平面パネルがほぼない滑らかなボディ
ヒーレー・シルバーストンの前後のタイヤは、カーブを描くサイクルフェンダーが覆う。最高出力は控え目だが、空気抵抗の小さいボディがそれを補った。フロントノーズから、スペアタイヤがバンパーを兼ねるテールエンドまで、平面のパネルはほぼない。
【画像】ベースは自社初のサルーン ヒーレー・シルバーストン 同時期のスポーツレーサー オースチン・ヒーレー100も 全127枚
シルバーストンのデビュー戦は、1949年のフランス・アルペンラリー。「過酷なイベントで、ドナルド・ヒーレー氏はミステリアスなスタイリングの新しいヒーレーを運転。他のドライバーや観衆を驚かせました」
「しかし、優勝したシトロエンに次ぐ2位でゴールし、尊敬を集めています。新しいモデル、シルバーストンが誕生したようです」。と、その頃のモータースポーツ誌は紹介している。
さらに、シルバーストン・サーキットで開かれた、デイリーエクスプレス・プロダクションカー・レースにも参戦。レーシングドライバーのトニー・ロルト氏と、ルイ・シロン氏、トミー・ウィズダム氏による3台態勢で挑んだ。
結果は、総合4位と6位、17位。2.5Lクラスでは、2位と、4位、5位に入った。優勝は逃したものの、チーム賞を掴んでいる。
市販モデルでは、グリーンとレッド、ブルーの3色を塗装色として設定。インテリアは、レッドかベージュから選択可能だった。
後にF1ドライバーになるトニー・ブルックス氏も、週末に乗るクルマとして、母親の協力を得てシルバーストンを購入している。彼の輝かしいキャリアが、そこから始まったと表現しても過言ではない。
サルーンのティックフォードから改造
1920年生まれのレーシングドライバー、ジェームズ・ダンカン・ハミルトン氏も、1950年8月のプロダクション・スポーツカー・レースへ、シルバーストンで参戦。彼は、このモデルの進化に少なくない貢献を果たした。
初期のDタイプと呼ばれるボディは、コクピットが狭く、体格の大きいハミルトンには不向きだった。そこでヒーレーが用意したのが、後期型となるワイドボディのEタイプだったのだ。
Dタイプのシルバーストンは1949年から51台が製造され、1950年4月からはEタイプが標準仕様に。ボンネットに追加されたエアインテークがわかりやすい違いで、ステアリングコラムは調整可能になり、バケットシートが備わる点も特徴となった。
今回、筆者がシルバーストン・サーキットで運転させていただいたのも、後期のEタイプ。現在のオーナー、ウォーレン・ケネディ氏は、35年間も放置されていた1台を15年前に購入したそうだ。
本来はシャシーを共有し、1950年に発売されたヒーレー・ティックフォードと呼ばれるサルーンだったらしい。シルバーストンへ後にコンバージョンされた、3台のうちの1台となる。
ケネディは、7年前に徹底的なレストアへ着手。その際、エンジンをアップグレードし、新車時のオプションだったウェイド社製スーパーチャージャーの搭載を決めた。バルブの動きを安定させるため、カムフォロワーには強力なリターンスプリングも組まれた。
古き良き音響へブロワーの悲鳴が重なる
それ以外は、オリジナル状態が保たれている。ブロワーはエンジンブロックの前方、フロントグリルから見える位置に収まり、光の加減で鈍く光る。グリル内に並んでいたヘッドライトは、サイクルフェンダーを固定するアーム側へ移動されている。
最高出力は、推定で142ps。当初の105psから大幅に増強されているが、シルバーストン・サーキットは75年前から大幅に改修され、安全性も高い。ドライバーが圧倒される心配はないだろう。
コクピットはミニマリスティック。3スポークの大きなステアリングホイールの後ろへ、筆者の身体がピッタリ収まる。シートポジションを目一杯落としても、フロントガラスのフレームが視界へかかる。
フラットなダッシュボードの正面には、6000rpmまで振られた巨大なタコメーター。助手席側には、同サイズで時速120マイルまで振られたスピードメーターが並ぶ。7枚の補助メーターが、その周囲を埋める。
ペダルの間隔は広く、ヒール&トウしやすい。ライレー社製4速マニュアルのシフトレバーが、握りやすい場所へ伸びる。ステアリングホイールは低速で重めだが、速度域が上がると徐々に軽くなっていく。
助手席側のサイドから排気ガスが放出され、ドライなエグゾーストノートが心地良い。古き良き音響へ、ブロワーの悲鳴が僅かにオーバーラップする。
笑ってしまうほどテールスライドしやすい
低回転域からトルクフルで、発進時から扱いやすい。予想より1段高いギアで、コーナリングできる。車重は940kgと軽く、コースの幅を利用すれば、減速を最小限に抑えられる。笑ってしまうほどテールスライドしやすいが、リカバーも面白いほど難しくない。
公道に出ても、1950年代初期のモデルとしては痛快。スーパーチャージャーの加算するトルクが、効果的に働く。ステアリングは重めだが、現代的なモデルのように積極的にシフトダウンして、更なるパワーも求めたくなる。
唯一、低速のタイト・コーナーは苦手な様子。計画的にカーブへ侵入しなければ、滑らかな脱出は難しい。ブレーキペダルは、かなり力を込めなければ期待通りの制動力は得られない。踏み初めのフィーリングも柔らかい。
とはいえ、荒れた路面でも乗り心地はしなやか。カーブが連続する区間でも、姿勢制御は安定している。フロントタイヤのグリップも充分に高い。
グレートブリテン島でサーキットが増え始めた1950年代に、英国では多くの優れた技術者が活躍した。ドナルド・ヒーレー・モーター社を立ち上げたドナルド・ヒーレー氏は、その際たる1人といえた。
市場のトレンドを見抜く力にも長けていた。巧みに技術を展開し、資金力に関わらず、モータースポーツを志す人を支えた。シルバーストンは、もっと多く生産されるべきだった傑作といえる。
協力:ウォーレン・ケネディ氏、ジョナサン・ギル氏、シルバーストーン・サーキット
ヒーレー・シルバーストン(1949~1950年/英国仕様)のスペック
英国価格:975ポンド(新車時)/22万ポンド(約4224万円/現在)以下
生産数:108台(コンバージョン3台を含む)
全長:4260mm
全幅:1600mm
全高:1371mm
最高速度:177km/h
0-96km/h加速:11.0秒
燃費:7.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:940kg
パワートレイン:直列4気筒2443cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:105ps/4500rpm
最大トルク:18.2kg-m/3000rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)
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