも現役! いろんなバイクに採用されています。「SOHC」とは?【バイク用語辞典】
今でも現役! いろんなバイクに採用されています。「SOHC」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
ダイハツ『タフト』安全性能向上で仕様変更、138万6000円から
ダイハツ『タフト』安全性能向上で仕様変更、138万6000円から
レスポンス
BMW 2シリーズクーペ【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
BMW 2シリーズクーペ【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
レクサスの末っ子LBXに、次世代モダンインテリア空間を表現したElegantが新登場
レクサスの末っ子LBXに、次世代モダンインテリア空間を表現したElegantが新登場
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

1件
  • scr********
    プロサングエのタイヤめっちゃ引っ張ってるな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

4760.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
プロサングエの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

4760.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村