8月6~7日に富士スピードウェイで行われるスーパーGT第4戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 100Lap RACE』は、第2戦と同様に、決勝中に2度の給油が義務付けられている。第2戦のGT300クラスでは、1周目終了時点で1度目の義務を果たすチームが出るなど、各チームの戦略に“幅”が出るレースとなったが、アクシデントによりレースが短縮終了されたことで、どの陣営が“正解”なのかは、結局分からないまま終わってしまった。
今回の第4戦でも、ピットタイミングやタイヤ交換の有無などで、多彩な戦略が見られるのだろうか? 春のレースでユニークな戦略をとった3つの陣営に、第4戦に向けた見通しを聞いた。
真夏のスーパーGT第4戦富士。編集担当スタッフがGT500ウイナー&ポールポジションをガチ予想
■「ロングスティント走れるタイヤ」がカギのHACHI-ICHI
「まず予選の順位がどのへんかによりますよね。あとはタイヤに関して、どこまでロングができるか、でしょうね」と語るのはHACHI-ICHI GR Supra GTの田中哲也監督だ。
HACHI-ICHI GR Supra GTは第2戦の450kmレースで、4周目に1度目のピットに飛び込んでいた。残りの約90周を1回のピットで走り切れるという意味では、燃料的なウインドウは広いと言えそうだが、「かなりカツカツの状態でした」と田中監督は振り返る。
今回、HACHI-ICHI GR Supra GT陣営がとくに気にかけているのは、タイヤのファクターだ。
「いまのタイヤは、どこ(のメーカー)も皆さん攻めてるので、気温とか状況に影響されやすいと思うんです。温度レンジもすごく狭いところを狙っていると思うので。ロングが安定するタイヤで、いかに予選で前に行けるか。そして、もし(決勝を)ショート・ロング・ロングでいくなら最低でもタイヤ交換は1回にしたい。だからとにかく長いスティントを走れるタイヤを持っておきたい。それはみんな考えていることだと思います」
田中監督はさらに、「とくにJAF(GT300規定)勢では、理想的には2回とも無交換で行きたいと考えている陣営も、BS(ブリヂストン)さんを含めてあると思うんですよね」と、“完全無交換”を狙う陣営の存在を示唆しており、タイヤの“寿命”が鍵を握る戦いとなる可能性もありそうだ。
今季ここまでノーポイントに終わっているHACHI-ICHI GR Supra GTとしては、戦略も絡めながら上位を狙いたいところだろう。
■入念な準備を整える“ワンオペ”埼玉トヨペット
続いては、第2戦のレース終了時点では、2度の義務給油を果たしていた陣営としては最上位だった埼玉トヨペットGB GR Supra GTの近藤收功エンジニアに、今週末に向けたアプローチを聞いた。
第2戦では、セーフティカー中に『義務にカウントされない給油』を敢行したことで、その後の『義務にカウントされる給油時間』を減らすことに成功した埼玉トヨペットGB GR Supra GT。
データエンジニアを置かず、燃費の把握を含めた戦略面をひとりで担っているという近藤エンジニアは、「自分の場合はレースが始まったらトップと自分たちのギャップ、自分たちから最後尾までのギャップを全部シミュレーションしながらやっているので、常に『いまピットに入ったら得なのかどうか』を判断できるようにしています」と話す。
「もちろん、どこのチームでもやっていることだとは思いますが、それはもう計算で分かるものなので、その部分で今回も取りこぼしがないように戦いたい。もし雨が降るかもしれない状況になったとしたら、天気を追いかけなきゃいけない。早めに入る、引っ張るなど、パターンはいろいろと考えていまして、レースに向けてどれにしようかなと考えているところです」
周囲からもその安定性を警戒されるブリヂストンタイヤだが、近藤エンジニアもロングラン性能に照準を合わせて土曜日のプログラムを進める予定のようだ。
「公式練習、FCY訓練、そして明日は(サーキット)サファリもあるので、そこでなるべく長距離を走るようにして、持ち込んだタイヤがどこまでレースで通用するのかを見極め、それ次第で作戦は考えたいところです」
仮に無交換を企図しようとする場合、GT300の場合レースでの走行距離は92周前後が想定されるが、決勝前までに実際にその距離を走ることは不可能。したがって、その途中までの距離を走ったタイヤの状態から、最終的な“落ち”を読む必要がある。このあたりも、タイヤ交換回数を減らしたい陣営にとっては重要なチェック項目となりそうだ。
■気になるのは“低気温”と“激戦区のA組”の初音ミク
最後に、第2戦では埼玉トヨペットGB GR Supra GTと同じく5周目に最初のピットへ飛び込んだグッドスマイル 初音ミク AMGに、今週末の見通しを聞いた。
第2戦では最初のピットで燃料スプラッシュをした後、タイヤが厳しくなってしまい想定より早く2度目のピット作業をせざるを得なくなり、思い描いていた戦略が“崩れた”グッドスマイル 初音ミク AMGだけに、河野高男エンジニアも「前回ミスったからねぇ」と、アグレッシブな戦略に対してはやや慎重な構えだ。
「前回は速さがなかったので奇襲をかけるしかなかった部分もある。今回は展開次第だけど、意外と普通の作戦の方がいいかなと思っています」
また、「ちょっと怖いのが、想定よりも温度が低そうなこと。特に予選」という。金曜日のスピードウェイの最高気温は25度ほどで、土曜日も似たような気温となりそうな予報が出されている。ここ数日続いてきた酷暑から比べると、随分涼しいコンディションとなりそうだ。
「これくらいの温度であればグレイニング(ささくれ摩耗)はしないと思うけど、これより下がると厳しいかもしれない。あとは発動するかどうか、という問題もあります」と、河野エンジニアは“涼しい”コンディションが、タイヤのパフォーマンスに及ぼす影響を心配する。酷暑を想定したタイヤ選択をしている陣営が多いとすれば、そして予想どおり低めの気温になるとすれば、思わぬ波乱が起きる可能性もありそうだ。
河野エンジニアはまた、グッドスマイル 初音ミク AMGが振り分けられた予選Q1のA組に、富士を得意とする強豪車両がそろっている点をポイントとして挙げる。激戦区となることが予想されるだけに、“低気温”で迎える予選ではQ1から、タイヤの熱入れを含めたシビアなタイムアタック合戦が展開されそうだ。
温度によってタイヤのパフォーマンスが左右され、そのロングラン性能によって決勝のストラテジーが左右される。GT300の450kmレースは、タイヤがその命運を握ることとなりそうだ。
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